シマスカンクの基本情報
英名:Striped Skunk
学名:Mephitis mephitis
分類:スカンク科 スカンク属
生息地:カナダ, アメリカ合衆国, メキシコ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
強烈なにおい
スカンクと言えば、お尻から出る強烈なにおいで有名です。
学名に用いられている“mephit”が、ラテン語で「悪臭」という意味を指すことからも、彼らがいかに臭いにおいを出す動物として認識されているかが分かります。
ただ、彼らがお尻から臭い分泌物を放つという攻撃に至るまでは、いくつかの段階を踏みます。
まず、彼らの白と黒の毛色は、捕食者にとって警戒色になっています。
そのため、彼らはあまり外敵から襲われることがありません。
それでも捕食者や人間などが近づくと、彼らは背を曲げ、しっぽを高く上げ、威嚇します。
そして、前肢で地面を踏み鳴らし、警告します。
下の対アライグマ戦の動画では、この様子がよく分かります。
これでも相手が逃げない場合、相手の方にお尻を向け、肛門の両サイドにある一対の臭腺から、ムスクと呼ばれる黄色いスプレーを噴射します。
噴射は連続して行うことができ、ムスクを数m先まで飛ばすことができます。
このムスクは、チオールと言う硫黄化合物を含んでおり、くさいだけでなく、目に入ると激痛をもたらします。
下の動画では、クマがスプレーにやられて逃げ惑う様子を見ることができます。
ムスクの補充には最大48時間かかるため、そう頻繁に使うことができません。
そのため、ムスクの噴射は最終手段としていつもとっておいているのです。
スカンクとファンク
シマスカンクは、人間たちと意外に深いかかわりを持っています。
例えば、シマスカンクはネイティブアメリカンの伝承に登場しますし、ペペルピューというワーナーブラザーズのキャラクターは、シマスカンクをモデルとしています。
中でも意外なのは、ジャズやファンクとの関わりです。
キャブ・キャロウェイの“Skunk Song”、ブレッカーブラザーズの代表曲“Some Skunk Funk”など、音楽シーンにもスカンクは登場します。
特にファンクという言葉は、もともと「におい」という意味の言葉が語源で、ファンキーという言葉は「悪臭を放つ」という意味にもなるため、スカンクとイメージが重複するところがあったのでしょう。
このように人間の文化とも関わりがあるスカンクですが、今では都市地域にもよく表れるようになり、臭いにおいを放つ動物として人々からは嫌われているようです。
【ペペルピュー】
【Skunk Song】
【Some Skunk Funk】
シマスカンクの生態
生息地
シマスカンクは、北米の、森林から耕作地、都市にかけて、標高4,200mまでのあらゆる環境に生息します。
地上で生活し、主に夕暮れから夜明けにかけて活動します。
日中はウッドチャックやアメリカアナグマないし自身が掘った巣穴や木の洞、岩陰、人家の下で過ごします。
食性
シマスカンクは雑食性ですが、昆虫を好んで食べます。
春、夏にはバッタやコオロギ、カブトムシ、ハチ、幼虫などの昆虫を食べ、昆虫が少ない時は卵やネズミなどの小型哺乳類、爬虫類や植物質なども食べます。
このような食性のため、彼らは昆虫の個体数維持に一役買っています。
ちなみに、彼らは視力が良くないので、聴覚と嗅覚でえさを探します。
一方、彼らを食べる捕食者には、ピューマやボブキャット、コヨーテ、アカギツネの他、嗅覚が弱いアメリカワシミミズクなどの猛禽類がいます。
形態
体長は32~45㎝、肩高は約10㎝、体重は1.5~6㎏、しっぽの長さは17~25㎝で、オスの方がわずかに大きくなります。
手足には5本のかぎ爪を持ちますが、穴を掘るために前肢の爪の方が長いです。
行動
シマスカンクは、オスもメスも単独で行動します。
しかし、冬になると暖を取るために複数のメス同士、ないし1頭のオスと複数のメスで巣穴を共有することがあります。
冬は彼らの活動量が減少する時期でもあります。
冬眠することはありませんが、体内に蓄えられた脂肪に頼ることが多く、この時期に体重が半減することもあります。
繁殖
シマスカンクの繁殖には季節性があり、2月~4月(そこでうまくいかなかった場合メスは5月も発情する)にかけて行われます。
1月~2月にかけて睾丸が膨らんだオスは、行動域が重複するメスと複数交尾しますが、交尾後メスと連れ合うことはありません。
メスの妊娠期間は59~77日で、最長19日の遅延着床が見られます。
毛がまばらに生えた約35gの赤ちゃんが一度に2~10頭生まれます。
生後3週で目が開き、生後6~8週で離乳します。
独立するのは生後半年~1年で、オスの方が早いです。
性成熟には約10ヶ月で達し、寿命は野生下で6,7年、飼育下で約10年です。
人間とシマスカンク
絶滅リスク・保全
シマスカンクは、かつて毛皮のために狩猟され、北米においてその数はマスクラットに次いで多かったようです。
しかし、1950,60年代にそのピークを迎えてからは、狩猟数は減少しています。
狩猟に加え、彼らはレプトスピラ症や狂犬病など人間にもうつる病気にかかることも少なくなく、それも死因の一つとなっています。
これらの他、交通事故も彼らにとっての脅威となっているようですが、今のところその生息域の広さから個体数は安定しており、絶滅は危惧されていません。
レッドリストでは軽度懸念の種として登録されています。
動物園
そんなシマスカンクですが、日本の動物園でも見ることができます。
栃木県の那須どうぶつ王国、兵庫県の神戸どうぶつ王国、長崎県の長崎バイオパークがシマスカンクを飼育、展示しています。
ただ、飼育されているシマスカンクの臭腺は除去されているため、あの強烈なにおいを体験することは残念ながらできません。