ミナミコアリクイの基本情報
英名:Southern Tamandua
学名:Tamandua tetradactyla
分類:有毛目 アリクイ科 コアリクイ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、フランス領ギニア、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、トリニダードトバゴ、ウルグアイ、ベネズエラ
保全状況:LC〈経度懸念〉
威嚇の方法
南米に住む樹上性のミナミコアリクイ。
彼らはその名の通り、アリやシロアリを主食とします。
たった6㎜程度しか開かない口から伸びる40㎝近くの舌を使って、彼らは地上や樹上に住む獲物をなめとります。
また、彼らは10㎝近くにもなる爪を前足に持っており、これを使ってアリ塚を壊します。
この爪は歩く際には邪魔なようで、アリクイは爪を手の内側に丸めて歩く、ナックルウォークという独特な歩き方をします。
ちなみにこの爪、アリ塚を壊す以外に、身を守るためにも使われます。
他の個体となわばりをめぐって戦う際や、ジャガーなどの捕食者と戦う際、普段は隠しているこの鋭い爪が役立つのです。
ところで、物理的な闘争に発展する前の段階では、通常威嚇という行動が見られます。
例えばゴリラは胸をたたくドラミングをしますし、ネコであれば毛を逆立ててうなります。
ミナミコアリクイも鳴いたり体を大きく見せたりすることで威嚇をしますが、そのポージングが独特です。
二本足で立ち、大の字のポーズで威嚇するのです。
この時、把握力がある長い尻尾は、第三の足として体を支えます。
また、地上にいる場合は、背後を襲われないよう、木や岩などを背にして立つことが多いようです。
このような傍から見ると可愛らしい威嚇ポーズは、レッサーパンダなどにも見ることができます。
彼らの威嚇方法はこれだけではありません。
彼らはしっぽの根元に臭腺を持っており、危険を感じるとここから強烈なにおいを出します。
このにおいはあのスカンクの4倍ほどくさいと言われています。
何かと可愛らしいミナミコアリクイですが、うかつに近づくとひどい目に合うかもしれません。
ミナミコアリクイの生態
生息地
ミナミコアリクイは、標高2,000mまでの低地林や山地林、乾燥林、湿潤林、マングローブ林などに生息します。
形態
体長は47~80㎝、体重は3.5~8.4㎏(通常4.5㎏)で近縁のキタコアリクイよりやや大きくなります。
しっぽは40~60㎝ほどで裏側には毛が生えていません。
これは把握力を高めるためで、霊長類のクモザルの仲間にも見られます。
キタコアリクイよりも体色のバリエーションが多様です。
一部キタコアリクイとよく似た配色が見られ、究極的には頭骨で区別されます。
爪は前足に4本、後足に5本生えています。
食性
主食はアリとシロアリですが、ハチやハチミツも食べます。
捕食者にはジャガーやヘビ、猛禽類などが知られています。
行動・社会
単独性のミナミコアリクイは、主に夜行性ですが、日中活動することも少なくありません。
視力は弱く、嗅覚を頼りにエサを探します。
繁殖
繁殖は秋に行われることが多いようです。
メスの妊娠期間は130~160日で、一度に約400gの赤ちゃんを1頭産みます。
赤ちゃんは生後しばらくは母親におんぶされて移動します。
授乳は生後6ヵ月頃まで続き、1歳の時に独立します。
性成熟は2歳ごろ、寿命は飼育下で約9年です。
人間とミナミコアリクイ
絶滅リスク・保全
生息範囲が広いミナミコアリクイは、現在絶滅はあまり懸念されていません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
大きな脅威はありませんが、一部地域では生息地の破壊、ロードキル、肉目的の狩猟、イエイヌ、ペット目的の売買などの影響が懸念されています。
動物園
ミナミコアリクイは、神奈川県の野毛山動物園や、静岡県の伊豆シャボテン動物公園、兵庫県の神戸どうぶつ王国、高知県ののいち動物公園などで見ることができます。