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『父という余分なもの』

父という余分なもの: サルに探る文明の起源 (新潮文庫) 文庫 – 2015/1/28 山極 寿一
目次

書籍情報

書名:父という余分なもの サルに探る文明の起源
著者:山極寿一
発行年:2015年
価格:550(+税)
ページ数:325ページ

父は余分なのか

『父という余分なもの』。

世の中のお父さんたちが憤りそうなタイトルですが、本書を読んでいくと、その怒りが全くお門違いなことであることに気付きます

皆さん一度は見たことあると思うので難しくないと思いますが、サルの赤ちゃんを想像してみてください。

その赤ちゃんは誰と一緒にいますか?

誰にしがみついていますか?

皆さんの答えはほとんど同じでしょう。

そう、お母さんです

サルの赤ちゃんはいつもお母さんと一緒におり、お母さんも自分のおなかから生まれた赤ちゃんを大事そうに世話します。

その一方で、その赤ちゃんのお父さんについて、皆さんはどのような想像ができますか?

どうでしょう。

サルの世界にお父さんという存在を想像することは意外に難しくありませんか?

皆さんが想像に難儀するのも無理はありません。

なぜなら、サルの社会には「お父さん」が存在しないからです

もちろん、生物学的なお父さんはどこかに存在します。

ただ、その生物学的父親たちは、赤ちゃんの育児をしたり親密な関係をもったりというような、社会的な役割を果たしません。

また、オスが社会によってその赤ちゃんの「お父さん」であると認知されることもありません。

サルの社会はそれで成り立っているため、「お父さん」という存在は必要のないもの、「余分なもの」なのです。

ここで、私たち人間の「お父さん」について考えてみましょう。

お父さんは、かつては一家の大黒柱といわれるほど生活のよりどころであったし、時に優しく時に厳しく、大人になっても精神的に支えてくれる存在なのではないでしょうか。

つまり、お父さんは私たち人間にとって「余分なもの」ということはできないほどの存在になっているのです

本書のテーマはこのような所にあります。

どういうことかというと、人間と祖先を同じくするサルの社会に「父」という存在がないのにもかかわらず、なぜ人間の社会にはそれがあるのか

何が人間の社会に「父」という存在を必要とさせたのか。

そして「父」、ひいては家族や共同体のあり方とは何か。

このようなことが本書の大きな問いとなっています。

内容の面白さ

本書では、先述のテーマに関していろいろ書かれているわけですが、テーマ云々の前に内容の一つ一つがとても面白いです

例えば第一章。「直立歩行は舌から始まった」とか「異国の女性が美人に見えるわけ」とか「同性愛はなぜあるか」とかめちゃくちゃ面白そうじゃないですか。

直立歩行は舌から始まった」なんてもはや訳わからな過ぎて逆に興味が湧いてきます。

最後の章の著者と三浦雅士氏との対談も面白いです。

いくつか項目を取り出してみると、「ヒトとチンパンジーの混血は不可能か?」「食事とセックスの関係」「お尻がパスポート」「「愛」の起源」「言語の起源」………あげだしたらきりがないほど面白い話がなされています。

著者の山極寿一氏は、日本を代表する霊長類学者、人類学者です。

理系の学者でも文系の学者でもある人が書く本書は、様々な知識を与えてくれるだけでなく、私たち一人ひとりに考えさせます。

サルについても知りたいし、社会についても考えたいという方にはもってこいの一冊です。

当サイトでもご紹介している、ムリキウーリーモンキーなんかも出てきますし、文庫本で手に入れやすいので、皆さんも是非読んでみてください。

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