モリオナガネズミの基本情報
英名:Northern Birch Mouse
学名:Sicista betulina
分類:齧歯目 ネズミ形亜目 トビネズミ科 オナガネズミ属
生息地:オーストリア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ジョージア、ドイツ、カザフスタン、ラトビア、リトアニア、モルドバ、モンゴル、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スウェーデン、ウクライナ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

人目を忍ぶネズミ
その名の通り、しっぽが頭からお尻の長さよりも長いモリオナガネズミ。
彼らは、西はオーストリアやデンマーク、北欧から東はロシア、モンゴルまで、非常に広い分布域を持ちます。
しかし、その広い分布域のわりに、彼らを野生で見つけることは困難です。
それにはいくつか理由があります。
一つは、彼らの名前からもわかるように、彼らが森に生息しているためです。
彼らは木に登ることができますが、主に地上で生活します。
彼らの住む森の下層には、ある程度丈のある植物が生い茂ります。
このような場所で、体の小さい彼らを見つけるのは至難の業です。
彼らが夜行性であることも、人間が彼らを見つけられない理由です。
モリオナガネズミは夜行性、もしくは薄明薄暮性の動物です。
ただ、寒い地域では日が出ている間に活動することもあるようです。
彼らは気温10℃を下回ると、活動量を低下させます。
寒すぎる環境ではエネルギーを余計に消費してしまうため、日中の暖かい時間帯に活動するのです。
ちなみに、活動をしていない間は巣で休息します。
巣は木の根元や腐った木、他の動物が掘った穴などに作られ、自分で地中に掘ることもします。
地中の巣は深さ20~40㎝程度と浅く、部屋は乾いた葉っぱや草、コケなどが敷き詰められます。
明るい時間はこの巣で過ごし、夜に活動する。
道理で見つからないわけです。
彼らを見つけるのが困難な最も大きな理由は、彼らが冬眠することです。
モリオナガネズミは通常10月ごろから5月頃まで、最低でも6ヵ月間、巣の中で冬眠して冬を越します。
冬眠中に最低限必要なエネルギーは、それまでに貯めておいた脂肪で賄うため、冬眠明けの彼らの体重は冬眠前の半分にまで落ち込みます。
このようにじっと動かずに森のどこかで眠る彼らに出会える可能性は、我々の通常の生活の中ではほとんどないことでしょう。
ちなみに冬眠のような季節性休眠のほか、彼らは日内休眠(デイリートーパー)といって、寒すぎる日に一時的に休眠状態になることも知られています。
このようにその特性から人間とはあまり接点のないモリオナガネズミですが、鳥類はそんな彼らを簡単に見つけてしまいます。
特に夜行性のフクロウはかなりモリオナガネズミを捕食しているようです。
フクロウは餌の消化できない部分をペレットとして吐き出しますが、モリオナガネズミが珍しくない地域において、モリオナガネズミはフクロウのペレットの3割以上を占めることもあるようです。
あの忍者のようなモリオナガネズミをそれほど見つけ出すとは、さすがフクロウです。
Sicista betulina (Pallas, 1779) | GBIF

モリオナガネズミの生態
生息地
標高2,200mまでの、タイガなど森林地帯や草地に生息します。
湿った土壌がある環境を好みます。
形態
体長は5.8~7.4㎝、体重は6.5~10.5g、尾長は8.5~10㎝です。
背中の黒い正中線が特徴的です。
後足は比較的大きく1.5~1.7㎝もあります。

食性
葉や果実、種子などの植物の一部の他、昆虫も食べます。
季節によって昆虫が餌の大半を占めることもあります。
捕食者にはフクロウやハヤブサなどの猛禽類が知られています。
行動・社会
夜行性ないし薄明薄暮性のモリオナガネズミは、単独性です。
行動圏は雌雄で重なっており、オスの行動圏は繁殖期に拡大します。
繁殖
繁殖は冬眠が明けた5月終わりから6月初めにかけて行われます。
メスの妊娠期間は約30日で、通常1年に1度だけ出産します。
一度に2~11匹生まれる赤ちゃんは母親によって世話され、生後37日ごろ離乳します。

人間とモリオナガネズミ
絶滅リスク・保全
分布域が広い彼らは、その個体数の詳細は知られていませんが、現在のところ絶滅はあまり心配されていません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
ただ、ドイツやルーマニアなど一部地域では、農業や森林伐採などによる生息地の破壊が脅威となっています。
Sicista betulina | The IUCN Red List of Threatened Species
動物園
モリオナガネズミを日本で見ることはできません。

