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『ENDANGERED 絶滅の危機にさらされた生き物たち』

ENDANGERED 絶滅の危機にさらされた生き物たち
目次

書籍情報

書名:ENDANGERED 絶滅の危機にさらされた生き物たち
著者:ティム・フラック
発行年:2017年
価格:4,200円(+税)
ページ数:335ページ

ENDANGERED 絶滅の危機にさらされた生き物たち/バーゲンブック{ティム・フラック 青幻舎 理学 工学 生物 動物 生命科学 写真 科学 地球 写真家 写真集}

この生き物が絶滅危惧種?

本書は、題名にもある通り絶滅の危機に瀕した生物たちがフォーカスされています

これを頭に入れてページをパラパラとめくっていくと、必ず驚くことになります。

しかも何回も。

というのも、皆さんもよくご存じの、どこの動物園にもいる動物が、何匹も紹介されているからです

思わず自分の無知を反省してしまいます。

もちろん取りあげられているのは動物たちだけではありません。

本書では、有名なものから無名のものまで、サンゴや昆虫、鳥類、魚類などあらゆる生物に光が当てられており、絶滅という事象のスケールのでかさを思い知らされます。

本書には当サイトでご紹介してきたサルたちも登場します。

その中でも、クロカンムリシファカは本書の表紙を飾っており、存在感を発揮しています。

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豊富なテキスト

本書は写真家によって著されたものですが、写真だけでなくテキストも充実しています

テキストは、ナショナルジオグラフィック協会の主任研究員であるジョナサン・ベイリーとライターのサム・ウェルズによって書かれています。

写真に添えられる彼らのテキストは、本書において重要な役割を果たしています。

題名から考えても当然のことながら、彼らの解説は生物を取り巻く環境や保全に焦点が当てられています。

読む者は、写真だけでは見えてこないその生き物の背景を描く彼らのテキストを目の当たりにすることで、自分の無知を恥じ、生物に対して各々の感情を呼び起こすことになります。

解説を読むことで、写真の中の生物の見え方が違ってくることもあるかもせれません。

なお、巻末には取り上げられた生物のより詳しい解説がついているので、図鑑としての面白さもあるかもしれません。

ENDANGERED 絶滅の危機にさらされた生き物たち/バーゲンブック{ティム・フラック 青幻舎 理学 工学 生物 動物 生命科学 写真 科学 地球 写真家 写真集}

物言う写真

本書の著者であるティム・フラックは、数々の賞を受賞してきたイギリスを代表する動物写真家です。

そんな彼が撮る写真は、どれも見るものに何かを訴えかけてきます。

特に自然界ではありえない真っ黒な背景に浮かぶ動物たちには感情移入せざるを得ません。

ティムは、本書の冒頭で著名な生物学者ジョージ・シャラーの言葉を引用します。

保全は感情に基づいて、心から生じるものであるということを決して忘れてはならない。(頁11)

そして、本書の政策意図について次のように述べます。

…本書ではちょっとした実験をした。「異質なもの」との橋渡しをすることより、むしろ動物たちの個性を強調した肖像写真を撮影し、「同じもの」だという感覚を起こそうとしたのだ。(頁11)

文明が発展するにつれて人々は都市に住むようになり、自然と断絶した生活を送るようになりました。

そんな中で、本書はもう一度、自然は私たちと「同じもの」であることを思い出させようとしているのです。

そして自然への共感や同情は、自然を保全することにおいて決定的に重要なことなのです。

この点で、先ほど出てきたクロカンムリシファカの写真は本書を最も体現していると言えるでしょう。

本書のものも含め、ジョナサンはティムの撮る写真を次のように評します。

彼の写真は動物をあまり擬人化するのではなく、むしろ恐怖や興奮、脆弱さ、群の一員であろうとしたり、子どもを守ろうとしたりするといった共通の本能や感情を捉えることで、動物たちとの関係を培うものとなっている。また、例えば赤ん坊を連想させるような、人間が親しみを覚えやすい姿形を捉えることで、被写体と私たちを結び付けている。(頁17)

本書の写真もそうであるならば、ジョナサンらによる解説も伴う本書は、ティムの意図通りのものになっているのではないでしょうか。

しかし、それを実際に確認するのは本書を開く一人一人です。

皆さんも是非一度手に取って、ページを開いてみてください。

昔に比べると、私たちの生活と自然との距離は遠くなってしまったように感じます。

しかし、実際はそうではありません。

自然から離れて生活するあまり、自然との接点が見えにくくなっているだけなのです。

むしろ私たちと自然との関係は、以前よりも深くなっていると言えます。

ところが今、自然はあまりにも軽視されています

自然の恵みを享受する一方で、私たちの生活と自然との目に見える関わりが少なくなってきているからです。

自然に何が起きているか知らないのです。

そんなとき、本書は自然の現状に気付く一助となります。ジョナサンは、本書の最後でこう述べます。

人々を自然と結び付けることが、これほど重要になったことはない――私たちの未来は自然とのつながりにかかっているのだ。

取り返しがつかなくなる前に、私たち一人一人が自然との関係を顧みなければなりません。

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