レッサースローロリスの基本情報
英名:Pygmy Slow Loris
学名:Nycticebus pygmaeus
分類:ロリス科 スローロリス属
生息地:カンボジア, ラオス, ベトナム
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
変化する毛色
レッサースローロリスは、オレンジがかった毛皮をしており、顔や背中のストライプが特徴的です。
この毛、特にストライプの部分ですが、サルには珍しく、季節によって色が変わります。
夏、背中のストライプはオレンジ色になり、ほとんど目立たなくなります。
ところが、冬になるとそのストライプはよりはっきりするようになり、霜が降りたような白い毛が所どころ現れます。
イタチのなかまやキツネなど、他にも毛色が変わる動物はいますが、なぜこのように毛の色が変わるのでしょうか。
レッサースローロリスは、15℃以下になる時もある冬になると、えさを探すことをせず何日も動かなくなります。
毛の色は、この時のカモフラージュに役立っていると考えられます。
ちなみにこの期間、体温は低くなり、体に溜めた脂肪を使って生き延びます。
毒を持つサル
スローロリスのなかまは、哺乳類には極めてまれな毒を持つサルです。
レッサースローロリスは腕に汗腺を持ち、危険を感じるとそこを舐め始めます。
そうして毒をまとった歯に噛まれでもしたら大変なことになります。
人が噛まれてアナフィラキシーショックに陥った事例もあるようです。
近年、レッサースローロリスはペットとしての需要が高まっています。
しかし、噛まれると危険で、死に至る可能性もあります。
ということで、ペットにする際は、歯が抜かれることが多いと言います。
こうすることで、噛まれても毒の体内への侵入を防ぐことができるわけですが、サルからしたらたまったものではありません。
歯は敵を噛むためというよりは、えさを食べるために重要だからです。
歯を抜かれたスローロリスは、感染症やストレスなどが原因で短命に終わることが少なくないようです。
人間のエゴはいろいろな所で動物に悪影響を及ぼしています。
レッサースローロリスの生態
生息地
レッサースローロリスは、ラオス、ベトナム、カンボジアの熱帯雨林などに生息しています。
標高1,500mまでで見られ、樹高8m付近の林冠部分で睡眠をとります。
食性
レッサースローロリスは主に樹脂や樹液を食べ、他には果実や昆虫も食べます。
形態
体長は15~25㎝、体重は400gほどで、オスの方が大きいですが、スローロリスのなかまの中では最小になります。
また、他のスローロリスのなかまに比べると、より機敏に動きます。
夜行性のスローロリスは、目にタペータムという組織を持ち、これが反射する光によって暗闇でも動き回ることができます。
社会
レッサースローロリスは、基本的に単独で行動すると考えられていますが、4頭までの群れで採食する姿も観察されます。
1匹1匹がなわばりをもち、オスは2頭までのメスとなわばりを重複させています。
オスの行動圏は約20ha、メスはその半分ほどです。
なわばりは尿などのにおいによってマーキングされます。
そしてこの尿は、なわばりのアピール以外にもメスを惹きつける役割を持ちます。
スローロリスのなかまは、鼻鏡(びきょう)と呼ばれる部分にヤコブソン器官という嗅覚器官を持っています。
ここは、フェロモンを感知することができるので、おしっこも立派な魅力になりうるのです。
繁殖
レッサースローロリスの繁殖は、7月の終わりごろから10月の初めにかけて行われます。
この期間、オスの精巣、メスの陰部は大きくなり、互いのコミュニケーションが増えます。
メスは、約半年の妊娠期間の後、1~2匹の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは産まれたそばから母親につかまることができます。
赤ちゃんは母親に育てられ、生後4.5カ月で離乳します。
そして生後10~20カ月で性成熟に達します。
出産間隔は12~18カ月、寿命は飼育下で約20年です。
人間とレッサースローロリス
絶滅リスク・保全
レッサースローロリスは、伝統的な薬として用いられたり、食料として狩猟されたりしてきました。
例えばカンボジアでは、レッサースローロリスは傷や骨折などの他、100以上の病気を治すと信じられており、市場価値は年々高まってきていると言われています。
また、近年ではペットとしての需要が高まり、違法な捕獲、取引が後を絶ちません。
このような理由から、レッサースローロリスの個体数年々減少しており、レッドリストでは2020年、絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧ⅠB類に格上げされてしまいました。
動物園
そんなレッサースローロリスには、日本の動物園でも会うことができます。
埼玉県のこども動物自然公園、愛知県の日本モンキーセンター、京都市動物園がこのサルを飼育しています。
テディベアと表現されることもあるほど可愛いレッサースローロリスですが、ペットとして飼うのではなく、是非動物園でご覧ください。