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『高崎山のサル』

2026 5/14
参考書籍
2026年5月14日
白背景に「高崎山のサル」のタイトル画像
目次

書籍情報

書名:『高崎山のサル』
著者:伊谷純一郎(1926-2001、京都大学教授、1984年にトーマス・ハックスリ―記念勲章受章)
発行年:2010年
価格:1,200円(+税)
ページ数:375ページ

■目次
第1章 群れへの接近
第2章 群れの一角をえぐる
第3章 浮かびあがった群れの全貌
第4章 個体識別の段階へ
第5章 群れ社会の構造

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伊谷純一郎

伊谷純一郎は、日本の生態学者、人類学者、霊長類学者です。

霊長類学とは霊長類を対象に人類の進化について考える学問で、ニホンザルが生息する日本で生まれました。

伊谷はこの霊長類学に多大な貢献をした人物として知られています。

現在、京都大学総長であり世界的なゴリラ研究者である山極寿一の恩師でもある彼は、ニホンザルの研究を端緒としてチンパンジーやゴリラなどの霊長類研究や、狩猟採集民を対象にした生態人類学研究をアフリカで長年行ってきました。

彼の功績は世界的に評価され、1984年には人類学のノーベル賞と言われるトーマス・ハックスリー記念勲章を日本人で初めて受賞します。

本書はこのような人物によって書かれた、日本のサルについての本です。

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『高崎山のサル』が最初に出版されたのは1954年。

伊谷はまだ若い研究者で、本書が処女作でした。

しかし、その内容は、高く評価され翌年には毎日出版文化賞を受賞しています。

そんな本書の構成を著者はわざわざ説明してくれています。

“この研究を、いくつかの段階にわけて考えると、まず、本書の第一章から第四章の半ばまでの部分を、第一の段階とすることができる。それは、観察者が、群れの遊牧生活に完全にひきずられ、ただチャンスのみにすべてを賭けなければならなかった、きわめて困難な観察の段階である。(中略)
幸島では、わたしたちの手で群れを餌づけたのであったが、高崎山では、観光の目的でなされた大分市長上田保氏と万寿寺別院の大西真応氏らの努力を、そのままそっくり利用させていただく結果になった。至近距離からの観察が可能になり、研究は急展開にすすんだのであるが、わたしたちはまず、群れの社会構造をとらえることに、全力をそそいだ。この解明の過程が、第二の段階であり、本書では、第四章の後半と第五章が、この段階に相当する。(p.p.335-336)“

説明の通り、第一段階では、サルを見つける段階から餌付けし、個体を識別するまでの様子が時系列に沿って事細かに記されます。

もちろんニホンザルが食べるものや生息する環境、音声によるコミュニケーションなどの生態についても記されており、考察もなされます。

本書を読んでいると、観察から何かを導こうとする伊谷の脳の中を覗いているような気になります。

そして第二段階で、観察を基に高崎山のニホンザルの社会構造が解き明かされます。

ニホンザルの社会には序列があります。

どのサルがどの順位にいるのか、順位は群れでどのように作用するのか、第二段階ではこのようなことが中心的に語られます。

本書において画期的なのは、個体に名前を付けた研究の成果がまとめられていることです。

キリスト教の西洋社会にとって、動物に名前を付けて観察するという行為は、動物と人間を同じように扱うことで受け入れられるものではありませんでした。

しかし、本書を読んでもわかるように、名前を付け個体を識別できるようにしたことで、彼らの社会構造をとらえることができたのです。

後にこの手法は世界にも認められ、ジャパニーズ・メソッドとして今では世界標準となっています。

ちなみに、サルに一頭一頭名前を付ける手法は、日本の霊長類学の泰斗である今西錦司が考え出したものです。

伊谷はこの今西に学んでおり、上の引用にも出てきた幸島での調査にも同行しています。

ニホンザルの姿だけでなく、彼らを観察する伊谷純一郎という人物についても知ることができる『高崎山のサル』。

まだよく調べられていなかった時代の高崎山のニホンザルたちが、一人の大学院生の目を通して私たちの前に現れます。

本書を開き、日本の霊長類学の黎明期にタイムスリップしてみましょう。

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