スプリングボックの基本情報
英名:Springbok
学名:Antidorcas marsupialis
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 スプリングボック属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、レソト
保全状況:LC〈経度懸念〉
ストッティングとトレックボックの謎
アフリカ南部に生息するスプリングボックのスプリングとは、ばねのように跳ぶことを意味します(ボックはアンテロープやヤギといった意味)。
その名の通り、彼らは捕食者が近くにいるときや驚いたとき、背中を丸めてばねのように垂直方向に2m以上もジャンプします。
これはストッティング、またはプロンキングと呼ばれています。
ストッティングの理由としては、ライオンやチーターなどの捕食者に自分が健康な個体であり捕まえられないことを示すため(捕食者は弱い個体を選別して襲う)だったり、ジャンプして捕食者の位置や仲間の位置を把握するためだったり、ジャンプすることで仲間に危険を知らせるためだったりという説がありますが、確定的なものはありません。
もしかしたら上記のすべてが理由なのかもしれません。
そんなスプリングボックにはもう一つ謎があります。
それがトレックボックの謎です。
彼らの生息地の南部では1800年代まで、散発的に発生する、まるでイナゴのような万単位の群れでスプリングボックが大移動をする、トレックボックと呼ばれる現象が知られていました。
大群が圧倒的物量で大地を駆け巡る姿は、あらゆる生き物をおびえさせたといいます。
普段は数十頭程度で暮らすスプリングボックがどのタイミングで、そしてなぜ集まり、どのように解散していくのか、トレックボックに関する謎は未だ解決されていません。
そしてトレックボックが今では見られない理由もわかっていません。
可能性としては、移動を妨げるフェンスやインフラが増えたこと、狩猟圧、牛疫などの病気、家畜の存在、干ばつなどが考えられています。
確かに、スプリングボックは現在、約7割が保護区や私有地で暮らしているためフェンスの影響は大きいかもしれません。
ただ、かつてトレックボックが見られたカラハリの一部、特にエサとなる植物が少ない地域では、季節的に彼らが大群を成すことがあると言います。
彼らがまた大移動を始めれば、トレックボックの謎も解けるかもしれません。
スプリングボックの生態
生息地
スプリングボックはアフリカ南部の標高2,000mまでのサバンナや低木地、茂みなどに生息します。
形態
体長は1.4~1.6m、肩高は約80㎝、体重は33~46㎏になります。
両性とも角が生えていますがオスの方が大きく、オスの角は36~48㎝になります。
食性
主にブラウザーで葉などを食べますが、環境によって草や花、根などを食べることもあります。
行動・社会
朝方と夕方に活発になります。
通常同性の群れを作りますが、メスだけの群れには少数のなわばりを持つオスが含まれることもあります。
繁殖期には、なわばりを持つオスが複数のメスとハーレムを作る一方、そうでないオスはオスだけの群れを作り、メスをめぐってなわばりオスと戦うこともあります。
繁殖
交尾は乾季、出産は雨季の初めに見られることが多いようです。
メスは2年に1度、4~6ヵ月の妊娠期間ののち、1頭の赤ちゃんを産みます。
生後数週間は赤ちゃんは茂みに隠れて育ちますが、3~4週で母親の群れに合流します。
生後半年で離乳し、1歳までにはオスは群れを離れオスだけの群れに合流します。
寿命は野生では通常7~9年、飼育下では20年近く生きる個体もいます。
人間とスプリングボック
絶滅リスク・保全
特に南アフリカでは1800年代、狩猟や牛疫などでスプリングボックが激減しましたが、その後私有地や保護区への再導入により個体数は増加しました。
現在、スプリングボックは200~250万頭いると推測されており、彼らの存続を脅かす大きな脅威もありません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
動物園
スプリングボックには日本で会うことができません。