ハイイロネズミキツネザルの基本情報
英名:Grey Mouse Lemur
学名:Microcebus murinus
分類:コビトキツネザル科 ネズミキツネザル属
生息地:マダガスカル
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
ネズミ?キツネ?サル?
これほどまでに煩わしい名前のサルなんてほかにいません。
あ、うっかり答えを言ってしまいました。
そうです、ハイイロネズミキツネザルは、ネズミでもキツネでもありません。
れっきとしたサルの一種なのです。
ネズミのような、キツネのような、サルなのです。
とはいえそのルックスはとてもサルであるとは思えません。
なにせネズミのように小さい!
体長わずか12㎝、体重60g、しっぽ約12㎝ともうネズミといってもいいくらいです。
当然のことながら、子どもはこれよりももっと小さくなります。
生まれたての赤ちゃんはなんと6g。
1円玉6枚の重さです。手のひらに1円玉を6枚載せてみてください。
無に等しい重さです。
ネズミキツネザル属のなかまは、霊長類の中でも最も小さいサルです。
こんなに小さい生き物が私たち人間と同じ霊長類のなかまであるとはとても信じられないですね。
ネズミのようなネズミキツネザルですが、ネズミと明らかに違う部分があります。
それが寿命です。
ネズミの寿命はせいぜい2年ほどですが、同じ大きさでもネズミキツネザルの寿命は約15年です。
サルは体の大きさの割に長生きな生き物なのです。
ハイイロネズミキツネザルの生態
生息地
ハイイロネズミキツネザルは、マダガスカル島の西部から南西部にかけて、沿岸の乾燥林などに生息します。
食性
雑食性で、主に昆虫を食べます。
垂直の枝を後肢でつかみ、地面に平行するように体を浮かせる「旗姿勢」という独特の姿勢で動きの速い昆虫も捕獲します。
また、甲虫を食べるためか、手には吸盤があり、歯は全て尖っています。
この他には果実や花、樹液、蜜なども食べます。
冬になるとえさも少なくなり活動が鈍りますが、しっぽに蓄えられた脂肪を用いて乗り切ります。
形態
ハイイロネズミキツネザルは、見た目はネズミに似ていますが動きがネズミとは違います。
このサルは、ネズミと違って枝の上をピョンピョン、木から木へピョンピョン、ジャンプして移動するのです。
また、大きな耳と目や、キツネザルのなかまが持つくし歯もネズミとは異なるところでしょう。
行動
このサルは、夜に活発になる夜行性です。
夜になるとえさを探しに森に繰り出します。
他の夜行性のキツネザル同様、目にタペータムという組織を持っており、それが光を増幅するので夜でも活動することができます。
日中は木の洞などで眠ります。
ある地域ではメスはメスで複数集まって眠ることがある一方、オスは1~2頭で眠る傾向があるようです。
このサルの場合メスはオスよりも優位にあるので、もしかしたらオスははじき出されているのかもしれません。
下の動画では、言い寄るオスの顔をメスがパンチしています。
最終的にはメスはオスを自分の木の穴に迎え入れるのですが、オスとメスの力関係がよくわかる動画です。
繁殖
ハイイロネズミキツネザルは、9月~3月にかけて繁殖が行われます。
妊娠期間は55~70日で、通常双子の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは母親によって育てられ、約240日で性成熟に達します。
人間とハイイロネズミキツネザル
絶滅リスク・保全
ハイイロネズミキツネザルは、二次林にも生息でき、絶滅の危機に関しては軽度懸念とされていますが、個体数は減少しているようです。
焼畑農業などによる森林の破壊や、ペット目的の密猟がその理由です。
動物園
そんなハイイロネズミキツネザルは、残念ながら日本の動物園で見ることができません。
こんなにかわいいサルが動物園にいたら絶対人気者になれるのに!