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©2022 Rengyr : clipped from the original
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キャンの基本情報

英名:Kiang
学名:Equus kiang
分類:奇蹄目 ウマ科 ウマ属
生息地:中国、インド、ネパール、パキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉

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Photo credit: Marie Hale

参考文献

粗食に耐えられる秘密

チベットノロバとも呼ばれ、アジアノロバの亜種とされることもあるキャン。

彼らは乾燥し、標高が高い地域に生息しています。

ロバの一種である彼らは、粗食に耐えられることで知られています。

実際、特にロバの仲間は他のウマ科の仲間よりも厳しい環境で生きているため、総合的に非常に丈夫で、ロバという家畜はそれが強みとされてこれまで使役されてきました。

ではなぜ彼らは低質なエサでも生きていけるのでしょうか。


そもそも哺乳類は植物を消化することができません。

そこで微生物の力を借ります。

消化管に微生物を住まわせ、彼らに植物を発酵してもらうことで、その産物を吸収しエネルギーを得ているのです。

例えばウシの仲間はこうした微生物を主に巨大な胃に共生させています。

しかも彼らは反芻と言って、胃に入った食物をもう一度口に戻して噛みなおすことで消化効率を上げています。


一方、ウマ科の動物の胃はウシの1割にも満たず、微生物は大腸に共生しています。

面白いことに、大腸を通る食物は特に発酵されやすい部分が選択的に微生物の作用を受けているようです。

とはいえ、食物は消化管のうち後半にある大腸で発酵されるため、消化効率はウシの仲間と比べると見劣りします。


しかし、実はエサの質が低ければ低いほど、ウマの生産性が上がります。

これには上記の消化機構が関係しています。

ウシは、食べたものからできるだけ多くのエネルギーを得ようとするため、胃という巨大な発酵タンクに長時間エサをため込み、食物を消化していくスタイルです。

そのため、エネルギーを得るべくもっとエサを食べたくてもお腹がいっぱいで食べられず、よってエサが低質であればあるほど消化効率が落ちます。

一方のウマは、発酵されにくい部分はとっとと糞として体外に排出し、その分大量にエサを食べるスタイルです。

ウマの仲間が粗食に耐えられる理由はここにあります。

ちなみに人間の世界にもどれだけ食べても太らない人がいますが、その理由の一つに、食物の体内滞留時間が短いことが知られています。

キャンの生態

生息地

標高2,700~5,400mの乾燥地帯に生息します。

チベット高原を中心に草地や乾燥ステップなどで暮らします。

形態

体長は2.1m、肩高は1.4m、体重は250~440㎏、尾長は50㎝で、ノロバの仲間では最大となります。

体色は夏には赤みがかかり、冬には暗い茶色となります。

食性

グレイザーであるキャンは、イネ科を主食とします。

このほかカヤツリグサ科も食べます。捕食者には唯一オオカミが知られています。

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行動・社会

乾燥地域に住むウマ科動物と同じく、キャンは永続的な群れを作りません。

オスはなわばり性が強く、同じ場所を数ヶ月から数年、他の個体から守ります。

また、独立したばかりのオスは、オスだけの群れを作ることがあります。

周期的な移動はしませんが、季節によってはエサを求めて小さな群れで長距離を移動することがあります。

群れのサイズは5~400頭。

特にエサが豊富にある場所では大きな集団となります。

繁殖

メスの妊娠期間は約1年で、出産も発情も6~9月に見られます。

生まれた1頭の赤ちゃんは約1歳で離乳し、2歳ごろ独立します。

寿命は20年程度、飼育下では30年生きる個体もいるようです。

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Photo credit: Jacques.pire

人間とキャン

絶滅リスク・保全

調査手法によって変動はあるものの、キャンは大体6万~7万頭いるとされています。

絶滅はそれほど懸念されておらず、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

また、ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅱに記載されています。

脅威としては、家畜とのエサをめぐる競合、エサの囲い込み、狩猟、探鉱、家畜からの病気の伝染などがあります。

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動物園

キャンは日本では見ることができません。

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