アカゲザルの基本情報
英名:Rhesus Monkey
学名:Macaca mulatta
分類:オナガザル科 マカク属
生息地:アフガニスタン, インド, タイ, 中国, ネパール, パキスタン, バングラデシュ, ブータン, ベトナム, ミャンマー, ラオス
保全状況:LC〈軽度懸念〉
実験されるサル
サルは他の動物よりも人間に近い存在であるため、人間を知るためにも実験によく使われてきました。
中でもマカク属のサルは、入手や繁殖が容易で、サイズも大きくないなどの理由から、実験体として頻繁に利用されてきました。
さらにその中でもアカゲザルは一般的で、数多くの実験に利用されています。
愛情について研究したハリー・ハーロウの実験は、アカゲザルを使ったものの中でも有名でしょう。
また、サルに更年期があることもアカゲザルの実験から分かっています。
さらに、アカゲザルは初めて宇宙に行った霊長類としても知られています。
人類が宇宙に飛んだ10年以上も前の1949年6月14日、アカゲザルのアルバート2世が134km上空(それ以上が宇宙空間とされるカーマンラインは高度100km)に到達しています(パラシュートの故障で地面に激突し死亡)。
ちなみに、その前年、アルバートが63km上空まで達していますが、残念ながらロケット内で窒息死しています。
アルバート2世の後にも、ザコニャとザビヤカは13日17時間も宇宙に滞在しましたし、クロシュは帰還後、繁殖に成功しています。
より身近な所にも、アカゲザルの存在を見ることができます。
血液型には、皆さんよくご存じのABO血液型以外にも、様々な血液型があります。
その中でも輸血の際などに重要になってくるRh血液型のRhは、アカゲザルの英名である“Rhesus Monkey”に由来しています。
動物を実験に利用することは、昔から賛否両論ありますが、そのおかげで様々な発見があったことも事実です。とはいえ、動物をぞんざいに扱うことは許されません。動物を物のように扱う実験は糾弾されるべきです。我々の生活に貢献する生き物に対しては、常に「いただきます」の気持ちを持つことが大切です。
孫悟空のモデル
日本でも有名な中国のお話の中に、「西遊記」がありますよね。
あの主人公である孫悟空のモデルをネットで調べると、キンシコウというサルが出てきます。
このサルを見ると、非常にユニークな顔をしており、それはそれでいいのかなという気はしますが、実はこのキンシコウは孫悟空のモデルではありません。
この説は、あの日本モンキーセンターの館長のコメントが一人歩きした結果、広まったもので、事実には基づいていないようです。
ではどのサルがモデルなのか。
そう、それこそがこのアカゲザルなのです。
興味ないとか、キンシコウでいいだろとか言わないでください。
実験で使われるのに知名度最下層のアカゲザルの身にもなってあげてください。
アカゲザルの生態
生息地
アカゲザルは、人以外のサルの中では最も生息領域が広く、アジアの各地に分布しています。
あらゆる地域に適応しており、中には標高4,000メートルに住むものもいます。
さらには泳ぐこともできるようです。
また、人間が住むところにも進出し、作物や人の食べ残しをえさにしています。
食性
このサルは、葉っぱから小動物まで、なんでも食べる雑食性なので、簡単に手に入る人間の食べ物は、絶好のえさと言えるでしょう。
形態
体長は45~65㎝、体重は4~12㎏でオスの方が大きくなります。
外見は、ニホンザルにとても良く似ていますが、アカゲザルには20~30㎝のしっぽがある点で異なっています。
その他の、ほお袋や、尻だこなどの特徴はニホンザルや他のマカク属のサルと共通しています。
行動
アカゲザルは多い時には100頭以上にもなる複雄複雌の群れを作ります。
オスメスともに序列があり、αオスが群れの頂点に立ちます。
アカゲザルはなわばりを持たず、行動域は他の群れと大幅に重複しています。
群れ同士が遭遇すると、弱い方の群れが強い方を避けるので攻撃的な闘争はあまり見られないようです。
アカゲザルの群れは母系社会です。
メスは生まれた群れに留まり続けるので、群れ内のメスの関係は非常に近いです。
一方のオスは成長すると群れを離れるので、移籍後の群れのメンバーとの血縁関係はありません。
繁殖
繁殖は群れや地域によって異なる時期に行われます。
メスの排卵周期は約29日で、その内8~11日の間に交尾が行われます。
この間、メスの性皮は少ししか腫れず、外見上の変化はあまりないようです。
一方のオスは、繁殖期の精巣は通常時の2倍の大きさになります。
メスは165日前後の妊娠期間の後、通常1匹の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは400~500gで母親によって世話されます。
そして約1歳で離乳し、メスは2.5~4歳、オスは4.5~7歳で性成熟に達します。
メスの出産間隔は約1年で、寿命は飼育下で25~35年です。
人間とアカゲザル
絶滅リスク・保全
アカゲザルは、とても広い範囲に生息し、適応力や繁殖力もあるので絶滅の危機に関しては軽度懸念とされています。
むしろ世界ではその増加が危惧されています。
アカゲザルは、本来生息してない日本やアメリカ、ブラジルなどにも持ち込まれています。
日本でも、ニホンザルとの交配が問題となっており、特定外来生物にまで指定されています。
動物園
そんな、日本の野生下でも見ることができてしまうアカゲザルですが、動物園の中でも見ることができます。
埼玉県の東武動物公園、東京都の井の頭自然文化園、愛知県の日本モンキーセンター、京都市動物園、広島県の安佐動物公園、山口県の徳山動物園がアカゲザルを飼育しています。
危ないので、野生ではなく動物園でアカゲザルを見ましょう。