書籍情報
書名:ゴリラ 第2版
著者:山極寿一
発行年:2015年
価格:2,900円(+税)
ページ数:248ページ
山極寿一
著者である山極寿一氏は、世界的に有名なゴリラ研究者です。
今では京都大学総長も務める著者は、1978年に初めてアフリカの地を踏んで以来、ゴリラの研究を続けています。
また、研究だけでなくゴリラの保全にも努めています。
1992年、著者はゴリラと人間の共存のために、地元民と協力して「ポレポレ基金」という非営利組織を立ち上げました。
この基金の詳細は下のリンクからご覧ください。
そんなゴリラと人生を共にしている著者によると、「今の動物学は、先に研究するテーマがあり、それからそのテーマに合った動物を研究対象として選ぶことが常識になりつつある」ようです。
しかし、このように「論文を書いた後はその動物について考えることをやめてしまう人」もいる中で、著者は「対象にずっと感動と愛着を持ち続ける動物学者になりたい」と言います。
要するに、本書は何十年もゴリラに魅せられ愛してきた、ゴリラ好きの中のゴリラ好きによる本ということです。
ゴリラに関するもので、これ以上の本はどこを探してもないでしょう。
ゴリラを知りたいならこの本
著者がゴリラに興味を持ったのは、1975年の「ホミニゼーション研究会」で聞いた討論だったと言います。
そこで行われた、当時の彼の指導教官であり霊長類研究の泰斗でもあった伊谷純一郎の「ゴリラとチンパンジー」という講演のゴリラの部分は、2つの報告に基づいていました。
その2つの報告が、著者がゴリラに魅せられるきっかけとなったようです。
一九五九~六〇年に、コンゴ、ルワンダ、ウガンダ三国の国境にそびえるヴィルンガ火山群で調査を行ったシャラーは、マウンテンゴリラが穏やかで平和な社会生活を営んでいることを報告している。
…(中略)…
ところが、コンゴ動乱終結後の一九六七年に、同じくヴィルンガで調査を開始したフォッシーは、その後数年におよぶゴリラの調査をもとに、オスどうしがメスをめぐる激しい敵対関係にあると報告した。(pp.10-11)
シャラーもフォッシーも伝説的な研究者であり、著者はヴィルンガのカリソケ研究所でフォッシーと対面を果たしています。
また、フォッシーの報告にはゴリラの子殺しという当時は衝撃的な内容が含まれていました。
さて、引用に戻りましょう。
……。私はそこに強く魅かれるものを感じた。シャラーとフォッシーが見たちがいはいったいなんだったのだろう。子どもにやさしく、寛容で平和を好む社会と、子どもを殺すオスのあいだをメスが行き来する闘いに満ちた社会。……しかも、この異なる二つの社会は同じヴィルンガの地で、わずか数年のあいだに入れ替わるように現れている。何がその引き金となったのか。そして、そのちがいが意味するものとはいったいなんなのか。(p14)
著者がゴリラに興味を持ってから、40年以上が経ちました。
著者によれば、当初の問いも含めて、今や「ゴリラの全体像についてかなりの理解が進んだ」と言います。
優しいゴリラ、闘うゴリラ、幼児を殺すゴリラ、山地に住むゴリラ、低地に住むゴリラ、草を食べるゴリラ、果実を食べるゴリラ、チンパンジーと共存するゴリラ、狩られるゴリラ、観光資源としてのゴリラ。
本書をよむと、私たちの知らないゴリラのあらゆる姿を見ることができます。
私たち人類について知るためにも重要な存在であるゴリラ、彼らについて何が今わかっているのか、そこから何が考えられるのか、このようなことについて少しでも興味がある方は、ぜひ手にとって読んでみてください。