ヨコスジジャッカルの基本情報
英名:Side-striped Jackal
学名:Canis adustus
分類:イヌ科 イヌ属
生息地:アンゴラ、ベナン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、エスワティニ、エチオピア、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、マラウィ、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ナミビア、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、ソマリア、南アフリカ、スーダン、タンザニア、トーゴ、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
共存するジャッカル
地面に平行に、横腹を走る模様が特徴的なヨコスジジャッカルは、キンイロジャッカル(現在、アフリカのキンイロジャッカルはアフリカンゴールデンウルフという独立種であることが分かっている)、そしてセグロジャッカルという、2種のジャッカルとその生息域を一部共有しています。
同じジャッカルと名のつく彼らの生態やニッチはさぞ似ていることでしょう。
しかし、限られた資源、条件のなかでヨコスジジャッカルは、他のジャッカルとどのように共存しているのでしょうか。
今、ニッチという言葉が出てきました。
ビジネス界隈でもよく聞かれるようになったこのニッチという言葉は、生態的地位を意味します。
ある種のニッチは、食物などの資源や、気温など生存可能な環境条件により決まります。
このニッチを2種の生物が共有している場合、その2種は長くは共存できず、どちらか一方は排除されることになります。
これを競争排除則(ガウゼの法則)と言います。
同じニッチを共有することは難しいのです。
しかしこれは、ニッチが違えば共存できることも意味します。
ヨコスジジャッカルが他の2種のジャッカルと共存できているのも、ニッチが同一でないからにほかなりません。
まずヨコスジジャッカルは、生息する環境が他と違います。
彼らは、乾燥地帯や開けた草原などにも生息する他の2種と比べ、より湿潤で植物が密生した環境を好みます。
そして、食べるものも違います。
どのジャッカルも雑食性とくくってしまえばそれまでですが、つぶさに見ていくとその違いがわかってきます。
ヨコスジジャッカルは、他のジャッカルと比べると、より肉食の傾向が弱く、それは比較的小さな裂肉歯にも表れています。
家畜を襲うこともなく、他の2種のように自分より大きな草食動物を捕食することもあまりありません。
このように、ジャッカルと言う同じ名前を持っていても、生態や生息環境は異なります。
そしてその違いのおかげで彼らは共存することができています。
違いこそ共存の秘訣なのです。
ヨコスジジャッカルの生態
生息地
ヨコスジジャッカルは、標高2,700mまでの、アフリカ中部のサバンナや茂み、沼沢地などに生息します。
湿潤な環境を好み、開けた草原などには生息しません。
食性
彼らはジャッカルの中で最も雑食性が強く、昆虫や果実、鳥類、爬虫類、哺乳類など様々なものを食べます。
死肉を漁ることも多く、飼育下では穀物も食べます。
下の動画では、ヨコスジジャッカルが死肉を食べる様子や、昆虫を捕食する様子を観察することができます。
形態
体長は69~81㎝、肩高は35~50㎝、体重はオスが7~12㎏、メスが約10㎏、尾長は30~40㎝、耳の大きさは8~10㎝で、オスの方がやや大きくなります。
行動
ヨコスジジャッカルは夜行性です。
単独、ペア、群れのどの形でも見られます。
多くて6頭がいるパックと呼ばれる群れは家族群で、家族だけに通じる鳴き声があります。
狩りは基本的に単独で行われ、パックでの狩りはほとんどありません。
これも他のジャッカルとの違いです。
繁殖
ヨコスジジャッカルの繁殖には季節性があり、6月~7月にかけて交尾が行われます。
妊娠期間は57~70日で、通常3~4頭の赤ちゃんが産まれます。
赤ちゃんは、親やツチブタが掘った巣穴で、父親や兄弟にも育てられます。
生後8~10週には離乳し、6~8カ月齢で性成熟に達します。
その後、生後11カ月で生まれた群れを離れます。
寿命は約10年です。
ヨコスジジャッカルに会える動物園
ヨコスジジャッカルは、イヌジステンパーや、狂犬病を持っていることがあるため、駆除の対象となることがあります。
しかし、それ以外の大きな脅威はなく、個体数も安定しており、絶滅も懸念されていません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念という評価が与えられています。
そんなヨコスジジャッカルですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
彼らどころかどのジャッカルも日本にはいないので、アフリカで同所的に生息するジャッカルたちを直接見るしかありませんね!