オオカンガルーの基本情報
英名:Eastern Grey Kangaroo
学名:Macropus giganteus
分類:双前歯目 カンガルー科 カンガルー属
生息地: オーストラリア
保全状況: LC〈軽度懸念〉
参考文献
グレイザーの胃
オオカンガルーは、グレイザーのカンガルーとして知られています。
グレイザーとは、低質でどこにでもあるイネ科植物を食べる動物のことで、その反対に高質で量的に限られている木本類の葉を選択的に食べる動物をブラウザーと言います。
一般的に、グレイザーの体は大きい傾向にあります。
その理由は消化に関係しています。
例えば、反芻動物であるウシは代表的なグレイザーですが、彼らは4つある胃の内、特に一つ目の胃(ルーメン)を巨大な発酵タンクとして使っています。
タンクの中にはたくさんの微生物が存在し、哺乳類が消化できない植物のセルロースを、哺乳類が消化できる揮発性脂肪酸に変えます。
このように、体が大きければ大きな発酵タンクを持つことができますし、また、食物が体の中を流れる時間を長くすることができるというメリットもあります。
ちなみに反芻動物は、一度胃に入った植物を再度嚙みなおす反芻をすることで、これらのメリットを更に効率的に享受しています。
さて、オオカンガルーは名前の通り大きなカンガルーで、オスであればその大きさは現生最大の有袋類であるアカカンガルーに匹敵します。
つまり、彼らは大きな発酵タンクを持つことができます。
実際、オオカンガルーは反芻動物ほどではありませんが、伸長した大きな胃を持っており、そこに微生物を住まわせ食物を発酵させています。
さらに体が大きいことで、食物を体内により長く滞留させることができます。
カンガルーは反芻をせず、胃も反芻動物ほど複雑ではないので、反芻動物ほどの効率性はありませんが、それでも相当な効率で低質な餌を消化しています。
大きなカンガルーが広い範囲に生息できているのも、グレイザーという戦略を取っていることに深く関係しているでしょう。
オオカンガルーの生態
生息地
オオカンガルーは、オーストラリアの東部およびタスマニア島に生息します。
開けた草原や山地、森林地帯で暮らします。
彼らの生息地はオーストラリアでも比較的降水量が多い所となっています。
形態
体長は1~1.5m、体重はオスが50~90㎏、メスが17~40㎏、尾長は1mで、性的二型が顕著です。
体重は4番目の足の指(第四趾)がほとんど支えており、残りを第五趾が補います。
第一趾は消失、第二、第三趾は退化し癒合しており主にグルーミングに使われます。
食性
オオカンガルーはモブと呼ばれる群れを作ります。
群れには通常1頭のオス、2~3頭のメスとその子供が在籍しています。
オスはなわばり性が弱く、もっぱらメスをめぐって闘争を繰り広げます。
社会的順位は明白で、それにより尿などのにおいを構成する物質が変わると言われています。
オオカンガルーはホッピングと呼ばれるジャンプで、時速60km近くで走ることができます。
ジャンプの幅は最長9m、高さは3mにも達します。
繁殖
オオカンガルーは季節繁殖をします。
夏に子供が生まれる傾向にあります。
妊娠期間は36日、通常1匹の未熟な赤ちゃんが一度の出産で産まれます。
メスは出産後すぐに交尾をすることができますが、着床遅延により受精卵は胚盤胞の状態で発育を停止します。
子供は生後11カ月で育児嚢を離れますが、その後も数カ月は母乳を飲みます。
母親は成長段階に応じ、母乳の成分を変えます。
また、袋を出た子用と袋の中の子用の2つのタイプの母乳を同時に与えることができます。
性成熟はメスで17~28カ月齢、オスで25カ月齢です。寿命は野生下で約10年です。
人間とオオカンガルー
保全
オオカンガルーはオーストラリア全土に200万頭ほどいると言われています。
絶滅のリスクは低く、IUCNのレッドリストでも軽度懸念の評価です。
ちなみに、タスマニア島では20世紀末、オオカンガルーが激減しましたが、現在は法によって守られており、個体数は1万~2万と言われるまで回復しています。
動物園
オオカンガルーには、円山動物園がある北海道から、沖縄こどもの国がある沖縄県まで、全国津々浦々の動物園で見ることができます。
グレイザー・オオカンガルーの生態をぜひ観察してみてください。