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アカシカ

アカシカ
©2016 Carole Ratcliffe : clipped from the original
目次

アカシカの基本情報

英名:Red Deer
学名:Cervus elaphus
分類:鯨偶蹄目 シカ科 シカ属
生息地:アルジェリア、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ベルギー、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フランス、ジョージア、ドイツ、ハンガリー、イラン、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、モルドバ、モンテネグロ、オランダ、北マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、スイス、チュニジア、トルコ、ウクライナ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

アカシカ
Photo credit: Ian Elliott

アントラーとハレム

大型のシカであるアカシカは、ヨーロッパを中心に、中東やアフリカにも生息しています。

彼らの名前の由来は、夏の赤みがかった被毛です。

この毛は冬には厚くなり、色も灰褐色となっていきます。

この冬毛は春ごろ抜け落ち、彼らの体は再び赤みを取り戻します。

ちょうどこのころ、毛以外にも抜け落ちるものがあります。

それが角です。


シカの角は枝角、英語ではアントラーと呼ばれます。

アカシカのアントラーはオスにのみ生え、成熟するほどに大きく、先端が増え複雑になります。

アントラーは毎年生え変わります。

3月から4月にかけて抜け落ち、直後に新しい角が生え始めます。

この時、角の周りは皮膚で覆われており、血が流れています。

この状態の角を袋角と言います。

この皮膚は繁殖が始まる8月から9月にははげ落ち、真の枝角となったアントラーは、繁殖を終えた後、再び春先に抜け落ちるのです。

このようなアントラーの再生サイクルは枝角サイクルと呼ばれ、テストステロンというホルモンの増減に影響されています。


アントラーの使い道は、それがオスにのみ生えることから繁殖にかかわることが想像できます。

実際、アカシカのアントラーは繁殖において非常に重要な役割を果たしています。

アカシカはハレム(ハーレム)型の繁殖システム(配偶システム)を持つ代表的な種です。

それまで雌雄別で行動していたアカシカは、繁殖期になると合流します。

そしてオスたちはメスをめぐって争うわけですが、この時、アントラーはメスへの視覚的なアピールとして重要です

複雑で大きなアントラーは成熟したオスにのみ生えるため、メスたちはそのような強いオスを、アントラーを見て選ぶのです。

アントラーはそれだけでなく、オス同士で戦う際の武器にもなります。

物理的な闘争に発展するのは、オス同士の力が拮抗しているときですが、このような闘争では死んでしまう個体もいます。


アントラーの他にも、オスたちは吠え声やにおいを使ってメスを独占しようとします。

最終的にメスと交尾できるのは勝ち残った強いオスだけ。

そのようなオスたちは、特定のなわばりをもちメスたちを囲って防衛するのではなく、メスたちの動きに合わせて彼女たちを他のオスから防衛します。

この時の一頭のオスと複数のメスからなる群れ、つまり一夫多妻の群れをハレムといい、繁殖のためのこのような雌雄の結合様式をハレム型の繁殖システム(配偶システム)と呼びます。

アカシカのハレムはオス1頭に対しメス5、6頭が一般的ですが、非常に流動的であるため、オスたちはハレムを築いた後も気を抜くことができません。

アカシカのオスがメスよりも大きく、アントラーを持っているのも、このようにメスをめぐるオス同士の争いが激しいからなのです。

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Red Deer Stags Clash Violently for the Right to Mate 🦌 | Smithsonian Channel Two male stags lock horns in a battle for exclusive mating rights with a harem of hinds. As the battle wears on, there can only be one of three outcomes: out...
アカシカ
Photo credit: Stig Nygaard

アカシカの生態

分類

21世紀ごろまで、ワピチはアカシカの亜種とされていましたが、21世紀以降、両者は独立種という見解が一般的です。

また、かつて亜種とされていた中央アジアに生息するタリムアカシカ(Cervus hanglu)も、今では独立した種として扱うことがあります。

アカシカの亜種としてはイタリアの亜種(C. e. italicus)やアフリカの亜種(C. e. barbarus)など7亜種が代表的です。

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生息地

標高5,000mまでの落葉樹林や針葉樹林、混交林などに生息します。

開けた草場がパッチ状にある森林を好みます。

ギリシャなど、一度は絶滅したものの、再導入や他から侵入した個体によって現在も生息しているところが少なくありません。

ただ、アルバニア、イスラエル、ヨルダン、レバノン、シリアでは絶滅しています。

もともとの生息地ではありませんが、アルゼンチンやオーストラリア、チリ、ニュージーランドには人為的な導入によってアカシカが生息しています。

アカシカ
Photo credit: Heather Smither

形態

体長は1.7~2.1m、肩高は1.1~1.4m、体重は75~220㎏で、オスがメスの体重の2倍になることもあるほど性的二型が顕著です

成熟したオスは、最大20近くの先端があるアントラーを持つこともあります。

アカシカは胃を四つもち、反芻する反芻動物です。

食性

草や木の芽、樹皮、枝などを食べます。

特に秋には種子や果実が重要な食物となります。

農作物も食べるため、人間との間に軋轢を生むことがあります。

捕食者にはヒグマオオカミが知られています。

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行動・社会

24時間活動しますが、薄明薄暮時に最も活発になります。

夏は高地の草地や森で暮らしますが、冬には山を下り谷で採餌します。

季節による垂直移動はありますが、その範囲は広くはなく基本的に定住傾向にあります。

繁殖期を除くと、メスは母子中心の小さな群れで暮らしますが、冬には大きな群れを作ることもあります。

一方、オスは単独か、特に若いオスはオスだけの群れを作ります。

アカシカ
袋角のオスたち | Photo credit; Frank Vassen

繁殖

繁殖は9月から11月にかけて行われます。

メスは約240日の妊娠期間の後、斑点のある15㎏ほどの赤ちゃんを一頭産みます。

生まれて数日の間、赤ちゃんは群れから離れた茂みなどで育てられますが、その後母親の群れに合流します。

生後2カ月で離乳し、メスは1~2年で性成熟および社会的成熟に達します。

オスもこの頃性成熟に達しますが、実際に彼らがメスと交尾できるようになるのは体が育ちきる5、6歳ごろです。

寿命は野生で15年、飼育下では27年生きた個体がいます。

アカシカ
Photo credit: Blondinrikard Froberg

人間とアカシカ

絶滅リスク・保全

全体としてアカシカの個体数は増加傾向にあり、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

ロシアを除くヨーロッパには2005年時点で240万頭いたとされており、その頃毎年50万頭近くが捕獲されていました。

地域によっては過剰な捕獲や生息地の減少が脅威となっていますが、全体から見るとその影響は限定的です。

ただ、亜種によっては他の亜種との交雑や、ワピチニホンジカとの交雑が問題視されています。

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動物園

日本でアカシカを見ることはできません。

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