コジャコウネコの基本情報
英名:Small Indian Civet
学名:Viverricula indica
分類:ジャコウネコ科 コジャコウネコ属
生息地:バングラデシュ、ブータン、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、パキスタン、スリランカ、台湾、タイ、ベトナム、マダガスカル、タンザニア、イエメン、コモロ諸島
保全状況:LC〈軽度懸念〉
圧から逃れているジャコウネコ
南アジアや東南アジアに生息し、開けた所を好むコジャコウネコは、多くの哺乳類が絶滅の危機に追いやられる中、安定した個体数を維持しています。
その理由の一つは、彼らが狩猟圧から逃れられているからです。
インド北東部、中国南部、ラオスやベトナムなど東南アジア北部では、その肉を食べたり、国際的な野生動物取引に出したりするために、トラップなどでかなりの数の哺乳類が狩猟されています。
しかし、このような狩猟は閉じた常緑樹林の中で行われることが多いため、開けた環境を好み、森林の縁に生息するコジャコウネコはその狩猟圧から逃れることができているのです。
例えば、密猟など人間による攪乱があまり規制されておらず、多くの肉食動物が安定した個体数を維持できていないミャンマーのフラウガ野生動物公園で行われた調査では、コジャコウネコは2番目に多くカメラトラップにかかったそうです。
理由のもう一つは、森林の破壊が彼らにとって大きな脅威となっていないことです。
特に東南アジアでは、森林破壊が急速に進んでおり、多くの哺乳類が絶滅の危機に追いやられています。
しかし、この森林破壊はジャコウネコにとってはそれほどの脅威となっていない可能性があります。コジャコウネコは開けた環境を好み、人の住居の近くにも現れる動物です。
そんな彼らにとって閉じた常緑樹林の開拓は、全体として彼らの生息地を増やしている可能性があるのです。
このようにコジャコウネコが進化の過程で獲得した能力は、偶然にも人間による攪乱に耐えうるほどのものだったのです。
東南アジアの森林破壊について
コジャコウネコの生態
生息地
コジャコウネコは、南アジアから東南アジア、東アジアにかけて生息します。
二次林など、人の手が入ったところにも生息することができます。
インドでは海抜2,500mで観察された例があります。
食性
主に肉食性です。
齧歯類などの小型哺乳類の他、果実や昆虫、死肉なども食べます。
家禽を襲うこともあり、人が捨てたゴミも食べます。
形態
体長は53~58㎝、体重は2~4㎏、尾長は38~43㎝になります。
陰部には臭腺があり、ここから出る分泌物はなわばりのアピールのため、異性を惹きつけるために重要な役割を果たしています。
行動
主に夜行性ですが、人がいないところでは日中も活動することがあります。
休息は、木の洞や、自分もしくは他の動物が掘った地面の穴の中でとります。
主に地上で生活しますが、木登りや泳ぎもできます。
コジャコウネコは単独性ですが、繁殖の時などは一時的にペアを作ることもあります。
行動圏はタイで約3㎢の記録があります。
繁殖
繁殖に関してもそうですが、コジャコウネコの研究はあまり進んでおらず、ほとんどの情報は飼育下の個体によるものです。
繁殖には地域によって季節性があります。
一度に2~5頭の赤ちゃんが産まれ、赤ちゃんは4~4カ月半で離乳します。
飼育下では20年近く生きるものもあるようですが、野生での寿命は8~9年ほどと言われています。
人間とコジャコウネコ
保全状況
先述のように彼らの個体数は安定しており、絶滅の危険度に関してもIUCNのレッドリストでも軽度懸念の評価ですが、懸念事項もあります。
例えば、中国では毛皮のための狩猟が行われています。
また、臭腺からの分泌物を香水や薬の成分として利用するために、インドやタイでは主に野生から捕獲してきたと思われる個体が多数飼育されています。
さらに、インドネシアのジャワでは、ジャコウネコの飼育が流行しているようで、彼らは2番目に多く取引されているジャコウネコと言われています。
ちなみに、1番はパームシベットで、コジャコウネコの20倍の取引量があるようです。
動物園
そんなコジャコウネコですが、なんと日本でも見ることができます。
日本では、愛知県の東山動物園だけが、このコジャコウネコを飼育・展示しています。
日本でジャコウネコはめったに見られないので、是非足を運んでみてください。