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シャチ

シャチ
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シャチの基本情報

英名:Killer Whale
学名:Orcinus orca
分類: 鯨偶蹄目マイルカ科シャチ属
生息地: 全世界の海
保全状況: DD〈データ不足〉

シャチ
Photo credit: marneejill

参考文献

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海のギャングは高知能

海の食物連鎖において頂点に立つシャチ。

あのホホジロザメすら捕食することもあるシャチは、海のギャングとも形容されますが、その狩りは非常に知的です。


例えば、ニシンのような群れを作る魚を狩る時、シャチは集団で魚群の周りを回ったり気泡を発したりすることで、襲いやすいサイズに密集させます。

そして最終的に水面付近に追いやり、襲いかかるのです。

このように、魚群の周りを回って襲う方法をカルーセルフィーディングと言います。

また、浜にいるオタリアなどの鰭脚類に襲いかかることを、ストランドフィーディングと言いますが、これは単に浜に乗り上げて襲っているのではありません。

シャチは座礁して死ぬことがありますが、このストランドフィーディングでも座礁の危険があります(ストランドとは座礁させるの意)。

それを回避するため、彼らは獲物から離れた浜辺で干潮時に浜に乗り上げては戻るという練習を繰り返しているのです。

鰭脚類の狩りには他に、仲間と協力して波を作って流氷を壊し、その上のアザラシを氷から落として捕食するという方法や、尾鰭で空中に何度も打ち上げて弱らせるといった方法もあります。

また、彼らはクジラの特に子供を襲いますが、その際も仲間と協力して親から引きはがし、子供の上に乗り窒息させるというやり方を取るなどします。

かなり知的です。

飼育下でもその賢さを見ることができます。

飼育下のシャチはエサに魚をもらいますが、その魚を利用して鳥をおびき寄せ、食いついてきたところを襲いかかるのです。

彼らの賢さを見ることができるのは、何もショーだけではないのです。

エコタイプ

シャチは世界中の海に生息しています。

人間を除けばその分布域は哺乳類最大です。

それだけ広い範囲に生息しているため、地域ごとに鰭や模様などの見た目や、食性などの生態に違いが見られます。

この違いによって分けられたものをエコタイプと呼び、シャチでは10タイプほどが知られています。

ここではその内の3つを紹介しましょう。


北東太平洋海域の特にアメリカ・ワシントン州からカナダ・ブリティッシュコロンビア州にかけての沿岸は、シャチの研究の歴史が最も古い場所ですが、ここには3つのエコタイプのシャチがいることが知られています。


・レジデント

定住型」とも呼ばれ、あまり大きな移動はしません。

母子中心のサブポッドが集まったポッドと呼ばれる多くて50頭から成る集団を作ります

ポッドが複数集まるとクラン、それが更に集まるとコミュニティーと呼ばれます。

コミュニティーに属するすべてのポッドが一度に会することはめったにありませんが、その内のいくつかのポッドが集合してスーパーポッドを作ることがあります。

これは複数ポッドが集まり交配することで、近親交配を防ぐ目的があるのではと言われています。

レジデントは主にサケ類を食べる魚食性です。

特にマスノスケ、俗に言うキングサーモンを好物としています。


・トランジェント

トランジェントは特定の生息域を持たず、1~5頭から成る群れを作って移動しながら生活します。

エサはイルカやクジラ、アザラシなどの海獣や海鳥です。

レジデントは狩りの際、仲間同士でしきりに鳴き合いますが、トランジェントは獲物に気付かれないようにするためか、比較的静かです。


・オフショア

沖合に生息するタイプで、100個体近くにまでなる集団を作るとされています。

エサは主にサメ類と言われています。

広い範囲を移動しているようで、不明な部分が多いです。


この他、北大西洋や南極海にもエコタイプがあり、中には他のエコタイプと遺伝的な違いが大きいものもあるようです。

今後、シャチで新種が誕生する可能性もありそうです。

シャチ

シャチの生態

生息地

シャチは、北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋、北極海、南極海のすべての海域に生息します

ただ、獲物が多い高緯度で、水深20~60mの沿岸域で最もよく見られます。

形態

体長はオスが6~9m、メスが5.6~7.7m、体重はオスが4~6t、大きいもので10.5t、メスが2~4t、大きいもので7.4tになります。

サカマタの異名の由来(矛を逆さにしたようであることから)となっている背鰭は性的二型が顕著で、メスが1mに満たない一方、オスは大きなもので2mにもなります。

目には光を増幅するタペータムを持ちます。

全て同じ円錐(同型歯性)をした歯は、直径3㎝、全長11㎝にもなり、その内3分の1が萌出しています。

食性

イシイルカやカマイルカなどのイルカやミンククジラなどのヒゲクジラ、アザラシ、オットセイなどの鰭脚類ジュゴン魚類イカウミガメ類、海鳥などをエサとします。

前述の通り、地域によってエサメニューは異なり、魚類だけ食べるもの、魚類も海獣も食べるものなど様々です。

行動

シャチは最長15分潜水でき、水深700m以上まで深く潜った記録があります。

最高時速は65kmで鯨類最速になります。

空中にジャンプして体をひねり、海面に着水する行動はブリーチングと呼ばれ、仲間への合図や寄生虫の除去を目的としていると考えられています。

また、体を垂直にして水面から頭を出すスパイホップと呼ばれる行動は、周囲を見渡し仲間や獲物の位置を把握するためと言われています。

ブリーチング
ブリーチング Photo credit: Kenai Fjords National Park
スパイホップ
スパイホップ

社会

シャチは社会性が非常に強く、特に音声によるコミュニケーションが発達しています。

ホイッスルコールと呼ばれる鳴音は、社会的な行動の際に発せられます。

特にコールにはポッド固有のものが存在し、様々なパターンが知られています。

ちなみに、鳴音は周囲の状況の把握やエサ探しにも使われます。

これをエコーロケーションといい、これに使われる鳴音をクリックスと言います。

繁殖

シャチに明確な繁殖期は見られません。

メスの発情周期は約42日、出産間隔は平均5年ほどで、40歳ごろに閉経します。

妊娠期間は12~15カ月で(今のところハクジラ最長)、通常1頭の赤ちゃんを産みます。

赤ちゃんは体長約2m、体重約200㎏。

生後半年までには歯が生えそろいますが、完全に離乳するのは1.5~2歳ごろです。

性成熟はオスが10~13歳、メスが6~10歳ですが、実際の繁殖はその数年後になります。

メスは子供を産むと別のポッドを作ることがありますが、オス(特に長男)は母親のポッドに一生留まります

寿命については野生下で、オスが60歳、メスが90歳ごろまで生きられるようです。

シャチ
Photo credit: Mike Charest

人間とシャチ

保全

シャチは全海域に生息していることが分かっていますが、個体数については不明な所が多く、IUCNのレッドリストでもデータ不足として絶滅のリスクに関して評価がなされていません。

ただ、彼らの脅威となっているものがいくつか明らかになっています。

例えばPCB(ポリ塩化ビフェニル)やDDT(ジクロロジフェニルクロロエタン)などの有機塩素系化合物は、エサとなる海獣類などを通してシャチの脂肪に蓄積されます。

これらは脂肪が代謝されると血中に流れ出し、免疫や生殖、神経に悪影響を及ぼすとされています。

一部海域のシャチは、世界で最もPCBに汚染された鯨類として知られています。

また、漁船や観光船から出る音も、彼らの狩りや休息の邪魔になっていると言われています。

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The IUCN Red List of Threatened Species Established in 1964, the IUCN Red List of Threatened Species has evolved to become the world’s most comprehensive information source on the global conservation ...

動物園

賢いシャチはパフォーマンスを覚えることも朝飯前。水族館ではその巨体で圧巻のパフォーマンスを披露します。

日本では千葉県の鴨川シーワールドや愛知県の名古屋港水族館がシャチを飼育・展示しています。

彼らのパフォーマンスだけでなく、普段のシャチにも注目してみてください。

きっと彼らの賢さが垣間見えることでしょう。

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