クロサイの基本情報
英名:Black Rhino
学名:Diceros bicornis
分類:奇蹄目 サイ科 クロサイ属
生息地:南アフリカ、ボツワナ、エスワティニ、ナミビア、ウガンダ、ジンバブエ、モザンビーク、ケニア、ザンビア
保全状況:CR〈絶滅危惧ⅠA類〉
参考文献
黒くないけどクロサイ
アフリカにはシロサイとクロサイという2種のサイがいますが、どちらもよく似た色をしており、とてもその名にふさわしい色をしているとは思えません。
実は彼らの名前は、その体色を由来としていないとされています。
一説では、口の幅が広いシロサイが、現地で「広い」を意味するアフリカーンス語”wyd”と呼ばれていたのを、「白い」を意味する”white”と西欧人が聞き違えたことからシロサイと呼ばれるようになったとされています。
そして、シロサイが白ならアフリカにすむもう一種は黒、ということでクロサイという名前が誕生したのです。
この説のほか、クロサイが住む地域の泥が黒っぽいからという説もあります。
サイは寄生虫や太陽光から身を守るため、よく泥浴びをします。
その泥まみれの姿から、クロサイとつけられたというのです。
しかし、シロサイも泥を浴びて黒っぽくなるので、彼らを本当に見分けたければ、口元を見るのが一番です。
地面の草を食べるシロサイが平たい口をしているのに対し、木の葉を食べるクロサイの口は尖っており、その唇は非常に柔軟です。
シロサイのように地面の草を食べる草食獣はグレイザー、クロサイのように木の葉を食べる草食獣はブラウザーと呼ばれています。
ところで、サイは寄生虫から身を守るために泥浴びをすると言いましたが、彼らを寄生虫から守ってくれる存在が他にもいます。
それがウシツツキなどの鳥です。
彼らはサイの体についた寄生虫をエサとして食べますが、サイからしたら彼らは寄生虫を取り除いてくれる掃除屋のようなものです。
このようにサイとウシツツキはお互いに利益を得られる共生関係にありますが、これを相利共生といいます。
どうやらサイがウシツツキから得ている利益はこれだけではなさそうであることが最近の研究からわかっています。
サイは視力が弱く、20~30m先までしか見えません。
この視力をウシツツキが補っているというのです。
危険が近づいて鳴いたり飛び立ったりするウシツツキのサインを受け取り、サイは危険を察知しているといいます。
クロサイは現在絶滅の危機にありますが、ウシツツキの存在がなければ、今頃彼らは地球に存在していなかったかもしれません。
クロサイの生態
名前
クロサイの属名はギリシャ語で2本の角を意味し、種小名はラテン語で、こちらも2本の角を意味します。
生息地
クロサイは草原やサバンナ、森林などに生息します。
かつてアフリカのサハラ砂漠以南に広く生息していましたが、現在ではその生息地は一部地域に限られます。
クロサイは地域と遺伝子に基づいた4種の亜種が知られています。
主にナミビアに生息するナンセイクロサイ(Diceros bicornis bicornis)、主にケニアに生息するヒガシクロサイ(D. b. michaeli)、南アフリカやジンバブエに生息するナントウクロサイ(D. b. minor)、かつてアフリカ中西部に生息していたニシクロサイ(D. b. longipes)です。
ニシクロサイは、カメルーンに生息したのを最後に絶滅したとされています。
形態
クロサイの体長は3~3.8m、肩高は1.4~1.7m、体重は0.8~1.4t、尾長は50㎝ほどで、オスの方がメスよりもやや大きくなります。
角はオスにもメスにも生え、メスの方が長く細い傾向にあります。
前の角は0.5~1.3m、後ろの角は20~50㎝で、サイは現生哺乳類では唯一鼻の上に角ができます。
蹄は各足に3つずつ存在します。
食性
クロサイはブラウザーで、木の葉をよく食べます。
特にアカシアを好むようです。
クロサイは毎日20㎏以上のエサを食べます。
生息地ではほぼ無敵ですが、特に子供はライオンなどに襲われることがあります。
行動・社会
クロサイは日中ではあまり活動せず、明け方や夕暮れに活発になります。
オスは単独性ですが、メスや若齢個体には社会性があるとされています。
特にオスはなわばりをアピールするために糞を溜めたり、それらを蹴って体にまとう行動を見せます。
繁殖
繁殖は周年見られますが、地域ごとにピークが見られます。
メスの出産間隔は2.5~3年で、15~16ヵ月の妊娠期間ののち、20~25㎏の赤ちゃんを一頭産みます。
赤ちゃんは生後1ヶ月ごろから植物を食べ始めますが、完全に離乳するのは1歳半ごろです。
3歳ごろまで母親とともに暮らしたのち、独立します。
性成熟にはオスが7~8歳で、メスが5~7歳で達します。
寿命は35~40年です。
人間とクロサイ
絶滅リスク・保全
20世紀のほとんどの期間において、クロサイはサイの中で最も個体数が多く、1960年ごろには10万頭がいたと推定されています。
しかし、彫刻や伝統的な薬として需要がある角を狙った密猟や生息地が人の居住地、農地へ転換されたことにより急激に数を減らします。
1993年にはなんと2,300頭が残るのみとなってしまいました。
その後、規制強化や移住などの保護活動が進んだおかげで個体数は回復を見せ、今では約6,500頭にまで増えています。
しかし、密猟という脅威は依然として存在しており、ICUNのレッドリストにおいて、クロサイは最も厳しい評価である絶滅危惧ⅠA類に指定されています。
CITESにおいては当然附属書Ⅰに記載されており、研究目的以外の国際取引は禁止されています。
参考文献
クロサイ、特にヒガシクロサイは全国10ほどの動物園で見ることができます。
中でも神奈川県の金沢動物園と愛知県の東山動物園では、クロサイの他にインドサイも見ることができます。
アフリカのサイとアジアのサイ。その違いを実際に感じてみてください。