バーバリーシープの基本情報
英名:Aoudad
学名:Ammotragus lervia
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 バーバリーシープ属
生息地:アルジェリア、チャド、エジプト、リビア、マリ、モーリタニア、モロッコ、ニジェール、スーダン、チュニジア、西サハラ
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉

険しくてもたくましく
アフリカ北部に生息するヒツジの仲間、バーバリーシープ。
バーバリーとは北アフリカに位置するモロッコからリビアまで、いわゆるマグリブ地方のことを言い、その地に住む原住民ベルベルに由来する言葉です。
哺乳類では他に、バーバリーマカクがこの名を冠しています。

雌雄ともに生える角や、喉から前足にかけて生える長い毛が特徴的なこの哺乳類は、標高4,100mまでの険しい岩場や山に生息します。
がっちりした彼らの体躯は、安定しない場所でも難なく移動できる力を与えます。
脚力は素晴らしく、2m近い障害物を乗り越えることができるほどです。
また、彼らは乾燥にも非常に強く、水分の多いエサがあれば、代謝水も利用しながら何カ月もの間、水を飲まずに生活することができます。
そんな彼らは繁殖力が強い生き物です。
一腹産仔は通常1頭ですが、7~8回の出産のうち1回の割合で双子が生まれます。
子供は1.5歳ごろ性成熟に達しますが、1歳に満たない個体が繁殖できる場合もあるようです。
バーバリーシープは1950年代、それまで動物園や私有地で飼育されていた個体50頭程度が、本来の生息地ではないアメリカ合衆国のテキサス州やニューメキシコの野生に放たれました。
放たれた個体はその適応力でその地に定着し、今では5,000頭を超えるバーバリーシープが生息しています。
また、19世紀にはヨーロッパにも導入されており、定着しています。
異国の地で繁栄を見せるバーバリーシープですが、本来の生息地では危機的状況にあります。
肉や角を狙った密猟や生息地の破壊、家畜との競合により数を減らしているのです。
特にエジプトではラクダとの競合も問題になっています。
険しい環境でもたくましく生きるバーバリーシープですが、その生存能力をもってしても、今の状況を生きのびることは難しいかもしれません。
彼らの現状の把握と適切な保全が求められています。


バーバリーシープの生態
生息地
標高200~4,100mまでの開けた森林やステップ地帯に生息します。
急峻な崖や岩場に好んで暮らします。
形態
体長は1.3~1.7m、肩高は75~110㎝、体重はオスが145㎏まで、メスが65㎏まで、尾長は約15㎝でオスの方が大きくなります。
オスでは角や毛が特に発達しています。
角(ホーン)は雌雄ともに生えますが、メスが40㎝程度である一方、オスのものは80㎝程度まで成長します。

食性
草や広葉草本、低木を食べます。
冬は草の割合が増えます。
捕食者にはヒョウやカラカルがいます。


行動・社会
バーバリーシープは1頭の大人オスを含む数頭からなる群れで生活します。
日中は岩陰に身を潜め、捕食者や人間を避けます。
特にオスは闘争の際、角をぶつけ合いますが、キックはしません。
繁殖
繁殖は主に9月から11月にかけて見られます。
妊娠期間は約160日で、稀ですが最大3頭までの赤ちゃんが生まれます。
子は生後4か月ほどで離乳します。
寿命は野生で10年、飼育下で約20年です。

人間とバーバリーシープ
絶滅リスク・保全
バーバリーシープの全体の個体数は不明ですが、成熟個体は5,000~1万頭の範囲と見積もられています。
個体数は現在も減少傾向にあるとされており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅱに記載されています。
脅威としては干ばつ、砂漠化、森林伐採、家畜の採食などによる生息地の劣化、破壊や密猟などが挙げられます。

動物園
バーバリーシープには日本でも会うことができます。
東京都の大島公園、静岡県の富士サファリパーク、日本平動物園、山口県の秋吉台自然動物公園サファリランド、福岡県の福岡市動植物園がバーバリーシープを飼育・展示しています。