スナドリネコの基本情報
英名:Fishing Cat
学名:Prionailurus viverrinus
分類:ネコ科 ベンガルヤマネコ属
生息地:バングラデシュ、カンボジア、インド、ミャンマー、ネパール、パキスタン、スリランカ、タイ
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉
漁(すなど)り猫
漁(すなど)るという動詞は、貝や魚を獲る、漁をするという意味です。
その和名、そしてフィッシング・キャットという英名が表す通り、スナドリネコはネコの中でも、最も魚食性の強い種です。
彼らは魚や貝、甲殻類などを主食としています。
魚を獲るためには、水の中に入らなければなりません。
イエネコを飼っている人からすると意外かもしれませんが、スナドリネコは全く水を怖がりません。
むしろ水が好きなくらいで、その泳ぎは非常に上手く、潜水することもできます。
その巧みな水泳能力で獲物を追いかけることもありますし、水際で水中に顔を突っ込みながら待ち伏せして襲うこともあります。
獲物は口、または前足で捕獲します。
彼らの体は、このような生態に適応しています。
前足の可動域は広く、部分的に水かきが付いています。
また、多くのネコが爪を完全に出し入れできるのに対し、彼らの爪は引っ込めてもすべてがさやに納まらず、一部が外に出ています。
この他、短くて太いしっぽや、幅が狭く前後に長い頭蓋骨といった体の特徴は、ぬるぬるして掴みにくい水中の獲物を捕らえるために役立っています。
スナドリネコは、その生息環境から野生下の個体の情報が非常に少なく、多くの情報は飼育個体によるものになります。
その飼育個体では、生後4週には水中に入って遊び始めると言います。
漁師の息子が幼いうちから漁を手伝うように、スナドリネコも小さい頃から水になれ、大きくなって漁る準備をしているのです。
下の動画では、まさにまだ小さい子どもが水に初めて触れる様子を観察することができます。
是非ご覧下さい。
スナドリネコの生態
生息地
スナドリネコは、西はスリランカから東はカンボジアまで、標高1,800mまでの河辺林や沿岸湿地などにパッチ状に生息しています。
食性
主食は魚や貝、軟体生物など水中に生息する生物で、その他には齧歯類や鳥類、昆虫も食べます。
また、家禽を襲ったり、トラの獲物の残りを食べたりすることもあります。
形態
体長はオスが66~115㎝、メスが57~74㎝、体重はオスが8.5~16㎏、メスが5~7㎏、尾長は24~40㎝で、性的二型が顕著です。
スナドリネコは、マレーヤマネコなどが属するベンガルヤマネコ系統の中では際立って大きく、がっしりしています。
顔から耳にかけて伸びる6~8本の線が特徴的で、アルビニズムも確認されています。

行動
スナドリネコは、主に夜行性です。
単独性であると考えられており、オスの行動圏は複数のメスの行動圏と重複しています。
限られたデータによると、行動圏はオスが16~22㎢、メスが4~8㎢です。
繁殖
スナドリネコの繁殖に関してもあまりよく分かっていませんが、年に1度繁殖するようです。
妊娠期間は63日で、100~170gの赤ちゃんが、通常2~3頭で産まれてきます。
赤ちゃんは、生後16日で目を開き、生後約2カ月で離乳を始めます。
生後4~6カ月には完全離乳し、8~9カ月で大人のサイズになります。
性成熟には1歳以降に達し、寿命は飼育下で約12年です。
人間とスナドリネコ
絶滅リスク・保全
スナドリネコは、いくつかの脅威のために個体数を減らし続けています。
生息地の破壊や人間による直接的な迫害が中でも大きな脅威となっています。
彼らの生息地は農地や魚やエビなどの養殖場に転換されています。
また、家禽や網にかかった魚を獲ったり、漁に使う網を傷つけたりすることなどから殺されることもあります。
ちなみに、このような人間との摩擦は特に乾季に起こりやすいことが分かっています。
これらの脅威のために、彼らの個体数は過去15年で30%以上減少していると推測されており、レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に位置付けられています。

動物園
そんな絶滅危惧種、スナドリネコですが、なんと日本でも会うことができます。
兵庫県の神戸どうぶつ王国、そして三重県の鳥羽水族館がスナドリネコを飼育、展示しています。
ネコ科の中でも特徴的な彼らの生態を覗きに、是非これらの動物園、水族館に足を運んでみてください。
