ボンテボックの基本情報
英名:Blesbok
学名:Damaliscus pygargus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ダマリスクス属
生息地:南アフリカ、レソト
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ボンテボックとブレスボック
ボンテボックという種には、南アフリカの西ケープ州に生息するボンテボック(Damaliscus p. pygargus)という亜種と、東ケープ州や北ケープ州、フリーステイト州などに生息するブレスボック(Damaliscus p. phillipsi)という亜種がいます。
和名がボンテボック、英名がブレスボックと異なっているのは、どちらの亜種名を種名として採用するかの違いであり、それぞれもう一方の亜種名で種を呼ぶこともあります。
ボックという名前はアンテロープを意味しますが、ボンテボックのボンテは「明るい色をした」、ブレスボックのブレスは「顔の白い模様」という意味のアフリカーンス語にそれぞれ由来しています。
ただ、その体色を見ると、名前はむしろその反対を表しているようです。
ボンテボックは濃い体色と紫がかった背中の毛色、そして顔やお尻、足のはっきりとした白い模様が特徴的ですが、ブレスボックは赤みがかった明るい茶色の毛をしており、ボンテボックよりは白い模様があいまいです。
体色だけでなく、生態にも違いが見られます。
10頭以内の群れを成すボンテボックは、1頭のオスが年中なわばりを守り、そこにメスやその子供の小さい群れが年中とどまります。
一方のブレスボックの群れは、ボンテボックよりも大きくなり最大25頭。
また、エサの少ない冬と春は、エネルギーの節約なのかオスはなわばりを作りません。
この時期、ブレスボックの群れは老若男女問わず、最大650頭もの群れになることがあります。
このような違いがある両者ですが、実はどちらも過去に個体数を激減させたことがあります。
原因は過度な狩猟で、19世紀にはレソトで絶滅し、個体数は、ブレスボックは約2,000頭、ボンテボックに至っては20頭未満になるまでになりました。
しかし、幸い私有地の農園などに彼らが残っており、そこから保全活動により個体数は回復します。
現在、成熟個体は両者合わせて5万5千頭以上と推測されるまでになっています。
狩猟は未だ存在しますが、今ではそれよりも問題となっていることがあります。
それが交雑です。
もともと、両亜種の生息地は重複していませんでしたが、個体数減少後、各地へ導入されたことにより、生息地の重複がみられるようになります。
その結果、両亜種が交雑するようになり、それが両亜種の存続を阻みうる、新たな脅威となっています。
ボンテボックとブレスボック、今後そこに新たな名前が加わる日が来るかもしれません。


ボンテボックの生態
生息地
標高2,000mまでの開けた草原に生息します。
現在はもともとの生息地でないエスワティニやジンバブエ、ボツワナ、ナミビアの農園や牧場などにも生息しています。
形態
体長は1.4~1.6m、肩高は0.8~1m、体重はオスが65~85㎏、メスが55~70㎏、尾長は30~45㎝で、ブレスボックの方がボンテボックよりも大きくなります。
角(ホーン)は雌雄ともに生えますが、メスの角はやや華奢になります。

食性
グレイザーである彼らは、イネ科の短い草を主食とします。
飲み水は必ず必要です。

行動・社会
薄明薄暮時に最も活発になります。
成熟したオスは単独でなわばりを作りますが、若いオスは若いオス同士で群れを作ります。
なわばりは糞尿や目の下などにある臭腺から出る分泌物でマーキングされます。
繁殖
ボンテボックの繁殖のピークは2月、ブレスボックは4月です。
メスの妊娠期間は約8ヵ月で、一頭の明るい色をした単色の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは1~2時間以内に自由に歩けるようになります。
寿命は野生で15年程度、飼育下では20年以上生きる個体もいます。

人間とボンテボック
絶滅リスク・保全
ブレスボックの成熟個体数は5.4万頭と推定されており、増加傾向にあります。
一方、ボンテボックのそれは758~1,618頭と推定されています。
ただ、他にも限られた範囲に囲われた5,000頭程度が存在しています。
肉やトロフィーを目的とした狩猟が今も行われていますが、亜種間の交雑が現在の主要な脅威です。
IUCNのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅱに記載されています。

動物園
ボンテボックおよびブレスボックを日本で見ることはできません。
ただ、千葉市動物公園では飼育歴があるようです。

