セグロジャッカルの基本情報
英名:Black-backed Jackal
学名:Canis mesomelas
分類:イヌ科 イヌ属
生息地:アンゴラ, ボツワナ, ジブチ, エリトリア, エスワティニ, エチオピア, ケニア, レソト, モザンビーク, ナミビア, ソマリア, 南アフリカ, 南スーダン, スーダン, タンザニア, ウガンダ, ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
高い社会性
セグロジャッカルは、ジャッカルの中でも最も社会性の高い種として知られています。
それは彼らのコミュニケーションにも現れています。
例えば、群れのメンバー間では、頻繁に毛づくろいを見ることができます。
また、唸る声、吠える声、わめく声、遠吠えなど、状況に応じて様々な音声を使い分け、このようなコミュニケーション能力はジャッカルの中で最も発達していると言われています。
コミュニケーションの他にも、複数が協力して狩りを行うことや長期的なペア関係を雌雄間で築くことなどからも彼らの社会性の高さがうかがえます。
このように彼らの社会性を示すものはいくつかありますが、その中で最も特異なのは、ヘルパーという存在です。
これはジャッカルのなかまに見られる特徴的な利他行動ですが、セグロジャッカルのヘルパーの働きはその中で最も効果的です。
ヘルパーは、成熟後も群れに留まり弟や妹の育児を手伝う個体のことを指します。
このヘルパーが群れに1頭いれば、いない場合よりも多くの子を育てられ、その群れの繁殖成功度は1.7頭増えるという研究結果もあります。
これは他のジャッカルよりも高い数字です。
また、ヘルパーが増えればその分、弟や妹の生存率は上がります。
兄や姉が弟や妹の世話をすることは人間世界では当たり前のように見られますが、イヌ科の動物にも見られるのですね。
セグロジャッカルの生態
セグロジャッカルは、互いに900kmほど離れたアフリカ東部と南部の草原やサバンナ、藪の多い森に生息します。
主に薄明性ですが、地域によっては昼または夜にも活動します。
特に、人間がいる地域のセグロジャッカルは夜行性です。
彼らは哺乳類や鳥類、爬虫類、昆虫、果実、地下茎などの植物質も食べる雑食性で、腐肉も食べます。
一般に、狩りは対象が大型の場合は群れで、小さな場合は単独で行われます。
特定の食物が全体に占める割合は地域によって変わり、3分の2が小型哺乳類によって占められていることもあれば、5割以上が昆虫で占められていることもあります。
体長は68~75㎝、肩の高さは30~48㎝、体重は7~13.5㎏、しっぽの長さは30~38㎝で、オスの方がやや大きくなるようですが、見た目の上での雌雄間の差はほとんどありません。
セグロジャッカルは、基本的にペア型の群れで行動します。
このペア関係は対等で長期に及び、毛づくろいなどできずなを深めます。
群れの行動域は数㎢で、糞尿でマーキングされます。
繁殖には地域ごとに季節性が見られます。
交尾時には交尾結合が見られます。
メスは通常年に一度、60~65日の妊娠期間の後、ふつう4匹の赤ちゃん(最大9匹)を産みますが、このうちオトナになるまで生存できるのは1~3匹です。
出産と育児は巣穴で行われます。
巣穴は自ら掘ることもあれば、シロアリの塚やツチブタが掘った穴、岩の隙間などを利用することもあります。
育児にはオスも関わり、食物を運んだり遊んだりします。
赤ちゃんは生後56~63日で離乳し、生後約半年には自分で狩りができるようになります。
生後11カ月には性成熟に達し、2歳以上になると自分のなわばりを持つようになります。
成熟後はヘルパーとして弟や妹の育児に参加する個体もいますが、遠くへ放浪していく個体もいます。
寿命に関しては、飼育下で14年生きた個体がいますが、野生ではせいぜい7年です。
人間とセグロジャッカル
絶滅リスク・保全
セグロジャッカルは、家畜を襲ったり、狂犬病をイエイヌにうつしたりするため、駆除されることがあります。
しかし、このような駆除を含めてもセグロジャッカルにとっての脅威はほとんどなく、個体数も安定しています。
レッドリストでは軽度懸念の種として記載されており、絶滅の危機はほとんどありません。
動物園
そんなセグロジャッカルに限らず、ジャッカルと名のつく動物を日本の動物園で見ることはできません。
彼らの社会性を是非見てみたいところですが、残念です。