マレーグマ

マレーグマ
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マレーグマの基本情報

マレーグマ


英名:Sun Bear
学名:Helarctos malayanus
分類:クマ科 マレーグマ属
生息地:バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉

マレーグマ@Photo credit: Tambako The Jaguar

Photo credit: Tambako The Jaguar

脅威のただなかに

胸の模様と短い毛が特徴的なマレーグマは、東南アジアの熱帯雨林に生息しています。

しかし、今、彼らの生息域はどんどん縮小しています。

かつて、マレーグマはボルネオ島とスマトラ島を含めた東南アジア全域に生息していましたが、現在では局地的に絶滅しており、シンガポールでは姿を消しています。

 

このように彼らの生息域が縮小している大きな原因は、熱帯林の、紙製品の原料や植物油を作るためのプランテーションへの転換です。

私たちが日々消費する紙や油のために、マレーグマの生息地が次々と奪われていっているのです。

どれだけ森林が減少しているか、彼らの生息地であり、東南アジアの中でも特に森林の減少が著しい、スマトラ島とボルネオ島を見てみましょう。

下図1:スマトラ島の森林率(森林面積の割合)の推移

スマトラ島の森林率(森林面積の割合)の推移

出典:WWF(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3801.html)

 

下図2:ボルネオ島の森林率の推移

ボルネオ島の森林率の推移

出典:WWF(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3801.html)

 

スマトラ島では、1990年から2016年のたった約25年の間で、半分もの森林が失われています。

ボルネオ島でも、2005年から2015年のたった10年間で島の面積の16%以上もの森林が失われています。

森林減少のスピードは、世界の動向に漏れず、年々遅くなってきているものの、その規模は依然として大きいと言えます。

東南アジアの熱帯林の減少については、京都大学霊長類研究所准教授の半谷吾郎先生のインタビューにも詳しいので、是非そちらもご覧ください。

 

マレーグマは、森林に依存している動物です。

プランテーションでの目撃情報もありますが、彼らがそこで生存できる証拠は見つかっていません。

緑で覆われているとはいえ、単一の栽培種で構成されたプランテーションで生きることは難しいでしょう。

また、プランテーション用の土地開発に利用される野焼き、特に植物などの枯死体が堆積してできた泥炭地の開発に利用される野焼きは、乾季における大規模火災や泥炭地が蓄積していた温室効果ガスの大量放出を引き起こし、マレーグマに直接、間接の被害をもたらします。

さらに、生息地である森林の減少は、人間との接触、そして人間との間の摩擦も増やします。

 

マレーグマにとって、森林の減少、プランテーションへの転換は生死に関わる大問題なのです。

マレーグマは、現在も個体数を減らし続けており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されてしまっています。

マレーグマの生態

生息地

マレーグマは、東南アジア低地熱帯林に生息します。

 

食性

雑食性で、機械的捕食者である彼らは、ハチやハチミツ、シロアリ、ミミズなどの他、果実や花、小型齧歯類や鳥類、トカゲも食べます。

また、トラの獲物の食べ残しを食べることもあります。

食べた果実の種子は消化されずに排出されることから、彼らは種子散布者として森林の維持に貢献しています

 

形態

クマ科の中では最小であるマレーグマの体長は1.2~1.5m、肩高は約70㎝、体重は27~65㎏、尾長は3~7㎝で、オスの方がメスよりも1~2割ほど大きくなります

舌はクマ科の中で最も長く、20~25㎝もあり、これでシロアリやハチミツをなめとります。

また、首周りの皮膚はだぶついており、トラなどに首元を噛まれても、振り返って反撃することができます。

 

行動

マレーグマは日中活動しますが、夜に活動することもあります。

単独性で、嗅覚を頼りにエサを探します

エサは年中豊富にあるので、季節変化が激しい温帯のクマのように冬眠はしません

樹上性が強く、休息は樹上でとります。

 

繁殖

熱帯で暮らすマレーグマは、他のクマと違い季節繁殖をせず、1年を通して繁殖します。

妊娠期間は約95日で、着床遅延が見られることもあり、飼育個体では妊娠期間が200日に及ぶこともあるようです。

一度の出産で、300g前後の赤ちゃんが1~2頭産まれます。

赤ちゃんは目が見えず、毛もない状態で木の洞などに産み落とされます。

子供は、大人の大きさになり性成熟に達する2~3歳まで親元にいると考えられています。

寿命は飼育下で約36年の記録があります。

マレーグマ@Photo credit: Theo Stillelman

Photo credit: Theo Stillelman

マレーグマに会える動物園

マレーグマは、森林の減少、プランテーションへの転換という脅威の他にも、もう一つ大きな脅威にさらされています。

それが、密猟です。

マレーグマは、伝統薬に使われる胆のうが高い価値で売れることから、違法な狩猟の牙にかかっています。

タイでは密猟により、ここ20年で約4割も個体数が減ったという情報もあります。

このような密猟に対する有効な対策はいまだなされていないことから、密猟はマレーグマにとって今後も大きな脅威であり続けることでしょう。

また、マレーグマが作物を荒らすために、その報復としてマレーグマが殺されることもあります。

これは彼らの生息地が減少していることで起きる弊害です。

森林破壊と密猟に、どう歯止めをかけるかが、マレーグマを保全する上で重要です。

 

そんなマレーグマですが、日本の動物園でも見ることができます

北海道の円山動物園、東京都の上野動物園、愛知県ののんほいパーク、大阪府の天王寺動物園、愛媛県のとべ動物園、山口県の徳山動物園、福岡県の福岡市動物園などが、マレーグマを飼育・展示しています。

彼らを見た際には、野生のマレーグマの置かれている状況にも、ぜひ思いを馳せてみてください。







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