マツテンの基本情報
英名:Pine Marten
学名:Martes martes
分類:イタチ科 テン属
生息地:アルバニア、アルメニア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イラン、アイルランド、イタリア、カザフスタン、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、モルドバ、モンテネグロ、オランダ、北マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、イギリス
保全状況:LC〈軽度懸念〉
木登りの達人
イタチ科のなかまの中では中くらいの大きさのマツテンは、完全ではないものの、イタチ科の中では珍しく出し入れできる爪を持っており、木登りを得意としています。
樹上で生活する時間も長く、日中は木の洞などで休息していることも多いです。
そんなマツテンの獲物には、樹上でも生活するリスがいます。
リスを捕らえるため、マツテンは時に木々の間をジャンプしながら、樹上をすばしっこく動きます。
あの動きの素早いリスを木の上で捕まえるとは中々素晴らしい能力ですね。
とはいえ、マツテンは樹上だけでなく地上でも生活します。
特に木の葉が落ちる冬は地上での生活が増え、巣も地下に掘られた穴を使います。
当然狩りも地上で行われることが多くなります。
マツテンの足は、冬になると毛で覆われます。
また、体全体も密で厚く、滑らかな冬毛で覆われます。
粗くてまばらな夏毛から冬毛に変わり始めるのは9月ごろからで、この冬の体をもって、彼らは地上、地下で生活する獲物を追います。
下の動画では、まさに冬の狩りの様子を観察することができるので、是非ご覧下さい。
ちなみに、マツテンはえさの少ない冬のために、食料を貯蔵することがあります。
いくら樹上でも地上でも地下でも狩りができると言っても、冬は厳しい時期なのですね。
マツテンの生態
生息地
マツテンは、ヨーロッパ一帯の落葉樹林、混交林、針葉樹林など、森林がある所にはどこでも生息します。
食性
彼らは雑食性ですが、ネズミやリス、ウサギなどの小型哺乳類が主な食料となります。
その他には、果実(地域によっては食べられない)、鳥類、昆虫、両生類、爬虫類、死肉なども食べます。
形態
体長は45~58㎝、体重は0.8~1.8㎏、尾長は16~28㎝で、オスの方が最大30%までメスより重たくなります。
行動
マツテンは夜行性で単独性です。
狩りは夕暮れから明け方にかけて行われ、日中は行動圏内に複数ある巣で休息します。
行動圏は糞や腹部および肛門にある臭腺でマーキングされます。
一般的にオスの行動圏の方がメスよりも広く、オスの行動圏は複数のメスと重複しています。
繁殖
繁殖には季節性が見られ、交尾は7月~8月にかけて行われます。
実質の妊娠期間は30~35日ですが、約7カ月の着床遅延があるため、出産は3~4月に行われます。
一度に産まれてくる赤ちゃんは2~5頭で、通常は3頭です。
出生時、赤ちゃんは30グラムほどで、耳は聞こえず、目も見えません。
生後1カ月で目が見えるようになり、36~45日で固形物を食べ始めます。
生後7~8週には巣から出るようになり、12~16週で巣を離れます。
生後14週で性成熟に達し、寿命は野生で長くて10年、飼育下では最長18年です。
人間とマツテン
絶滅リスク・保全
マツテンは、家畜を襲う害獣として、狂犬病を持つ害獣として駆除の対象となることがあります。
また、その毛皮を目的とした狩猟の牙にかかることもあります。
これらに加え、森林の減少がマツテンにとっての脅威となっていますが、その分布域の広さ、安定した個体数などから絶滅は危惧されていません。
レッドリストでも軽度懸念として登録されています。
動物園
そんなマツテンですが、残念ながら日本では見ることができません。
しかし、日本にはマツテンに近縁である、クロテンやニホンテンが野生で暮らしています。
もし彼らを見たときには、ぜひマツテンのことも思い出してあげてください。