シタツンガの基本情報
英名:Sitatunga
学名:Tragelaphus spekii
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ブッシュバック属
生息地:アンゴラ、ベナン、ボツワナ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

沼地のアンテロープ
ウシ科の多くを占めるアンテロープの中には、水がある環境に依存したものが存在します。
例えばその名からも想像できるウォーターバックや、レックという独特な繁殖様式を持つリーチュエなどは水辺や沼地に生息します。
アフリカ中部を中心に分布するシタツンガも、水、特に沼地や湿地に依存するアンテロープです。
彼らは特にリーチュエと同所的に生息します。


シタツンガの体は沼地での生活に適応しており、例えば蹄は他と比べて長く、おかげで地面にぬかるまずに歩くことができます。
また、彼らは数㎞を泳ぐこともできます。子供のうちは沼地や湿地を縦横無尽に歩くことは難しいため、母親にくっついて行動しながら、移動方法を学んでいきます。
また、シタツンガは沼地や湿地にあるお気に入りの餌場への道のりを覚えており、毎度確立された同じ道のりを歩いて目的地となる場所に到達します。
沼地や湿地はエサを供給してくれるだけでなく、避難場所ともなります。
彼らの地上の捕食者であるライオンなどは基本的に水を苦手としているため、水に入ってまで襲ってくることはあまりありません。
また、彼らの生息地は人間にとってもアクセスしにくい場所であるため、サバンナに生息するアンテロープほど彼らは狩猟されていないようです。
一方、水中にはワニがいるため、水に逃げ込んだからと言って安心もできません。

シタツンガは、沼地や湿地に暮らすがゆえ、その生息環境の変化には脆弱です。
例えば、特に沼地は火事に弱いですが、火事にあった沼地はもはやシタツンガの生息できる環境ではなくなります。
また、水位は生息する植物に影響し、特に水位が低くなれば生息地の分断や捕食の可能性の上昇につながります。
そして、人間がよりアクセスしやすくもなります。
実際に、生息地の分断と技術の向上により彼らはより人間に狩られやすくなっており、特にアフリカ西部において、狩猟は大きな脅威となっています。
現在、彼らの絶滅はあまり懸念されていませんが、沼地のアンテロープの将来は、沼のごとく安定したものではなさそうです。

シタツンガの生態
生息地
シタツンガは沼地やマングローブ、森林地帯、サバンナなどに生息します。
開けた水場は避けるようです。
ニジェールでは絶滅しており、おそらくトーゴでも絶滅しています。
形態
体長は1~1.8m、肩高はオスが1~1.2m、メスが75~90㎝、体重は50~125㎏、尾長は14~37㎝で、オスの方が大きくなります。
オスは暗い体色をしている一方、メスは栗色の明るい色をしています。
角(ホーン)はオスにのみ生え、50~90㎝になります。

食性
ブラウザーでもグレイザーでもある彼らは、葉や枝、草、花、果実などを食べます。
沼地でも乾いた地上でも採食します。
捕食者にはライオンやヒョウが知られています。

行動・社会
昼夜問わず活動し、定住性であるシタツンガは、弱い社会性を持ちます。
メスがメス同士の群れを作る傾向にある一方、オスは繁殖期を除いて単独で行動するようです。
なわばり性は弱いです。
繁殖
繁殖は年中見られます。メスの出産間隔は約1年、妊娠期間は7.5~8ヵ月で、1度の出産で通常1頭が生まれます。
子供は茂みに隠されて育てられ(ハイダー型)、1~1.5歳で性成熟に達します。
寿命は飼育下で約20年です。

人間とシタツンガ
絶滅リスク・保全
シタツンガの個体数は約17万頭と推測されていますが、これは過剰な推定だと考えられています。
個体数の4割ほどは保護区で生活しています。
脅威としては生息地の破壊や狩猟が挙げられます。
個体数は減少傾向にあるとされていますが、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。


動物園
この無名中の無名のシタツンガは、意外にも日本の動物園でも見ることができます。
岩手県の盛岡市動物公園、岩手サファリパーク、埼玉県の東武動物公園、千葉県の千葉市動物公園、静岡県の富士サファリパーク、兵庫県の姫路セントラルパーク、王子動物園が彼らを飼育・展示しています。

