カニクイアライグマの基本情報
英名:Crab-eating Raccoon
学名:Procyon cancrivorus
分類:アライグマ科 アライグマ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、フランス領ギアナ、ガイアナ、パナマ、パラグアイ、ペルー、スリナム、トリニダード・トバゴ、ウルグアイ、ベネズエラ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
南のアライグマ
皆さんよくご存じのアライグマ(raccoon)。
彼らの一般的な英名は“Northern Raccoon”、直訳すればキタアライグマとなります。
つまり、北に住むアライグマです。
ということは、南に住んでいるミナミアライグマがいてもおかしくはありません。
名前こそそうではないものの、南に住むアライグマに相当するのが、このカニクイアライグマです。
アライグマが北米、中米に生息しているのに対し、カニクイアライグマは中南米に生息しています。
この2種はパナマやコスタリカなど中米の国々でその生息域を重複させていますが、そこでアライグマはマングローブや沼沢地、カニクイアライグマは内陸の河川周辺に生息することですみ分けているようです。
さて、カニクイアライグマの写真を見ていただくと分かりますが、その姿はしっぽといい、顔のマスクといい、北のアライグマとそっくりです。
また、エサを水で洗うところも、北のアライグマと同様です。
しかし、もちろん違う部分もあります。
例えば、カニクイアライグマの方がアライグマよりもほっそりとして見えます。
これはカニクイアライグマの毛が短いことにも関係しているでしょう。
また、細かいですが、アライグマの首の後ろの毛が後方に流れているのに対し、カニクイアライグマは前方に流れています。
さらに、アライグマの手が白っぽい一方で、カニクイアライグマの毛は暗く、黒っぽいです。
適応力にも違いがあるようです。アライグマが人の住むところにも出没するのに対し、カニクイアライグマはより水辺への執着が強く、都市のようなところに姿を現すことはありません。
このような違いはあるものの、やはり同じアライグマ属に分類される動物同士、非常によく似ています。
ちなみに現在のところ、アライグマ属には3種が分類されると考えられています。
これら2種と、メキシコのコスメル島にのみ生息するコスメルアライグマです。
このアライグマは別名ピグミーアライグマと呼ばれており、その名の通り小さなアライグマです。
しかしそれ以外の部分は、やはり他の2種とよく似ています。
カニクイアライグマの生態
生息地
カニクイアライグマは、中南米に位置する、標高約2,000mまでの森林に生息します。
彼らは水やエサ、隠れる場所や巣を作れる場所があるところなら基本的にどんなところにでも生息できるようです。
食性
カニクイアライグマは雑食性で、特に果実を好んで食べます。
その他にも、昆虫や名前にも付けられているカニなどの甲殻類、種子、野菜、カエル、カメなどを食べます。
形態
体長は45~90㎝、体重は3~10㎏、尾長は20~56㎝で、オスの方がメスよりも大きくなります。
行動
カニクイアライグマは、主に夜行性です。
色は見えませんが、暗闇の中で動くことができる視力を持っています。
彼らは動物の中でも特に手が器用で、前足で食料を洗うことができるほどの繊細さを持っています。
彼らは単独性ですが、えさ場などでは集団で見られることがあります。
繁殖
繁殖は年に1度、7月~9月にかけて行われます。
オスは複数のメスと交尾しますが、メスは一度妊娠すると、他のオスとの交尾は拒みます。
妊娠期間は60~73日、一度に通常3~4頭が、岩の裂け目や木の洞に作られた巣に産まれます。
赤ちゃんはもっぱら母親により育てられます。
生後約3週には目を開き、4カ月齢までには離乳します。
生後8カ月には独立しますが、メスは母親の行動圏に留まることもあるようです。
性成熟には1歳以降に達します。
カニクイアライグマに会える動物園
保全状況
カニクイアライグマは、生息地の減少や、毛皮、娯楽を目的とした狩猟のために、個体数を減少させ続けていると推測されています。
とはいえ、その分布域の広さから絶滅に関して大きな懸念はなく、レッドリストでは軽度懸念の種として記載されています。
動物園
そんなカニクイアライグマですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
ただ、カニクイアライグマは日本において外来種に指定されています。
アライグマのように定着しているとは考えられていないものの、野生で彼らを見られる可能性はあります。
もちろん、その時は自治体にご一報を。