ナヤリトリスの基本情報
英名:Mexican Fox Squirrel
学名:Sciurus nayaritensis
分類:齧歯目 リス型亜目 リス科 リス属
生息地:メキシコ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉

参考文献
樹上でも地上でも
リス科に分類される種は、モモンガなどの滑空性のもの、プレーリードッグなどの地上性のもの、そして樹上で暮らす樹上性のものに大きく分けることができます。
このうち「リス」というと、一般的に樹上性のリスを指します。
リス科には現在約280種がいますが、そのうち約半分が樹上性のリスです。
また、リスと言うと、童話やディズニーなどの影響で北米やヨーロッパのイメージがありますが、実はその8割以上がアフリカ、東南アジア、南米の熱帯、亜熱帯に存在し、例えば北米には20種程度しか存在しません。
そんな北米のメキシコとアメリカ合衆国のアリゾナ州に生息する樹上性リスの一種が、黄みがかった体色が特徴的なナヤリトリスです。
ナヤリトとは、メキシコの海に面した州で、避寒地としても人気があるナヤリト(ナヤリット)州に由来します。
樹上性リスの特徴の一つとして、樹上に巣を作って暮らすことが挙げられますが、ナヤリトリスもやはり巣を作ります。
枝や葉っぱをかき集めて巣を作り、そこで休息したり、メスは出産、子育てしたりします。
ただ、ナヤリトリスは地上でもかなりの時間を過ごします。
地面に落ちた種子などの餌を食べるためです。
そのため、ほとんど地上に降りてこない純粋な樹上性リスと比べると、ナヤリトリスは樹上での動きが緩慢に見えます。
そうは言っても樹上性リス。
彼らも他の樹上性リスと同じく、足首を両側に180度回転させることができるので、木を頭から降りることはお手の物。
霊長類やネコの仲間など、他の樹上性哺乳類と比べると、樹上での移動能力に長けています。
ちなみに、例外的に樹上で身軽に移動するネコ科動物として、マーゲイとウンピョウが知られていますが、彼らもまた足首を両側に180度回転させることができます。


地上でも長時間を過ごすやや例外的な樹上性リス、ナヤリトリスですが、もう一つ例外的なことがあります。
一般的に樹上性リスはかなりやかましいです。
視界の悪い森の中では音声によるコミュニケーションが効果的だからです。
樹上性リスは単独性なので、例えば繁殖相手を見つけるためにもより音声は効果的なのでしょう。
しかし、ナヤリトリスも鳴かないわけではありませんが、彼らと比べると静かです。
危険を感じた際にも鳴くことはなく、じっとして危険が去るのを待ちます。
ナヤリトリスがあまりにも無名でその正体があまりよくわかっていないのは、彼らの静かな性格にも関係しているかもしれません。

ナヤリトリスの生態
生息地
標高1,560~2,700mのマツとオークが茂る森林や混交林などに生息します。
形態
体長は25㎝前後、体重は700g前後、尾長は25㎝前後です。
他のリス同様、犬歯はなく、前に4本、後ろに5本ずつの指を持ちます。

食性
種子や花、蕾、昆虫、菌類などを食べます。
一般的に貯食はしないようです。
捕食者には猛禽類やヘビ類が知られています。
行動・社会
昼行性で薄明薄暮時に最も活発になります。
単独性でなわばり性はありません。
冬には共同で巣を使うこともあるようです。
オスは35ha、メスは15haほどの行動圏を持ちます。
繁殖
繁殖についてはあまりわかっていませんが、春から夏にかけて繁殖するようで、年に2回繁殖することは基本的にはないようです。
妊娠期間は約40日と思われ、一度に1~2匹の赤ちゃんが生まれます。

人間とナヤリトリス
絶滅リスク・保全
ナヤリトリスは食用に狩猟されることもあるようですが、現在のところ生存を脅かす大きな脅威はないとされています。
個体数のトレンドは不明で、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
Mexican Fox Squirrel | The IUCN Red List of Threatened Species.
動物園
日本でナヤリトリスを見ることはできません。

