アビシニアコロブスの基本情報
英名:Guereza
学名:Colobus guereza
分類:オナガザル科 コロブス属
生息地:カメルーン, 中央アフリカ共和国, チャド, コンゴ共和国, コンゴ民主共和国, エチオピア, ガボン, ケニア, ニジェール, ルワンダ, 南スーダン, タンザニア, ウガンダ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
神の使い
黒い顔に髭のように生えた白い毛が目立ち、背中は黒と白の長い毛で覆われているこのサル。
こんなのが枝の上に座り、後光に照らされたりなんかしたら、そりゃあもう神秘的なものを感じずにはいられないでしょうねえ。
アビシニアコロブスはアフリカにすむサルですが、現地では“ゲレザ”と呼ばれ、神の使いとして崇められていたそうです。
ただ、現在はその歴史はどこへやら。
その美しい毛皮目的に狩猟の対象となっているようです。
人間とは本当に愚かなものです。
くびれた胃とほとんどない親指
アビシニアコロブスを含め、コロブスと呼ばれるサルのなかまの胃は、牛のように3,4つにくびれていて、バクテリアを共生させています。
それにより、他のサルよりも多くの草を消化することができます。
その一方で、消化のために他のサルよりも休息の時間が長くなります。
めっちゃ食べてめっちゃ休む。
至高ですね。
コロブスの特徴として、もう一つ極端に短い親指が挙げられます。
そもそもコロブスという名前は、ギリシア語で「欠落した」とか、「切断された」という意味です。
この名前はコロブスの短い親指に由来しています。
このように、指が退化したサルはコロブスに限らず、例えばクモザルなどにもみられます。
彼らは地上に下りて木の実や昆虫などをつまんで食べるわけではなく、枝を手繰り寄せて葉を食べるので、親指の必要性があまりありません。
アビシニアコロブスの生態
生息地
アビシニアとはエチオピアの古い呼称です。
実際にアビシニアコロブスはエチオピアに生息しています。
ただ、エチオピアだけに限らず、ケニア、スーダン、ウガンダ、カメルーン、コンゴ共和国など、アフリカに広く分布しています。
アビシニアコロブスは、標高3,300mまでの落葉林や常緑林に生息します。
樹上性が高いですが、時々土を食べるために地上に降りてきます。
土には塩やミネラルが豊富に含まれているので、栄養を補うためにも重要な食べ物になります。
食性
主食は葉で、その他にも果実や花などを食べます。
形態
体長は45~72㎝、体重は5~14㎏、しっぽの長さ50~100㎝で、オスの方がメスの約1.2倍大きいです。
行動
アビシニアコロブスは基本的に10頭くらいから成る単雄複雌の群れで生活します。
メスが生まれた群れに留まる一方で、オスは成熟しきる前に群れを離れます。
アビシニアコロブスにはアロマザリング行動が頻繁に見られます。
これは母親以外の個体が子供の世話を引き受ける行動で、母親の負担の軽減し、繁殖の可能性を高めることにつながっていると考えられています。
繁殖
繁殖に明確な季節性は見られませんが、離乳時期と食物の豊富な時期が一致する傾向にあるようです。
メスは約半年の妊娠期間の後、1匹の赤ちゃんを産みます。
アビシニアコロブスの大人は白と黒の毛が特徴的ですが、赤ちゃんはまっ白です。
白い毛は、3,4カ月かけて大人の毛色になっていきます。
性成熟には約6年で達し、メスの性的休止期間は約20カ月です。
寿命に関しては、20~30年ほどで、飼育下の個体の方が長く生きます。
人間とアビシニアコロブス
絶滅リスク・保全
アビシニアコロブスは、木材の切り出し、農地の拡大、増える人間の居住地のための森林開拓などによる生息地の縮小、そして肉や毛皮目的の狩猟によって個体数を減らし続けています。
レッドリストでは絶滅の危機は軽度懸念とされていますが、さらなる個体数の減少が懸念されています。
動物園
そんなアビシニアコロブスには、北海道の旭山動物園や秋田県の大森山動物園、東京都の上野動物園、愛知県の日本モンキーセンター、静岡市の日本平動物園、神戸市の王子動物園、高知県のわんぱーくこうちアニマルランド、岡山市の池田動物園、鹿児島市の平川動物公園など、日本各地で会うことができます。
“神の使い”とまで言われたその御姿を見に、ぜひこれらの動物園に足を運んでみてください。
神の啓示があるやもしれません。