ベイサオリックスの基本情報
英名:Beisa Oryx
学名:Oryx beisa
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 オリックス属
生息地:エチオピア、ケニア、南スーダン、タンザニア
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

乾燥への耐性と
顔の模様と長い角が特徴的なウシ科動物、ベイサオリックス。
ウシ科動物の角は洞角やホーンと呼ばれ、頭骨から出た突起を角質化した皮膚が鞘として覆う構造をとりますが、天に伸びる彼らの長い洞角は雌雄ともに生え、長いものは1m以上にもなります。
そんなベイサオリックスは、アフリカ北東部のサバンナや茂みなどに生息しますが、乾燥に強い動物です。
水が近くにあれば利用するものの、しばらくは水なしで生きていくことができる彼らには、乾燥に耐えられる特徴をいくつか持ちます。
例えば、彼らは高い体温に耐えることができます。
気温が上がり、それに伴って体温が45度以上にまで上昇しても生きることができるのです。
これに関連して、彼らはあまり汗をかかない哺乳類です。
汗は気化熱により体温を下げる効果を持ちますが、体内の水分が流出するため、乾燥地域で生きる動物にとってはできるだけ避けたいところです。
高い体温に耐えることができるベイサオリックスは、気温が上がり体温が少し上がったくらいでは汗をかく必要がないため、乾燥した環境でも水分の流出を極限まで抑えることができます。
その一方で、必要な水分はエサとなる植物に含まれるものを利用するので、彼らは水を飲まなくてもしばらく生きていけるのです。
そんな乾燥への耐性を持つベイサオリックスですが、彼らを襲う別の脅威には耐性がないかもしれません。
その脅威というのが人間です。
ベイサオリックスは、人間による狩猟と、定住地の拡大による生息地の破壊といった人間によってもたらされる脅威に直面しています。
ベイサオリックスの肉は高質らしく、また、皮革も丈夫で革製品などに需要があります。
これを狙った狩猟が今でも行われており、大きな脅威となっています。
一方、彼らの生息国の人口が急激に拡大するに伴い、彼らの生息域に人間や家畜が入ってくるようになった結果、彼らの生息地はどんどん狭まっています。
かつて彼らは北東アフリカの半乾燥、乾燥地帯に広く生息していましたが、ジブチやエリトリア、ソマリア、スーダン、ウガンダではすでに絶滅したとみられています。
個体数も減少しており、1990年代半ばの3.4万頭から、今では1.7万頭前後にまで減らしています。
減少傾向は今でも続いているとされており、彼らはIUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
自然界は厳しいものですが、人間という存在の影響はその厳しさにさらに拍車をかけ、ベイサオリックスを絶滅の縁に立たせています。

ベイサオリックスの生態
分類
かつてオリックス(ゲムズボック)の亜種とされていましたが、今では独立種として扱うことが一般的のようです。
ケニア最長の河川であるタナ川の北に生息するベイサオリックス(O. b. beisa)と南に生息するフサミミオリックス(O. b. callotis)の2亜種が知られています。

生息地
ベイサオリックスは標高1,700m(エチオピア)までの、半乾燥、乾燥地帯のサバンナやウッドランド、茂みに生息します。
形態
体長は1.6~1.9m、肩高は1.1~1.2m、体重は120~200㎏、尾長は70~80㎝で、オスの方が大きくなります。
角は雌雄ともに生え、80㎝程度ですが、1mを超えるものもいます。

食性
主にグレイザーで、地面に生えたイネ科の植物などを食べますが、乾季は木も利用します。
捕食者にはライオンやヒョウ、リカオンなどが知られています。



行動・社会
ベイサオリックスは、1頭のオスが率いる6~12頭程度の単雄複雌の群れで生活します。
成熟したオスはなわばり性が強く、水や日陰などの資源があるエリアを他のオスから守ります。
若いオスは成熟オスのなわばりの周辺で暮らしたり、オス同士の群れを作ったりして生活します。
繁殖
繁殖は年中見られますが、出産のピークは雨季にあります。
メスは約8.5ヵ月の妊娠期間の後、1頭の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは、生後数週間は群れから隔離されて育ちます(ハイダー型)。
母親は群れと採食などしつつ、日に何度か赤ちゃんのもとを訪れ、授乳します。
性成熟は2歳ごろ、寿命は野生で12~15年です。

人間とベイサオリックス
絶滅リスク・保全
ベイサオリックスの現在の個体数の内訳は、亜種のベイサオリックスが1.2万頭、フサミミオリックスは4,000~6,000頭です。
ベイサオリックスの8割以上は保護区外に生息しており、減少リスクが高い一方、フサミミオリックスは6割が保護区内で生活しています。
ワシントン条約(CITES)の附属書に記載はありません。

動物園
ベイサオリックスは日本で見ることはできませんが、同じオリックス属のシロオリックスとアラビアオリックスは日本でも飼育されています。
