バーラルの基本情報
英名:Blue Sheep
学名:Pseudois nayaur
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 バーラル属
生息地:ブータン、中国、インド、ミャンマー、ネパール、パキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉
岩羊
ヤギを漢字で書くと「山羊」。
その表記のごとく、ヤギの仲間には山地に生息する種が多いですが、チベット高原やヒマラヤ山脈などの山岳地帯に生息するこのバーラルは、ヤギ亜科に分類される、広義でのヤギの仲間です。
そんな彼らもまた標高2,500m以上に生息する、高地に適応した種になります。
標高5,500mまでの日本には存在しない高地でも見られるバーラルを漢字で書くと「岩羊」。
やはり名は体を表します。
バーラルは、とても人が近づけないような、岩や崖が多い山で暮らします。
彼らはときにエサを求めて、その崖や急峻な岩場にすら足を踏み入れます。
たくましい足と蹄、そしてバランス感覚を持つバーラルは、不安定な足場でも何のその。
進化の歴史が積み上げてきた本能と、幼いころから培われてきた経験とで、彼らは崖を走ることすらしてしまいます。
エサを手に入れる以外に、こうした険しい場所で暮らすメリットの一つは、捕食者に襲われにくいこと。
断崖絶壁を登ることができる捕食者は多くありません。
さらに、バーラルは類まれな運動神経だけでなく、自らの体色を背景の色に近づけることでさらに捕食者に見つかりにくくしています。
彼らの体色は背景と同じように青みがかかることもあり、それが理由で英語では“Blue Sheep(青いヒツジ)”と呼ばれることもあります。
そんなバーラルにも、天敵が存在します。それがユキヒョウです。
ユキヒョウは大型ネコの一種で、彼らもまた高地に適応しています。
彼らの足は大きく、不安定な足場でも優雅に移動することができます。
また、長い尻尾はバランス力をもたらし、強靭な四肢はダイナミックな動きを可能にします。
そんなユキヒョウに見つかったら、いくらバーラルでも捕食される危険性があります。
捕食されずとも、ひとたび足を外せば落下して死んでしまう危険性もあります。
捕食と落下の危険がありながらも、岩場や崖を歩くことをやめないバーラル。
岩羊の名も伊達ではありません。
バーラルの生態
生息地
バーラルは標高2,500~5,500mの、崖や岩場がある山脈の開けた丘などに生息します。
森林は避けて生活します。
風や暑さ、寒さに強く、礫砂漠などの険しい環境でも生きていけます。
形態
体長は1.2~1.4m、体重は25~80㎏で、オスの方が大きくなります。
角は雌雄に生えますが、オスの方が圧倒的に大きくなります。
オスの角は、1歳ごろはまっすぐで10㎝程度ですが、5~7歳で完全に成熟すると45~55㎝ほどのカーブした大きな角になります。
食性
季節に応じて高地に生える草やコケ、地衣類などを食べます。
主な捕食者はユキヒョウですが、オオカミやヒョウに捕食されることもあります。
行動・社会
昼行性のバーラルは、社会性を持ちます。
季節や生息環境などにより5~400頭の群れを作ります。
繁殖
繁殖期は12月から1月にかけて、出産は初夏に見られます。
メスは160日前後の妊娠期間ののち、通常1頭の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは生後半年ごろ離乳し2~7歳で性成熟に達します。
寿命は12~15年です。
人間とバーラル
絶滅リスク・保全
バーラルは険しい環境で生きているため、どのくらいが存在するのかよくわかっていません。
個体数も最小の予測で約4万頭、最大の予測だと約40万頭と幅があります。
ただ、絶滅は懸念されるほどではなく、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
家畜による攪乱もバーラルでは影響は小さく、大きな脅威はないとされています。
ただ、地域によっては狩猟や生息地破壊などの影響がある場合があるようです。
動物園
日本では、神奈川県横浜市の金沢動物園と、兵庫県の姫路セントラルパークでバーラルに会うことができます。