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ヒマラヤタール

ヒマラヤタール
©2016 Koshy Koshy : clipped from the original
目次

ヒマラヤタールの基本情報

英名:Himalayan Tahr
学名:Hemitragus jemlahicus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 タール属
生息地:中国、インド、ネパール
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉

ヒマラヤタール
Photo credit: Donald Macauley

ヒマラヤのヤギ

5,000万年以上前の昔、インドがユーラシアにぶつかり、その後形成されていった今のヒマラヤ山脈は、世界最高峰エベレストを擁し、地球上で最も標高が高い地域として知られています。

人間の居住地としては適さないこの高地には、動物園の人気者・レッサーパンダやブルーシープとも呼ばれるヒツジの仲間・バーラルをはじめ、様々な希少な哺乳類が生息していますが、名前からわかるように、ヤギの仲間であるヒマラヤタールもヒマラヤに生息する哺乳類の一種です。

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ヒマラヤタールは、標高3,000~4,000mの間で最もよく見られ、ツツジやオークが生え、急峻な崖や岩場がある場所に好んで生息します。

偶蹄目に分類される彼らは、硬い部分と柔い部分がある、二つに分かれた蹄を持ちますが、このような特徴は肢が短いことで重心が低くなることや、たくましい体つきとともに、不安定な場所でも機敏に動くことを可能としています。

彼らが険しいところで生活する理由は、ユキヒョウなどの捕食者を避けるためです。

ちなみに、集団性のヒマラヤタールは数頭から数十頭からなる群れを作りますが、捕食者の存在やエサの豊富さ、そして狩猟圧は集団の規模を左右します。

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ヒマラヤタールは、ヤギ亜科に分類されますが、ヤギ属に分類されるマーコールアイベックスなどのような大きな角は持ちません。

角は雌雄ともに生え、オスの角が最大45㎝、メスが最大25㎝と性差は大きくありません。

また、オスは他のヤギのようなあごひげを持ちません。

一方、性差が顕著なのが体毛です。

特にオスは首周りの毛が発達しており、その長さは30㎝ほどにもなります。

このたてがみは自分を大きく見せることで、他のオスをひるませ、一方でメスにはアピールポイントとなっているようです。

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ヒマラヤに住むヒマラヤタールですが、実はヒマラヤ以外にもニュージーランド南島、南アフリカ、アメリカ合衆国のニューメキシコ州などにも生息しています。

これらは本来の生息地ではありませんが、牧場から逃げ出したり、スポーツハンティング目的で導入されたりして定着しています。

ニュージーランドのオスは150㎏を超えるようで、これはヒマラヤに住む個体の倍近くの重さです。

ヒマラヤという環境がどれだけ過酷なのかがわかります。

ヒマラヤタール
Photo credit: Koshy Koshy

Sathyakumar, S., G.S. Rawat & A.J.T. Johnsingh. 2015. Himalayan Tahr, Hemitragus jemlahicus. In Mammals of South Asia, Vol. 2. In A.J.T. Johnsingh and Nima Manjrekar

ヒマラヤタールの生態

生息地

標高1,500m~5,200mの高山帯、亜高山帯にある、崖や丘が点在する草原や茂み、森林で暮らします。

ブータンではヒマラヤタールの報告例がありますが、政府は否定しています。

アルゼンチンではかつて導入されましたが今では絶滅していると思われます。

形態

体長は0.9~1.4m、肩高は90~100㎝、体重はオスが平均73㎏、メスが平均36㎏です。

体色は夏には明るく、冬には暗く、体毛は夏には短く、冬には長くなります。

オスの体色はメスよりも暗く、年とともにより暗くなっていきます。

ヒマラヤタール
Photo credit: alistar.pott

食性

主にグレイザーである彼らは、カヤツリグサ科などの草を主食としますが、木の葉や枝、果実、そしてわずかながらコケやシダなども食べます。

主要な捕食者はユキヒョウですが、ヒョウキエリテンもヒマラヤタールを捕食します。

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行動・社会

ヒマラヤタールは薄明薄暮時に最も活発になります。

基本的に雌雄別の群れで暮らし、繁殖期にこれらは合流します。

成熟したオスは若いオスとはともに行動しないようです。

子供は性成熟に達するころまで生まれた群れで暮らします。

冬には標高の低いところに降りて採食します。彼らは静かな動物ですが、危険を感じると鳴き声を発します。

繁殖

繁殖は10月から1月に、ニュージーランドでは4月から7月に行われます。

妊娠期間は180~242日で、通常1頭の赤ちゃんが生まれます。

赤ちゃんは群れから離れたところで生まれ、生後3時間ごろには歩けるようになります。

性成熟には2歳ごろ達しますが、特にオスが実際に繁殖できるようになるのは4歳以降です。

寿命は野生では10~14年で、飼育下では最長22年です。

ヒマラヤタール
Photo credit: Tom Bastin

人間とヒマラヤタール

絶滅リスク・保全

ヒマラヤタールの個体数は減少傾向にあり、IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧に位置付けられています。

CITES附属書への記載はありません。

主な脅威は管理されていない狩猟や家畜との餌や生息環境をめぐる競合、生息地の破壊などです。

ネパールではトロフィー目的の狩猟が収益となっており、地元の人々の生活を支えている側面があります。

ヒマラヤタールの全個体数は調査がなく不明ですが、ヒマラヤ以外への導入個体の数を超えないと推測されています。

ニュージーランドには2.5~4.5万頭が生息しているとされており、肉やトロフィー目的の狩猟のターゲットにもなっています。

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動物園

ヒマラヤタールは東京都の多摩動物公園、静岡県の富士サファリパーク、和歌山県のアドベンチャーワールドで見ることができます。

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