ユーラシアカワウソの基本情報
英名:Eurasian Otter
学名:Lutra lutra
分類:イタチ科 カワウソ属
生息地:アフガニスタン、アルバニア、アルジェリア、アンドラ、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ベラルーシ、ベルギー、ブータン、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、カンボジア、中国、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、インド、インドネシア、イラン、イラク、アイルランド、イスラエル、イタリア、ヨルダン、カザフスタン、北朝鮮、韓国、キルギス、ラオス、ラトビア、レバノン、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、モルドバ、モンゴル、モンテネグロ、モロッコ、ミャンマー、ネパール、オランダ、北マケドニア、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、サンマリノ、セルビア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スリランカ、スウェーデン、スイス、シリア、台湾、タジキスタン、タイ、チュニジア、トルコ、トルクメニスタン、ウクライナ、イギリス、ウズベキスタン、ベトナム
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
ニホンカワウソ
2017年、長崎県対馬で、ツシマヤマネコの生態調査のために設置されていた自動撮影装置に、一頭のカワウソが映りこみ、ニホンカワウソの復活か?と大きな話題になりました。
ニホンカワウソは、約50㎝の太くて長いしっぽが特徴的な日本のカワウソです。
江戸時代、北海道から九州にかけて広く見られていましたが、明治時代になると、その密な毛皮や、肺結核の薬になるという肝臓を求めた狩猟の増加、そして急速な工業化の結果としての環境汚染により、個体数が激減していきます。
1928年には捕獲禁止令が出され、1965年には国の特別天然記念物に指定されますが、それでも減少は止まりませんでした。
1989年には当時の環境庁により絶滅危惧種に指定され、2012年には環境省により、とうとう絶滅が宣言されてしまいます。
ちなみに、ニホンカワウソが最後に公式に確認されたのはもっと前で、1979年の高知県でのことになります。
このような背景があったため、先ほどのカワウソ発見のニュースは、多くの人々に期待をさせました。
しかし、DNAの分析の結果、対馬で発見されたカワウソは残念ながら日本のカワウソではないということが分かりました。
そのカワウソは、おそらく韓国から流れ着いたユーラシアカワウソだと考えられています。
ニホンカワウソはやはり絶滅しているのでしょう。
ところで、なぜユーラシアカワウソの話にニホンカワウソが登場するかと言うと、ニホンカワウソはユーラシアカワウソの亜種(Lutra lutra nippon)であるという見解があるからです。
その一方で、ニホンカワウソはユーラシアカワウソからは独立した種(Lutra nippon)であるという主張もあります。
DNA研究の発展により、生物の分類はより確かなものとなってきていますが、ニホンカワウソが絶滅してしまった今、彼らが種であるか亜種であるかという議論に決着がつくことは難しいかもしれません。
ユーラシアカワウソの生態
生息地
ユーラシアカワウソは、アフリカ北部およびユーラシア大陸にかけて、非常に広い範囲に生息します。
巣をつくるためにある程度の植生がある川や湖、海岸、沼沢林などで暮らします。
巣は木の根元や洞、岩陰などに作られ、日中をそこで過ごします。
生息地
主食は魚で、その他には甲殻類や両生類、ウサギなどの小型哺乳類、昆虫、鳥類、鳥の卵なども食べます。
形態
体長は60~90㎝、肩高は約15㎝、体重は6~17㎏、尾長は35~50㎝で、オスがメスよりも約2割大きくなります。
手足には水かきが付いており、顔に生えるヒゲは、魚の動きを感知するセンサーとして狩りに役立っています。
また、耳や鼻の穴は閉じることができます。
行動
ユーラシアカワウソは、主に夜行性で、夕暮れから夜間にかけて最も活発になります。
基本的に単独で行動し、平均20kmの行動圏で生活します。
行動圏は糞や肛門腺から出る分泌物でマーキングされ、異性間での大幅な重複があります。
コミュニケーションにはにおいやグルーミングによるものの他、12ある音声によるものが知られています。
泳ぎは大得意ですが、潜水時間は30秒と長くはありません。
繁殖
ユーラシアカワウソは年中繁殖しますが、北欧や東欧など地域によっては繁殖に季節性が見られます。
交尾は地上、または水中で行われます。
妊娠期間は60~65日、一度の出産で100g前後の赤ちゃんが通常2~3頭生まれます。
育児はもっぱら母親の役割です。
赤ちゃんは生後1カ月で目を開き、2カ月で巣から出るようになります。
生後3カ月には離乳し、14カ月齢まで母親と一緒にいます。そ
こから母親の下を離れ、生後18~24カ月で性成熟に達します。
寿命は飼育下で約20年になります。
人間とユーラシアカワウソ
絶滅リスク・保全
ユーラシアカワウソにとっての主な脅威は、密猟と汚染です。
ニホンカワウソ絶滅の大きな原因となった密猟は、東南アジアで今でも行われています。
ダムや運河の建設、漁業など人間活動による生息環境の破壊や、かつて農薬や殺虫剤に使われていたDDTや、ポリ塩化ビフェニルによる水質汚染は、半水生のカワウソにとっては大きなダメージとなります。
しかし、近年、西ヨーロッパでは汚染の規制や再導入の取り組みなどにより、個体数が増加しています。
そのため、現在彼らはレッドリストで準絶滅危惧種とされていますが、個体数が正確に把握されていないことからも、これは実態を反映したものというよりは、警告的なものとなっています。
動物園
そんなユーラシアカワウソですが、日本の動物園や水族館でも見ることができます。
福島県のアクアマリンふくしま、新潟県のマリンピア日本海、栃木県の那須どうぶつ王国、神奈川県のよこはま動物園ズーラシア、広島県の安佐動物公園、高知県ののいち動物公園、宮崎県のフェニックス自然動物園などが、ユーラシアカワウソを飼育、展示しています。
かつては彼らに似たカワウソが日本にいたことを思い出しながら、観察してみてください。