ハワイモンクアザラシの基本情報
英名:Hawaiian Monk Seal
学名:Neomonachus schauinslandi
分類:食肉目 アザラシ科 ハワイモンクアザラシ属
生息地:アメリカ合衆国
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

参考文献
最も絶滅が危惧される海棲哺乳類
高緯度に暮らすアザラシ類の中では珍しく、亜熱帯のハワイ諸島に生息するハワイモンクアザラシ。
彼らは数いる海棲哺乳類の中で最も絶滅が危惧されている一種です。
特に北西ハワイ諸島の個体群は長らく減少傾向にありました。
1950年代から始まる減少傾向は2000年代に入っても続きます。
北西ハワイ諸島における個体数は、1983年には1,520頭と推定されましたが、2011年には1,209頭とされるまで減少します。
彼らが減少した理由は様々です。
例えば海洋ゴミへの絡まりや混獲、トキソプラズマ症などの蔓延は、他の海棲哺乳類だけでなくハワイモンクアザラシにとっても大きな脅威であり続けてきました。
また、気候変動による環境の変化は彼らの生息地周辺のエサの量を減らし、アジやサメなどとの餌をめぐる競合が激しくなったことで、特に離乳したばかりの幼若個体に悪影響を及ぼした可能性が指摘されています。
このほかにも軍の活動の影響やサメによる捕食なども彼らの減少を助長したと考えられています。
そんなハワイモンクアザラシはアメリカ合衆国の「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(Endangered Species Act:ESA)」において「絶滅危惧種“endangered”」に指定されており、この他にも1972年に制定された「海棲哺乳類保護法(Marine Mammal Protection Act)」によって保護されています。
彼らの保全活動は、海棲哺乳類に対する積極的な活動として注目されています。

保全活動にも様々あります。例えばエサが不足している場所に生息する個体に対しては生息場所を移動させたり、リハビリ施設に入れて回復させたりします。
また、海洋ゴミの回収、絡まらないような漁具の開発、啓蒙活動、ワクチン接種などは間接的に彼らの生存を助けます。
こうした活動は彼らだけでなく他の海棲哺乳類の保全にも役立つことでしょう。一方、彼らの独特な状況や性質に応じた活動もあります。
例えばサメによる捕食を緩和する活動がそれです。
北西ハワイ諸島で最大の環礁であるフレンチフリゲート瀬では、約20年間、子供の生存率が他の場所よりも低い状態にありました。
ガラパゴスザメに捕食されていたからです。
このガラパゴスザメにより、毎年30%ほどの子供が犠牲になっていたと推測されています。
この状況に対し、例えば離乳した子供をより安全な場所に移すといった手法や、視覚的、電磁的、聴覚的方法でサメを妨害するといった手法がとられ、一定の効果を示しています。
ハワイモンクアザラシでは、単独もしくは複数のオスがメスや子供に対して攻撃し、最悪の場合は死に至らしめるという現象が知られています。
オスがメスよりも多いことからこのようなことが起きると推測されていますが、いまだになぜオスが攻撃的になるのかよくわかっていません。
しかし、このオスの攻撃は少なからず彼らの種としての生存を脅かしており、サメの場合同様、離乳した子を安全な場所に移したり、ケガした個体を治療したり、攻撃的なオスを間引いたりするといった対策が取られています。
以上のような保全活動は一定の効果を上げており、現在生きている個体の30%は保全活動によるものとされています。
そして、2011年には1,200頭近くまで減少した個体数は、現在では約1,600頭にまで増加。
このうち1,200頭が北西ハワイ諸島に、残りの400頭が主要なハワイ諸島に生息しています。


ハワイモンクアザラシの生態
分類
かつてハワイモンクアザラシ、カリブカイモンクアザラシ、チチュウカイモンクアザラシの3種はどれもモンクアザラシ属(Monachus)に分類されていましたが、前二者の新世界のものとチチュウカイモンクアザラシは遺伝的に離れていたことがわかり、前二者は今では新しく作られたハワイモンクアザラシ属に分類されています。
ちなみにコロンブスによって発見されたカリブカイモンクアザラシは17世紀以降、砂糖農家の機械を動かす油のために乱獲された結果、1952年の目撃例を最後に姿を消し、絶滅したとされています。

生息地
ハワイ諸島全域に生息しています。
稀にハワイ諸島から1,500㎞ほど西に位置するジョンストン島にも姿を見せることがあります。

形態
体長は2.1~2.4m、体重は170~240㎏で、体サイズに雌雄差はほとんどありません。
メスは乳頭が2対ありますが、これはモンクアザラシ類の他、アザラシ科ではアゴヒゲアザラシにしか見られません。
彼らを含むモンクアザラシ類は、年に1回、上皮ごと換毛しますが、これは他にゾウアザラシ類にしか見られません。



食性
底生生物を主食とします。
魚類、甲殻類、頭足類など餌生物はさまざまでサンゴの隙間の獲物も捕らえます。
夜に採餌することが多く、通常150m以内の潜水を6分ほど続けることが多いですが、最大で550m以上、20分近く潜水することができます。
行動・社会
海でも陸でも単独で暮らします。
稀に小さな集団で見られますが、個々のつながりは薄弱です。
陸は砂場、サンゴ、火山岩を利用しますが、砂のビーチを最も好みます。
回遊はせず、多くが生まれた場所周辺で暮らします。
ただ、10%程度は場所を変えて生活することもあります。

繁殖
出産は年中見られますが3月から8月にかけて最も多く見られます。
メスは約3ヵ月の着床遅延を含む11ヵ月の妊娠期間の後、1m、16~18㎏の赤ちゃんを一頭産みます。
母親は赤ちゃんが離乳する6週間、絶食して育児をします。
子供は離乳後、50~100㎏にまで成長します。
性成熟は4~5歳ごろに達します。
寿命は長くて30年です。
人間とハワイモンクアザラシ
絶滅リスク・保全
ハワイモンクアザラシは、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅰに記載されています。
アメリカ合衆国では、彼らは法的保護の対象となっています。
ただ、気候変動など地球規模の脅威は一国だけで対応できるものではありません。
海面上昇により彼らの陸の生息地が減少することが懸念されていますが、こうした問題の解決には世界的な協力が必要です。

動物園
日本ではハワイモンクアザラシを見ることはできません。
