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ヨーロッパバイソン

ヨーロッパバイソン
©2017 wer mei : clipped from the original
目次

ヨーロッパバイソンの基本情報

英名:European Bison
学名:Bison bonasus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 バイソン属
生息地: ベラルーシ、ブルガリア、ドイツ、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、ウクライナ
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉

ヨーロッパバイソン
Photo credit: Francesco Veronesi

参考文献

絶滅しなかったウシ

今の家畜のウシの原種とされるオーロックス(Bos primigenius)は、もともとアジアや北アフリカに生息していたようですが、気温の上昇と氷河の後退により分布域をヨーロッパにまで広げました。

彼らはそこで人間の魔の手にかかります。森林破壊や遊興目的の娯楽などにより彼らは次第に数を減らし、一部の貴族の庭で繁殖する個体群が少数いるほどにまでなります。

そして1627年、ポーランドで息を引き取ったメスのオーロックスを最後に、彼らの生存の記録は途絶えます。

オーロックスのオスは体高2mもあったとされます。

その偉大さには大昔の人間も何かを感じずにはいられなかったたようで、旧石器時代の洞窟には彼らと思しき絵が見られます。


このような絵のモデルがオーロックス以外にもいるとすれば、それはヨーロッパバイソンとなるでしょう。

遠目ではオーロックスとよく似たであろうヨーロッパバイソンは、イベリア半島や大部分のスカンジナビア半島にはいなかったとされていますが、かつてはフランスからウラル山脈、スウェーデン南部からコーカサスまで分布していたと考えられています。

そんな彼らもオーロックスと同じような運命をたどります。

彼らは森林にも住めますが、最適な生息地は開けた草原やそれらがパッチ状にある森林とされています。

約1万年前、森林が拡大し、彼らの最適な生息地が減少し始めます。

これに加え、約7千年前から始まる人間による狩猟圧が高まった結果、彼らの個体数は次第に減っていきます。

16世紀にはやはり貴族の保護下で生息するのみとなり、19世紀にはポーランドとベラルーシにまたがる原生林、ビャウォヴィエジャの森に唯一の個体群が残される状況となってしまいます。

20世紀前半には残った個体群も絶滅してしまい、ヨーロッパバイソンはオーロックスの轍を踏んだかに見えました。


しかし、彼らは絶滅していませんでした。

飼育下に54頭が生き残っていたのです。

ここから彼らの保全活動が試みられ、このうち12頭が創始者となり、彼らの子孫が1950年代以降、次々と元の生息地に帰されていきます。

こうして次第に彼らの個体数は回復していき、現在では約6,800頭になるまでになりました。


ただ、安心してもいられません。

人間の管理下にある彼らの生存は、ほとんど今後の保全政策にかかっているからです。

また、彼らに降りかかる脅威の存在も忘れてはいけません。

例えば、自由に暮らす約50の個体群のうち、存続可能とされる150頭を超える個体群はたった8つしかありません。

また、個体群のうち約3割は自然及び人口のバリアにより他の個体群から分断されており、そうでない場合も他と60~530㎞も離れ交流が難しい状態です。

このように個体群間の交流が少なくなると、遺伝的多様性の減少が懸念されます。

そもそも今生きるヨーロッパバイソンは、少数の個体の子孫であるため、遺伝的多様性が低いです。

これに加えてということになると、生息地の分断、隔離とそれに伴う遺伝的多様性の低下は大きな懸念事項です。


まだまだ予断を許さない状況にあるヨーロッパバイソンですが、それでも絶滅せずに私たちの目の前に存在しています。

かつて同じ環境を共有していたであろうオーロックスとヨーロッパバイソン。

よく似た2種のウシは、人間という存在のためにその運命を大きく分けることとなりました。

ヨーロッパバイソン
Photo credit: Frank Vassen

ヨーロッパバイソンの生態

分類

東西ヨーロッパに生息していたローランドバイソン(Bison bonasus bonasus)とコーカサス地方北部の山々に生息していたコーカサスバイソン(Bison bonasus caucasicus)の2亜種が広く認められています。

前者は1919年に、後者は1927年に一度野生絶滅したとされています。

生息地

ヨーロッパバイソンは、標高2,100mまでの牧草地や捨てられた農地、谷などの開けた環境や、森林と開けた環境が入り混じった場所に生息します。

ヨーロッパバイソン
Photo credit: smerikal

形態

体長は2.4~3.3m、肩高は1.7~1.9m、体重はオスが600~900㎏、メスが400~600㎏、尾長は30~90㎝で、オスの方が大きくなります。

近縁のアメリカバイソンよりは小さいですが、ヨーロッパに生息する草食動物としては最大です。

角(ホーン)は雌雄ともに生えます。

肩のコブが特徴的で、オスでは特に大きくなります。

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食性

主にグレイザーである彼らは草を主食とし、木の葉や枝、樹皮、コケ、菌類などがそれを補います。

季節に応じて様々な植物を食べ、毎日の飲み水が必須です。

オスは夏には日に30㎏近くの餌を食べます。

エサの少ない冬には、人間によって干し草を与えられることもあります。

胃が4つある彼らは、1日の多くの時間を反芻に費やします。

行動

バイソンに寄生する寄生虫は約90種が知られていますが、彼らはこの寄生虫の除去やにおい付けを目的として地面で転がり砂を浴びます。

砂浴びにより禿げたパッチは先駆種が生える環境になります。

また、彼らの採食は間引きとなり、彼らの糞は周辺の生物に有機物を与えます。

このように、彼らは生態系において重要な役割を果たしており、キーストーン種として知られています。

ヨーロッパバイソン
Photo credit: Maxence

社会

ヨーロッパバイソンは普段は雌雄別で暮らします。

メスは大人のメスや3歳までの亜成獣、子供からなる20頭程度の群れを作ります。

一方、オスは単独もしくは若いオスだけの2~8頭の群れで暮らします。

群れは繁殖期や冬の時期に最も大きくなります。

ヨーロッパバイソンは食料を求めたり、寒さから逃避したりするために季節移動をします。

行動圏は数十~200㎢になります。

繁殖

繁殖は7月から10月にかけて行われます。

この時期、オスはメスの群れに入り、他のオスからメスたちを守るために闘争します。

メスの妊娠期間は254~277日で、15~35㎏の赤ちゃんが群れから離れた場所で1頭生まれます。

赤ちゃんは生後数日で群れに合流し、1歳ごろ離乳します。

性成熟は3歳ごろですが、オスが実際に繁殖に参加できるのは6歳以降です。

オスの最盛期は6~12歳です。

寿命は野生で約20年、飼育下では25年ほどです。

ヨーロッパバイソン
Photo credit: Munea Viajes

人間とヨーロッパバイソン

絶滅リスク・保全

ヨーロッパバイソンの個体数は増加傾向にありますが、人の手による保全が今後の存続のカギとなっています。

生息地の分断、遺伝的多様性の小ささの他、ブルータングや口蹄疫、牛結核などの病気や、間引き、密猟、保全計画の一貫性のなさなどが脅威となる可能性があります。

IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧の評価です。

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動物園

ヨーロッパバイソンを日本で見ることはできませんが、アメリカバイソンは日本各地の動物園やサファリパークで見ることができます。

ヨーロッパバイソン
Photo credit: Alexxx Malev
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