マヌルネコ

マヌルネコ©2009 Richard Gillin: clipped from the original
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マヌルネコの基本情報

マヌルネコ


英名:Pallas’s Cat
学名:Otocolobus manual
分類:ネコ科 マヌル属
生息地:アフガニスタン、ブータン、中国、インド、イラン、カザフスタン、キルギス、モンゴル、ネパール、パキスタン、ロシア、トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉

マヌルネコ@Photo credit: Charles Barilleaux

Photo credit: Charles Barilleaux

鈍足の小さいヤマネコ

マヌルネコのマヌルとは、モンゴル語で「小さいヤマネコ」を意味します。

その名の通り小型のネコであるマヌルネコは、マレーヤマネコなどと同様にベンガルヤマネコ系統に分類されることが一般的ですが、その遺伝子はイエネコ系統にも近く、分類学的に独特の位置を占めています

マヌルヤマネコが属するマヌル属に、彼らだけが分類されていることからも、彼らのユニークさが分かります。

https://carnivore.jp/flat-headed-cat/
https://carnivore.jp/fishing-cat/

ユニークなのは彼らの見た目も同じです。

体色には、灰色から赤みがかった色が見られ、この色はカモフラージュとなっています。

マヌルネコは小さい肉食獣であるため、猛禽類やアカギツネユキヒョウなどより大きな肉食獣から捕食されることが少なくありません。

この体色は、獲物に気付かれないためだけではなく、茂みが少ない環境でこういった大きな肉食獣から身を隠すためにも役立っています。

 

また、低い位置に付いた耳、平たい額、短い足も、目立たないためのものです。

丈の高い植物がない環境で、このような形態は獲物や捕食者に自分の存在を知らせないために重要な役割を果たしています。

 

マヌルネコは、危険を感じると身を伏せ、じっとして待ち続けます。

逃げるのではなく、このように待つのは、植物が密生していない環境で生き延びるために有利だからなのでしょう。

そのためか、マヌルネコには足を速くするような淘汰圧が働きませんでした。

実際、マヌルネコの足はネコ科の中でも遅い方です。

捕食者への反応だけでなく狩りも、獲物の巣穴で待ち伏せしたり、目立たないようにゆっくり近づき襲いかかったりするのが普通で、早い足を必要としません。

彼らは、足が遅くても、目立たないようにすることで、厳しい自然界を生き延びてきたのです。

マヌルネコの生態

マヌルネコは、中央アジアを中心に、ステップ半砂漠など、寒冷で乾燥した地域に生息します。

生息する標高は450~5,000mで、冬に-50℃以下になる環境でも生きていくことができます。

しかし、雪深い場所は苦手で、10㎝以上の積雪があるところではほとんど見られません。

 

主食は、ナキウサギや齧歯類などの小型哺乳類です。

この他、小型鳥類ノウサギトカゲ昆虫ベリー類死肉なども食べます。

捕食者には、猛禽類アカギツネなどがおり、捕食が最も大きな死因となっています。

 

体長はオスが54~57㎝、メスが46~53㎝、体重はオスが3.3~5.3㎏、メスが2.5~5㎏、尾長は23~29㎝で、オスの方がやや大きくなります

 

マヌルネコは一日中活動しますが、狩りは明け方や夕暮れ時に行われます

昼間は、洞窟や岩の隙間、マーモットの巣穴などで休息します。

彼らは単独性で、比較的広い行動圏を持ちます

オスは広くて200㎢近い行動圏を持つことがあり、このためか、個体数密度は例えばモンゴルで4~8頭/100㎢と、低い数字になります。

 

マヌルネコは厳しい環境に住んでいるため、いつでも繁殖できるわけではありません。

交尾は12~3月、出産は3月~5月にかけて行われます。

発情期間は1~2日、妊娠期間は66~75日。

一度に通常3~4頭の赤ちゃんが、体長12㎝、体重300gで産まれてきます。

赤ちゃんは、生後4~5カ月で独立し、生後9~10カ月で性成熟に達します。

寿命は飼育下で約11年です。

マヌルネコ@Photo credit: Charles Barilleaux

Photo credit: Charles Barilleaux

マヌルネコに会える動物園

マヌルネコは、複数の脅威に直面しており、そのために個体数を減らしています。

毛皮を目的とした狩猟は1980年まで大きな脅威でした。

現在、狩猟の脅威は逓減していますが、今なおモンゴルなどでは狩猟が行われています。

 

駆除による獲物の減少も脅威となっています。

ナキウサギを駆除するため、一つの保護区で20億円以上かけられた事例があるほどです。

 

そんな中、最も大きな脅威となっているのが生息地の減少と分断です。

探鉱やインフラの発達、家畜の増加がこれに拍車をかけています。

モンゴルでは、1991年に2,600万頭だった家畜数が、2018年には6,600万頭にまで増えています。

家畜の増加は、家畜のえさの増加でもあります。

増えた家畜のえさを賄うために、マヌルネコの生息地が耕作地に転換されていることは想像に難くありません。

ただ、マヌルネコの生息に適した環境がなくなるスピードは、かつて思われていたほどは速くなく、彼らの個体数もかつて考えられていたほどには不安定でないことが分かってきています。

そのため、レッドリストにおいて、準絶滅危惧から軽度懸念への格下げが行われました。

現在、マヌルネコの個体数は約58,000頭と推測されています。

 

そんなマヌルネコは、日本の動物園でも見ることができます。

マヌルネコの飼育は、子ネコがトキソプラズマ症にかかりやすいことなどから難しいとされていますが、現在、北海道の旭山動物園、東京都の上野動物園、愛知県の東山動物園、兵庫県の神戸どうぶつ王国などが飼育・展示しています。

小さいヤマネコがどのような暮らしをしているのか、これらの動物園で彼らを観察し、想像を膨らませてみてください。


↑旭山動物園

↑上野動物園

↑東山動物園

↑神戸どうぶつ王国

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