アカダイカーの基本情報
英名:Natal Red Duiker
学名:Cephalophus natalensis
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ダイカー属
生息地:エスワティニ、マラウィ、モザンビーク、南アフリカ、タンザニア、ザンビア
保全状況:LC〈軽度懸念〉
小さなウシ
ダイカーとはアフリカーンス語で「ダイブする」という意味の単語に由来します。
驚くと茂みに頭から突っ込んでいく様子から、どうやらその名がつけられたようです。
そんな約20種が知られているダイカーのうち、全身赤みがかったのがこのアカダイカーです。
日本でも外来種として知られるようになってきた小型のシカ科動物であるキョンによく似たアカダイカー。
肩の高さが40㎝ほどしかない彼らの見た目はよく似ていますが、アカダイカーはシカの仲間ではなくウシ科動物です。
その証拠に、アカダイカーにはメスにも角が生えています。
キョンを含めシカ科動物ではオスだけに枝角(アントラー)と呼ばれる枝分かれした角が生えます。
オスメスともに角が生える例外はトナカイだけです。
一方、ウシ科動物の多くには雌雄どちらにも洞角(ホーン)と呼ばれる枝分かれしない角が生えます。
アカダイカーのメスも、オスよりは小さく毛に隠れて見えない場合もあるものの、数㎝の円錐状の角が生えています。
そんなアカダイカーは、地面に落ちている木の葉っぱや花、果実などを食べます。
どうして木の上の食べ物が地面に落ちてくるのかというと、他の動物が落としていくからです。
アカダイカーは特にベルベットモンキーとの関係で知られています。
ベルベットモンキーが樹上から落としたエサをアカダイカーが食べるのです。
アカダイカーにとって、エサの面でベルベットモンキーはなくてはならない存在です。
一方、ベルベットモンキーもアカダイカーから利益を得ていると考えられています。
彼らは直接アカダイカーを毛づくろいし、アカダイカーに寄生する虫などを食べているのです。
アカダイカーとベルベットモンキーは互いに利益をもたらし合う共生関係にあると言えます。
このような関係は日本でも、屋久島のニホンザルとニホンジカでも知られています。
アカダイカーの生態
生息地
アカダイカーは南部アフリカ沿岸部の、標高200mまでの常緑林、熱帯/亜熱帯林、沿岸低木林、川辺の茂みなどに生息します。
形態
体長は70~80㎝、肩高は38~48㎝、体重は9.2~13.6㎏、尾長は8~11㎝で、メスの方が大きい傾向にあります。
角はオスで5~8㎝、メスで2~4.5㎝になります。
地面に落ちたものを食べるために前傾姿勢になることが多い彼らは前肢よりも後肢の方が長いです。
食性
アカダイカーは樹上から落ちたばかりの葉や花、果実などを食べます。
行動・社会
アカダイカーは薄明薄暮に活発になります。
主に単独性で、なわばり性は弱く、個々の行動圏は重複しています。
行動圏は2~15haです。
驚いた際は近くの茂みに駆け込みます。
ジャンプ力に優れ、高さ1.6mの障害物をジャンプすることができます。
繁殖
繁殖に季節性はありません。
メスは約7ヵ月の妊娠期間ののち、1㎏の赤ちゃんを1頭産みます。
子供は生後6~8ヵ月頃まで母親とともに過ごします。
寿命は最長で15年程度です。
人間とアカダイカー
絶滅リスク・保全
アカダイカーは今のところ絶滅は懸念されていません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
ただ、人間の定住地や農地の拡大に伴う生息地の破壊や、肉を目的とした狩猟の影響で個体数は減少傾向にあるとされています。
動物園
アカダイカーに限らず、ダイカー亜科の動物は日本で見ることができません。