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サイガ

サイガ
サイガ
目次

サイガの基本情報

英名:Saiga
学名:Saiga tatarica
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 サイガ属
生息地:カザフスタン、モンゴル、ロシア、ウズベキスタン
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉

サイガ

参考文献

絶滅の危機からの回復

口元まで垂れ下がった大きな鼻が特徴的なウシ科動物、サイガ。

彼らはかつて急激に数を減らし、一時は絶滅が心配されたことがあります。

サイガは現在、カザフスタン、ロシア、モンゴルで主に生息しますが、各国で起きた現象とその原因について見ていきましょう。


カザフスタンには現在、すべてのサイガの98%が生息しています。

そんなカザフスタンでは2015年、たった3週間で20万頭以上のサイガが死亡しました。

原因は病気です。

サイガは口蹄疫やマルタ熱としても知られるブルセラ症などの感染症にかかりやすく、この時のアウトブレイクもパスツレラ・ムルトシダという最近によって引き起こされる出血性敗血症によるものだとされています。

その結果、カザフスタンにおける個体数は約12万頭にまで減少してしまいます。

しかし、サイガはここから驚異的な回復力を見せます。

2015年から2022年の間で個体数を11倍の132万頭まで回復させたのです。

保全活動に加え気候などの条件が良ければ個体数は回復するという、彼らの驚くべき力が見て取れます。


モンゴルではどうでしょう。

一時は数百頭しかいなかった彼らは、1998年に3千頭、2000年に約5千頭と順調に個体数を増やしていきます。

しかし、2004年には750頭にまで激減してしまいます。

厳冬や干ばつ、角や肉を目的とした密猟によるものだとされています。

モンゴルでは数年から十数年単位で「ゾド」とよばれる寒雪害が起きます。

その年は大量の積雪と低気温が長期間にわたって続くため、エサにありつけないサイガが耐えきれず沢山死んでしまうのです。

ちなみにゾドは他の動物にも影響し、ひどいと百万頭単位で家畜が犠牲になることもあります。

このように激減してしまったサイガですが、2016年には1.1万頭になるまで回復します。

しかし2017年、元は西アフリカで見られた小反芻獣疫(peste de petits ruminants)と呼ばれる病気が蔓延したことで、半数以上が死んでしまいます。

それにもかかわらず、またしてもサイガは素晴らしい回復力を見せ、2022年には1.4万頭と推測されるまでになりました。


一方、個体数が伸び悩むのがロシアです。

1970年代、ロシアには70万~80万頭のサイガが生息していましたが、その数は次第に減少していきます。

特に1989年のソ連崩壊は大きなイベントでした。

国による保護活動や経済の停滞、そして国境管理が甘くなったことで密猟が横行したのです。

サイガのオスの角は、アジアでは伝統薬として需要があります。

また、その肉は生活に苦しむ人たちにとっては重要なタンパク源です。

こうして密猟が加速した結果、1996年には約20万頭、2000年には2.6万頭にまで減少してしまいます。

2020年には1万頭が定住、約3万頭が季節的に訪れるという状況で、カザフスタンやモンゴルと比べると回復に劣ります。

とはいえ、保護区の設置や飼育下繁殖の試み、密猟の取り締まりといった保全活動がロシアでも行われているため、回復の見込みはあるかもしれません。


以上に見たように、サイガは密猟や厳冬などの自然現象、そして病気により一度は絶滅の淵に立たされました。

しかし、すさまじい回復力で、2004年に5万頭にも満たなかった個体数は今では130万頭以上まで増加しています。

ただ、油断は禁物です。

2015年のカザフスタンでのアウトブレイクが今起きたら、全個体数の半分以上がいなくなると推測されています。

また、病気の蔓延は高温多湿という環境変化による可能性が指摘されています。

今後、地球温暖化などの気候変動でサイガが再び絶滅の淵に立たされる可能性はなくはないのです。

サイガ

ゾドによる家畜被害と気候変動 | 立入 郁(海洋研究開発機構・地球環境変動領域)

サイガの生態

分類

かつてモンゴルサイガはサイガと別種とされていましたが、今ではサイガの亜種(Saiga tatarica mongolica)として知られています。

サイガを構成する大半は、もう一つの亜種(Saiga tatarica tatarica)です。

生息地

サイガは標高1,600mまでの乾燥ステップや砂漠など、開けて乾燥した環境に生息します。

かつては南東ヨーロッパから中国まで生息していましたが、18世紀にはモルドバ、ウクライナ、20世紀には中国で絶滅しています。

カザフスタンのウスチュルトの個体群は冬にウズベキスタンや時にトルクメニスタンまで移動しますが、その数は年々減っていっているようです。

形態

体長は1~1.5m、肩高は0.6~0.8m、体重は28~45㎏でヤギくらいの大きさです。

オスの方が大きく、オスにのみ角が生えます。

長い吻部の中は毛がびっしり生えており、巻き上がる土ぼこりを取り除き、冬には吸気を温める役割を果たします。

冬が近づくと冬毛をまとい、寒さに備えます。

サイガ

食性

グレイザーである彼らは100種以上の草を食べます。

捕食者にはオオカミキツネが知られています。

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行動・社会

モンゴルサイガなど一部を除くと季節移動をします。

その際は数千頭の大集団になることもあります。

繁殖期にはオス1頭と5~10頭のメスからなるハーレムが見られます。

オスは繁殖期には採食の時間を削ってメスを守ります。

メスをめぐる闘争により、時に死に至ることもあります。

サイガは最高時速80㎞で走ることができます。

サイガ
Photo credit: U.S. Fish and Wildlife Service Headquarters

繁殖

交尾は12月に見られます。

メスは4.5~5カ月の妊娠期間ののち、1~3頭の赤ちゃんを産みます。

初めて出産するメスは1頭が多く、経験があるメスは2頭以上を産むことが多いです。

赤ちゃんは生後1週で草を食べ始めますが、完全に離乳するのは生後4ヵ月頃です。

その後、メスは生後7~8ヵ月、オスは2歳ごろ初めての繁殖を経験します。

寿命は野生で10年程度です。

サイガ
Photo credit: U.S. Fish and Wildlife Service Headquarters

人間とサイガ

絶滅リスク・保全

上述の通りサイガは個体数を一時期激減させ、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類に指定されていました。

しかしその後驚異的な回復を見せ、今では準絶滅危惧に指定されています。

ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅱに記載されています。

脅威としては、肉や角目的の密猟の、生息地の環境悪化、気候変動、家畜との競合、家畜から伝染する病気などがあります。

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動物園

日本ではサイガを見ることができません。

サイガを飼育することは難しいようで、世界的にも飼育下のサイガはごく少数です。

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