書籍情報
書名:キリン解剖記
著者:郡司芽久
発行年:2019年
出版社:株式会社ナツメ社
価格:1,200円(+税)
ページ数:215ページ
■目次
第1章 キリンを解剖するには
第2章 キリン研究者への道
第3章 キリンの「解剖」
第4章 キリンの「何」を研究するか
第5章 第一胸椎を動かす筋肉を探して
第6章 胸椎なのに動くのか?
第7章 キリンの8番目の「首の骨」
第8章 キリンから広がる世界
キリン研究者の本
本書はまず、キリンの研究者がどのようにして誕生するのかという点で楽しむことができます。
一人の女の子がキリンと出会ってから、大学に入ってキリンの研究者となるまで、そのライフヒストリーを著者自身が追います。
メインは本の名前にあるように、キリンの解剖です。
大学に入り恩師の「解剖男」に出会ったことで始まる研究者への道のり、その過程が苦悩や発見と共に記されます。
著者はキリンの研究に解剖という手段を用いていますが、その解剖を通して著者の成長を見て取れるところも本書の醍醐味です。
ところで、なぜ著者はキリンを解剖するのでしょう。
それはもちろんキリンを研究するためなのですが、本書を読み進めると、ある一つの目的が現れます。
「頸椎の数は7個」という厳しい制約の中で、キリンの首はいかにしてあれだけ長くなったのだろうか。
どのような構造の変化が起きているのだろうか。
そもそも、「頸椎数が7個で、キリンもヒトも首の骨格の基本型は同じ」というが、本当にそうなのだろうか。
マナティーとナマケモノを除き、哺乳類の頸椎(脊柱を構成する椎骨の内、首部分の椎骨)は7個です。
キリンもその例外ではありません。
しかし、キリンの首はしなやかで、自分の首にキスをすることもできます。
そんなキリンの首が他の動物と同じ構造をしているとは信じられない。
著者のこんな疑問に駆動され、研究は進んでいきます。
研究がどのように進んでいくか、そしてどのような結末を迎えるか、それは是非本書を読んで確認してみてください。
キリンの本
本書は、解剖やキリン研究者を知ることができると言う点でも面白い(個人的に印象的だったのは骨格標本の作り方、そんなふうにやってるんだと思いました)のですが、キリンを知る本としても当然興味をそそるものがあります。
先ほど出てきたキリンの頸椎の話もそうですが、この他にもキリンに関する様々な情報が番外編であるコラムの中で登場します。
たとえば、キリンの名前の由来、キリンの種類、キリンの角、キリンの高血圧の謎などなど、どれも面白いものばかりです。
キリンといえば長い首というのが一般的なイメージですが、それ以外にも彼らを特徴づけるものは長い脚、分厚い心臓等、沢山あります。
キリンという動物をもっと知るためにも、この本はきっと役立つことでしょう。