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カモノハシの博物誌

カモノハシの博物誌
目次

書籍情報

書名:カモノハシの博物誌 ふしぎな哺乳類の進化と発見の物語
著者:浅原正和
発行年:2020年
出版社:株式会社技術評論社
価格:2,280円(+税)
ページ数:223ページ

■目次
1 カモノハシの形態学
2 カモノハシの生態学
3 カモノハシと哺乳類の進化
4 化石単孔類の研究
5 カモノハシが歯を失った話と私
6 カモノハシの発見と研究の歴史
7 人間社会とカモノハシ

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【5分でわかる】カモノハシ

カモノハシと哺乳類の教科書

本書は、「カモノハシの先生」として、カモノハシを通して生物学を教える浅原正和氏のよって書かれた、日本で唯一といっていい、カモノハシにフォーカスしたカモノハシの教科書です

カモノハシの嘴や水かき、しっぽ、総排出孔といった形態的なことから、彼らが西洋世界に発見され卵を産む哺乳類として認められるまでの過程、人間の政治世界で果たした役割まで、広範囲にわたってカモノハシについて知ることができます

カモノハシは単孔類の一種ですが、単孔類全般についても知ることができます。

単孔類は哺乳類の一グループですが、まずは哺乳類の誕生、そして哺乳類とはどのような生物なのかをたどります。

母乳、胎生、体毛、トリボスフェニック型臼歯、下顎骨の耳の骨への変化、直立姿勢

これらは哺乳類が進化の過程で獲得してきたものですが、単孔類ではどうなのでしょう。

本書によると、哺乳類の最古の化石と言われているのは中生代三畳紀後期の約2億2500万年前、単孔類に繋がる系統が生まれるのはその少し後の2億1000万年前から1億6000万年前。

現生するものではもっとも原始的な哺乳類と言われる単孔類がどのような哺乳類なのかが、哺乳類全般を知ること、そして単孔類の進化の過程を追うことでわかります。


中でも興味深いのはカモノハシの直接的な祖先と言われるオブドゥロドンとの比較です。

オブドゥロドンが最初に発見されたのは、2,300万年前の地層から。

化石単孔類では最初となる発見でした。このオブドゥロドン、化石の形などから今のカモノハシとかなり似ていたと考えられています。

ただ明らかに違う点が一つ。

オブドゥロドンには、その名前の由来でもありますが、永久歯がありました。

一方のカモノハシには、甲殻類などをエサにしているにもかかわらず歯がなく、角質版が代わってその役割を果たしています。

なぜカモノハシは進化の過程で歯を失ったのか。

結果的に定説を覆すことになった著者の研究の話にはとても興味をそそられました。

この他、第二次世界大戦中、当時のイギリス首相チャーチルに贈られるためにオーストラリアを出港したカモノハシ「ウィンストン」の話や、著者の研究者としての話など、本書にはカモノハシ自体以外の面白さも詰め込まれてあります。

誰もが一度はどこかで見たことがあるカモノハシ。

本書を読めば、彼らがどれだけユニークな哺乳類であるか知ることができるでしょう。

「カモノハシの先生」による授業、ご堪能ください。

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