シャモアの基本情報
英名:Northern Chamois
学名:Rupicapra rupicapra
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 シャモア属
生息地:アルバニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、イタリア、モンテネグロ、北マケドニア、ポーランド、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スイス、トルコ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
険しい生活
広義のヤギのなかまであるシャモアは、ヨーロッパを中心に険しい山に生息します。
急峻な岩場でも颯爽と歩き渡ることができる彼らは、ジャンプだってお手の物。
シャモアは縦に2m、横に6mも跳ぶことができます。
また、彼らは平坦でない場所でも最高時速50㎞ほどで走ることができます。
こうした彼らの脚力は、不安定な岩場で生活する力をもたらしてくれるだけでなく、ユーラシアオオヤマネコなどの捕食者から逃げる力をも与えてくれます。
山地で厳しいのは足場だけではありません。
冬には雪が降り積もる高山地帯。
彼らはそんな険しい環境でも、クマやヤマネなどのように冬眠することなく、地衣類やコケなどといったエサで乗り切ります。
シャモアは、長いと2週間は何も食べずに生存することができるようです。
このように彼らが生息する環境は我々からすると非常に険しいものに感じられますが、そのような険しさは彼らの生態にも見て取ることができます。
シャモアのうち、群れを作るのはメスやその子供たちだけ。
大人のオスは基本的に単独で行動します。
そんな大人のオスが群れに合流するのが夏の暮れ。
繁殖期が始まる頃です。
繁殖活動がひとたび始まれば、オスはメスをめぐる闘争を始めます。
オスたちは自慢の脚力や角を使って、敵となるオスを追い払い、群れのメスたちを独占するのです。
この時、群れにいる若いオスたちは大人のオスによって追い払われることもあります。
さらに、追い払われる際、若い個体は死んでしまうこともあると言います。
険しい足場での闘争が、ともすれば危険な事態になってしまうことは容易に想像がつきます。
厳しい環境で厳しい生活を送るシャモア。
人間世界におけるヨーロッパの繁栄の裏で、今日も彼らは懸命に生きています。
シャモアの生態
生息地
シャモアは、標高200~3,500mの岩場や草地などがある山地に生息します。
ニュージーランドには導入された個体群があり、現在の生存は不明なもののアルゼンチンにも導入された可能性があります。
形態
体長は1.1~1.4m、肩高は70~80㎝、体重は25~60㎏で、オスの方が大きくなります。
20㎝近くになる角は雌雄ともに持っていますが、メスの方が細く長くなります。
食性
シャモアは、草や葉、花、蕾、芽、コケ類、地衣類などを食べます。
捕食者にはユーラシアオオヤマネコやオオカミが知られています。
行動・社会
昼行性のシャモアは、成熟したオスが単独で生活する一方、メスやその子供たちは15~30頭の群れで暮らします。
彼らは危険を感じた際、鳴き声や足を踏み鳴らすことで仲間に伝えます。
オスは2~3歳まで群れにいますが、独立後はメスよりも遠くに分散するようです。
繁殖
交尾は10月から12月にかけて行われます。メスは約170日の妊娠期間ののち、2~3㎏の赤ちゃんを通常一頭産みます。
赤ちゃんは生後間もなく歩き、母親についていくようになります。
性成熟には1~4.5歳で達します。
寿命は14~22年です。
人間とシャモア
絶滅リスク・保全
シャモアは全体で50万頭近くがいるとされており、種として絶滅は懸念されていません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
一方、知られている7亜種のうち、多くを占めるのは1亜種(R. r. rupicapra)のみ。
他の亜種は多くは危機的状況にあり、1,000頭程度しか残っていない亜種もあります。
脅威としてはトロフィーや毛皮などを目的とした狩猟、家畜やムフロン、アカシカなどとの競合、観光目的での道路建設などによる生息地の破壊があります。
動物園
かつて東京都の多摩動物公園で見られたようですが、すでに亡くなっており、現在日本でシャモアに会うことはできません。