グレビーシマウマの基本情報
英名:Grevy’s Zebra
学名:Equus grevyi
分類:奇蹄目ウマ科ウマ属
生息地:エチオピア、ケニア
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
参考文献
他のシマウマとの違い
1882年、エチオピア帝国皇帝メネリク2世がフランス大統領ジュール・グレヴィに贈ったことが名前の由来となっているグレビーシマウマ。
他のシマウマとは腹まで伸びない細い縞模様と丸くて大きな耳、そして野生のウマ科では最大となるがっしりした体躯で区別することができます。
彼らを他のシマウマと区別できる点はもう一つ、緩い社会性にあります。
ウマ科の動物は群れの仲間同士のつながりが強いものと、そうでないものの2つに大きく分けることができますが、シマウマのうちヤマシマウマとサバンナシマウマは前者に、グレビーシマウマは後者に属します。
グレビーシマウマは1頭のオスが6㎢程度のなわばりを持ちます。
縄張りは主にエサとなる草や水資源を守るためにあるようです。
メスは複数のオスのなわばりを移動するため、群れの組成が日ごとに変わりえます。
これはほとんど一生続くハーレムを築く他のシマウマとは異なる生態です。
メスはなわばりをもつオスと交尾しますが、相手は複数に及びます。
ただ、水資源をなわばり内に持つなど条件がいい場合は、そのなわばりを持つオスとのみ交尾します。
グレビーシマウマにとって水資源は必須です。
サバンナシマウマほど依存はしていないものの、乾季でも水がある場所でないと生きていくことができません。
特に赤ちゃんがいる母親にとって水は命の源です。
赤ちゃんは生後4ヵ月まで水を飲まず母乳で育ちます。
その母乳を出す母親は、最低でも2日に1度は水を飲まないと母子の命を危ぶめることになります。
だからこそ、水資源をなわばり内に持つオスは魅力的なのです。
ところで水資源は他の生きものにとっても重要です。
例えばヒトや家畜もまた水を必要とする動物であり、その存在がグレビーシマウマにとって脅威となっています。
水資源を争うだけならまだしも、家畜はグレビーシマウマのエサをも食べますし、ヒトは彼らの生息地を破壊し彼らを狩猟します。
特に狩猟の影響は大きく、1970年代には1万5千頭いたグレビーシマウマは、今では2,500頭程度にまで減少し、アフリカの動物の中でも最も減少した一種として知られています。
グレビーシマウマはこうした面でも他のシマウマとは違う境遇にあるのです。
グレビーシマウマの生態
生息地
標高300m~2,300mの、乾燥地帯や半乾燥地帯に生息します。
永続的な水資源があるサバンナなどの草原や低木地を主たる生息地としています。
彼らはかつてソマリアやジブチ、エリトリアにも生息していましたが、今ではケニア約2,300頭、エチオピアに約200頭が残るのみとなっています。
形態
体長は2.5~2.8m、肩高は125~160㎝、体重は350~450㎏、尾長は55~75㎝で、家畜種を除くウマ科の中では最大です。
他のウマ科同様、指は四肢に一本ずつで、蹄が先を覆っています。
食性
グレイザーである彼らは草を主食とします。
ただ、干ばつ時や周囲に草が少ない場合などは葉や枝なども食べ、食べるもののうち最大30%を占めることもあります。
サバンナシマウマほどではないにせよ、水に依存しており、通常は5日に1度は水が必要になります。
捕食者にはライオンやチーター、シマハイエナ、リカオン、ヒョウが知られています。
行動・社会
グレビーシマウマは移動性が強く、なわばり持たない個体は最大10,000㎢もの範囲を移動します。
なわばりを持つオスは2~12㎢のなわばりを持ち、若者に敗退するまで最大7年ほど維持します。
なわばりは音声や糞などでアピールされます。
なわばりを持たないオスは、同じようなオスたちと2~6頭の序列の緩い群れを作り、なわばりの乗っ取りの機会を伺います。
メスたちも普通は他のメスと行動しますが、出産の前後は一時的に群れを離れます。
繁殖
繁殖は年中見られますが、ピークは7~10月にあります。
メスの出産間隔は2年、妊娠期間は13ヵ月で、1頭の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは生後20分ほどで歩き出し、1時間後には走り出します。
生後9ヵ月頃離乳し、1~3歳で独立します。
独立の時期はメスの方が早いです。
性成熟にはメスが3年、オスが6年で達します。
寿命は野生で12~13年、飼育下では最長30年ほどです。
人間とグレビーシマウマ
絶滅リスク・保全
グレビーシマウマの総個体数は3,000頭未満とみられており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅰに記載されており、ケニア、エチオピア国内でも法的に保護されています。
脅威としては、生息地の破壊、状態悪化、ヒトや家畜との競合、食肉や薬、文化的行為に用いるための狩猟、家畜を通じて感染する炭疽やバベシア症といった病気などがあります。
また、サバンナシマウマとの交雑は今後脅威となる可能性があります。
密猟は今やケニアでは脅威ではありませんが、エチオピアでは主要な脅威となっています。
とはいえ、2004年に2,000頭程度にまで減少したことを考えると、個体数は今後も増えていく可能性があります。
干ばつ時の一時的なエサやりや教育活動などの保全活動が現在行われています。
また、彼らの生息範囲の1%程度しかカバーできていない保護区を拡大する試みも進行中です。
動物園
グレビーシマウマは日本でも見ることができます。
中でも兵庫県の姫路セントラルパークでは、サバンナシマウマも見ることができるようです。種の違いをぜひその目で見てみてください。