アカハナグマの基本情報
英名:South American Coati
学名:Nasua nasua
分類:アライグマ科 ハナグマ属
生息地:アルゼンチン, ボリビア, ブラジル, コロンビア, エクアドル, フランス領ギアナ, ガイアナ, パラグアイ, ペルー, スリナム, ウルグアイ, ベネズエラ, チリ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
メスだけの群れ
霊長類や、ゾウ、キリンなどの草食動物の多くは、捕食者から身を守るために群れを作ります。
一方で、彼らを食べる肉食動物のうち、ライオンやオオカミのように群れを作るものは多くはありません。
そんな中、アカハナグマはバンドと呼ばれる15~30頭の群れを作ります。
メンバー間では警戒音などの音声やグルーミングを通したコミュニケーションが見られ、これらから彼らの社会性見て取ることができます。
下の動画では、集団で行動するアカハナグマの様子がとらえられています。
好奇心旺盛な子どもたちも登場して癒されるので、是非ご覧下さい。
しかし、アカハナグマの群れ、バンドには他の肉食動物にはない特徴があります。
ライオンの群れにもオオカミの群れにも1頭以上の大人のオスがいますが、アカハナグマの群れには大人のオスが存在しないのです。
アカハナグマの群れは、血縁関係のないメスとその子供たちから形成され、大人のオスは単独で行動します。
これは非常にユニークな特徴で、このような社会性の違いから、群れを作るハナグマ(coati)と、単独で行動するハナグマ(coatimundi)は別種であるとすら考えられていたこともありました。
ちなみに、オスがメスたちの群れに加わることができるのは、繁殖の時だけです。
性別によって社会行動がこれほど変わるとは、非常に興味深いですね。
ところで、もうお気づきかと思いますが、アカハナグマの名前の区切り方は、アカ・ハナグマです。
アカハナ・グマと区切りたいところですが、彼らの鼻は全く赤くないので不適切であることが分かります。
もし彼らの鼻が赤ければ、ハナアカハナグマとなるでしょう。
なぜなら、ハナジロハナグマというハナグマがすでにいるからです。
ハナグマのなかまは、その名の通り鼻が特徴的です。
この鼻は動かすことができるほど柔軟で、その嗅覚は非常に鋭いです。
アカハナグマの生態
生息地
アカハナグマは、南米の落葉樹林や常緑林などの森林地帯に広く生息しています。
昼行性で、地上でも樹上でも生活しますが、樹上で眠り、交尾し、樹上の巣で出産します。
食性
アカハナグマは肉食動物の1種ですが、果実を好む雑食性です。
1日の活動時間のほとんどをえさを探すのに費やし、1日に2㎞近くも移動します。
果実の他には、アリなどの無脊椎動物や、小型哺乳類も食べます。
一方、彼らを食べる捕食者には、ヘビ、ピューマ、ジャガー、オセロット、ジャガランディなどがいます。
形態
体長は41~67㎝、肩高は約30㎝、体重は3~6㎏、しっぽの長さは32~69㎝で、普通オスの方が大きくなります。
しっぽには、他のアライグマ科の動物同様しま模様があります。
また、足の関節は180度回転できるので、頭を先にして木から降りることもできます。
繁殖
アカハナグマの繁殖には季節性がありますが、その時期は地域によって異なるようです。
繁殖期になると、オスがメスの群れに入り、2~4週の間に群れのメスたちと交尾します。
その後オスは群れを離れ、再び単独で生活します。
メスたちも出産のために一時的に群れを離れ、樹上に巣を作ります。
妊娠期間は74~77日で、3~7頭、通常4頭の赤ちゃんが産まれます。
赤ちゃんは約10日で目を開き、生後5週で巣を離れ、母親と共に群れに合流します。
そして、生後4カ月ほどで離乳し、2歳で性成熟に達します。
寿命は野生下で7~14年、飼育下では17年以上生きることもあります。
人間とアカハナグマ
絶滅リスク・保全
アカハナグマは、生息地の減少や、現地の人々による肉目的の狩猟などの影響で個体数を減らし続けていますが、その広い分布域から絶滅は危惧されていません。
レッドリストでは軽度懸念の種として登録されています。
動物園
そんなアカハナグマですが、日本の動物園でも見ることができます。
北海道の円山動物園、千葉市動物公園、石川県のいしかわ動物園、兵庫県の王子動物園、岡山県の池田動物園、高知県立のいち動物公園、長崎バイオパークなどでアカハナグマに会うことができます。
また、大阪府の海遊館など水族館でも飼育されているので、是非注目してみてください。