キボシイワハイラックスの基本情報
英名:Bush Hyrax
学名:Heterohyrax brucei
分類:イワダヌキ目 ハイラックス科 イワハイラックス属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、ブルンジ、コンゴ民主共和国、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ケニア、モザンビーク、ソマリア、南アフリカ、南スーダン、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:LC〈経度懸念〉
他の種との共生関係
その見た目に反し、最も近縁なのがゾウとされる、アフリカの小型哺乳類ハイラックス。
その一種であるキボシイワハイラックスは、崖や岩場の隙間で暮らします。
そんな彼らには、地上から狙うヒョウやブラックマンバ、そして空から狙うコシジロイヌワシなど様々な捕食者が存在します。
彼らは捕食者に対してどのような対策を持っているのでしょうか。
まず、彼らは住処である岩場から離れて行動しません。
そうすることで危険時にはすぐに岩の隙間に隠れることができます。
そして、彼らは群れを形成します。
これにより、捕食者に対する目が増え、危険をすぐに察知することができます。
ハイラックスはよく鳴く生き物です。危険が迫ったときには鳴いて仲間に知らせるのです。
また、ハイラックスの目には特殊な膜が存在し、これが眩しさを和らげることで、眩しい太陽に紛れる猛禽類の姿を察知することができます。
そんな捕食者対策の中でも特に興味深いのは、彼らが他の種とともに行動することです。
他の種とは、同じハイラックスであるケープハイラックス。
彼らと日光浴や採餌などの行動を共にすることで、群れの形成と同じ効果、つまり捕食者に対する目が増える効果が高まります。
このような他の種との群れは混群と呼ばれ、ともに利益を得るような共生関係の一種とされています。
共生関係と言えば、キボシイワハイラックスは霊長類のヒヒとの関係も知られています。
ヒヒが樹上で食べた果実の残りを、ハイラックスが食べるのです。
ハイラックスは木を登ることができるので、直接この実にありつけるかもしれませんが、無傷の状態でこの実を食べることができません。
しかし、ヒヒの食べかけであれば食べることができます。
さきほどのケープハイラックスとの共生関係は食べられることに対するものでしたが、今度は食べることに対する共生関係です。
このような関係は、鯨類など他の哺乳類にも見ることができます。
種を超えた共存関係は、人間が動物たちから学ばなければならないことの一つです。
霊長類と他の動物の混群現象についての研究の現状 | 辻大和 (2008)
キボシイワハイラックスの生態
生息地
キボシイワハイラックスは主に東アフリカ一帯に、標高3,800mまでのアカシア林などが近接する岩場や急峻な崖などで暮らします。
ケープハイラックスと一部で同所的に生息していますが、交雑は確認されていません。
形態
体長は30~38㎝、体重は2~3㎏でオスがやや大きくなります。
指には蹄のような爪が生えており、足の裏は毛がなく、分泌物で湿らせることで岩に滑らず歩くことができます。
食性
植物食性の彼らは葉っぱや果実、茎、樹皮、草などを食べます。
彼らの胃や腸などの消化管には微生物が共生しており、これにより植物を消化することができます。
子は微生物を親から譲り受けるため、親の糞を食べます。
行動・社会
数十頭からなる、単雄複雌を基としたコロニーを作ります。
昼行性の彼らは体温調節が苦手で、よく日光浴をします。
自分で穴を掘ることはできませんが、ツチブタなどが捨てた穴を利用することがあります。
繁殖
繁殖期は雨季の終わりである4~6月です。メスは7.5ヵ月の妊娠期間ののち、1~4匹の赤ちゃんを毛が敷かれた岩陰の巣に産みます。
赤ちゃんは毛で覆われ、目も開いており、生後数時間ほどで母親について歩くことができます。
性成熟には生後約16ヶ月で達し、寿命は野生で長いと10年以上です。
人間とキボシイワハイラックス
絶滅リスク・保全
キボシイワハイラックスは一部地域で毛皮などを目的とした狩猟が行われている可能性がありますが、広範囲に生息しており、個体数も十分と考えられているため、絶滅は懸念されていません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
動物園
キボシイワハイラックスは埼玉県こども動物自然公園で見ることができます。