オオミミギツネの基本情報
英名:Bat-eared Fox
学名:Otocyon megalotis
分類:イヌ科 オオミミギツネ属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、エチオピア、ケニア、モザンビーク、ナミビア、ソマリア、南アフリカ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
ユニークフォックス
オオミミギツネには様々な特徴があります。
まずは、何と言っても大きな耳。
名前にも付けられている大きな耳は、12㎝にもなります。
ちなみに、英名の“Bat-eared”は、その耳がコウモリの耳に似ていることからつけられました。
大きな耳は、地中にいる昆虫のわずかな動きも感知します。
このよく聞くという機能の他に、耳は熱の放出という機能も持っています。
表面積の大きな耳からより多くの熱を発散するのです。
お次は歯。
外からはよく分かりませんが、オオミミギツネは他のイヌ科動物よりも多くの臼歯を持ちます。
通常、イヌ科動物の臼歯は、多くても上顎片側に2本、下顎片側に3本ですが、オオミミギツネは上顎片側に3~4本、下顎片側に4~5本もの臼歯を持ちます。
その結果、他のイヌ科動物の歯の本数が42本なのに対し、オオミミギツネの歯の本数は46~50本にもなります。
歯が多いことは原始的な証拠とされ、それには彼らの昆虫食という特徴が関係していると言われています。
オオミミギツネにはジャッカルや猛禽類などの天敵がいますが、この天敵や別の群れが近づいてきた時の行動もユニークです。
まず、彼らは背中を丸め、尾を逆Uの字に曲げて味方に敵の存在を知らせます。
そして天敵がさらに近づいてくると、彼らは四肢を伸ばしたままボールがバウンドするように何度もジャンプするストッティング(スプリングボックに見られる。下の動画参照)に似た行動を見せます。
これらはイヌ科動物の中では彼らにしか見られない行動です。
この他にも沢山ユニークな一面がありますが、それは次章で見ていきましょう。
オオミミギツネの生態
生息地
オオミミギツネは、東部アフリカと南部アフリカという2つの離れた地域の、半砂漠やサバンナに生息します。
特に丈の短い草原を好むので、草を食べる有蹄類がいなくなり草が伸びてくると、彼らもなわばりを捨てて移動します。
主に夜行性で、タンザニアのセレンゲティ平原では活動の85%が夜間に見られます。
しかし、南部アフリカでは夏は夜行性に、冬は昼行性になるようです。
食性
主食は昆虫で、シュウカクシロアリというシロアリや、シマウマなどひづめを持つ有蹄類の糞を利用するスカラベという糞虫などを好んで食べます。
形態
体長は46~66㎝、体重は3~5.3㎏、しっぽの長さは23~34㎝になります。
行動
オオミミギツネは、基本的にペア型の群れを作ります。
群れは1.2㎢前後のなわばりを持ち、尿でマーキングします。
ただ、南アフリカでは、なわばりは重複しておりマーキングもほとんど見られないようです。
ちなみに、糞はマーキングに使われず、特定の場所に溜められます。
繁殖
繁殖には地域ごとに季節性があります。
交尾は雨季に行われ、交尾時には交尾結合が見られます。
これは、亀頭球という器官の影響で陰茎を膣から抜き取れなくなるためにスラスト(腰を振ること)後も密着したまま動かなくなることで、イヌ科動物によく見られます。
メスの妊娠期間は60~70日で、一度に100~140gの赤ちゃんが2~5匹産まれます。
出産と子育ては巣穴で行われます。
巣穴は自分で作ることもあれば、ツチブタやイボイノシシ、トビウサギが作った穴を改造して作ることもあります。
育児には父親も参加します。
通常と異なり育児期は父親と母親が交互に採食に出かけ、もう一方は巣穴を守ったり子供たちと遊んだりします。
食物の吐き戻しは見られず、授乳は4カ月にも及びます。
これはイヌ科動物の中では最長です。
赤ちゃんは生後5~6カ月で大人と同じ大きさになり、8~9カ月で性成熟に達します。
そして繁殖期になると群れを出ていきますが、メスは群れに留まり繁殖を行うこともあるようです。
寿命は飼育下で長くても約14年です。
オオミミギツネに会える動物園
オオミミギツネは、毛皮目的の狩猟や家畜を襲う害獣として駆除の対象となることもあり、また、個体数は病気や干ばつで変化はするものの、絶滅の危機にはなく、レッドリストでも軽度懸念(LC)の種とされています。
そんなオオミミギツネですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
ユニークなオオミミギツネ、是非生で見てみたいものです。