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サバンナセンザンコウ

サバンナセンザンコウ
サバンナセンザンコウ
目次

サバンナセンザンコウの基本情報

英名:Temminck’s Pangolin
学名:Smutsia temminckii
分類:鱗甲目 センザンコウ科 オオセンザンコウ属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、チャド、エチオピア、ケニア、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ルワンダ、南アフリカ、南スーダン、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉

サバンナセンザンコウ
Photo credit: David Brossard

参考文献

価値ある鱗

大きな爪が生えた前足は歩行の邪魔になるのか、サバンナセンザンコウはセンザンコウの中でも唯一前かがみの状態で二足歩行する面白い動物です

彼らの特徴はそれだけではありません。

背中側にびっしり生えた鱗は他の哺乳類には見られない非常にユニークな特徴です。


この鱗はセンザンコウ8種すべてに見られ、防御のために使われます。

センザンコウはアリやシロアリを主食としますが、その攻撃から鱗は身を守ります。

そして、危険を感じると丸くなり鱗のボールとなることで、肉食動物から身を守ります。

百獣の王・ライオンでさえ、センザンコウの鱗の防御を破ることはできません。

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体重の3分の1を占めることもある鱗は、ケラチンと呼ばれる爪や髪などを作るのと同じ素材でできています。

皮膚中の細胞にケラチンが蓄積し、角質化することで鱗が出来上がるのです。

この点で、甲羅が骨でできた、姿のよく似たアルマジロとは異なります。

ちなみにサイの角は、骨ではなくこのケラチンでできています。

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ところでこのセンザンコウの鱗をもってしても身を守れない相手がいます。

それが人間です。

センザンコウの肉は生息国の一部では珍味として食べられています。

また鱗はスピリチュアルな効果や薬効を持つとして重宝されています。

例えば、その鱗を燃やせばライオンを追い払ったり、運気が上がったり、雨が降ったりという迷信がアフリカには存在します。

また、タンザニアではセンザンコウの体はさまざまな病気の薬となることから、彼らは“医者”と呼ばれることもあります。

さらに、中国では鱗を使った治療が公式に認められており、200を超える製薬企業が鱗を含む伝統薬を今でも製造しています。

中国ではセンザンコウの鱗には母乳の出を良くしたり、喘息やリウマチなどの症状を緩和したりする効果があるとされています。


こうした鱗が持つ効果は、どれ一つとして科学的根拠を持ちませんが、2000年から2013年の間に密猟されたセンザンコウは100万頭にもなるという報告があるほどかなりの需要があります。

センザンコウはアジアとアフリカに生息していますが、大陸を横断した取引ルートが存在します。

特に中国では旺盛な需要があり、国内に生息するミミセンザンコウはほとんど狩りつくされたとされています。

中国では今、東南アジアやアフリカのセンザンコウの鱗が違法な手段で密輸されており、2017年、中国税関はセンザンコウ3万頭に匹敵する12t近い鱗を押収しています。

現在、人間を除くとセンザンコウは違法な売買が世界一多い哺乳類と言われており、8種はすべて絶滅危惧種に指定されています。


そんなセンザンコウが話題になったのが、コロナ禍下のことです。

コロナウイルス(SARS-CoV-2)の宿主としてセンザンコウの名前が挙がったのです。

というのも、東南アジアに生息する、現在最も取引量があるとされるマレーセンザンコウから、新型コロナウイルスとよく似たウイルスが発見されたからです。

ヒトへの感染経路は未だ不明ですが、世界的に闇取引されるセンザンコウが感染源であることには頷けます。

コロナ禍は、センザンコウが起こした人間に対する蜂起なのかもしれません。

サバンナセンザンコウ

サバンナセンザンコウの生態

生息地

サバンナセンザンコウは、アフリカのセンザンコウでは最も広く分布しています。

東アフリカから南アフリカにかけて、標高1,700mまでのサバンナウッドランドに生息します。

生息地における雨量は、大体年間250~1,400㎜の間に収まります。

砂漠や森林、農地などには生息しません。

形態

体長は40~70㎝、体重は7~12㎏、最大で19㎏、尾長は50㎝程度で、センザンコウの中では体重30㎏を超えるオオセンザンコウに次いで大きくなります。

手足には5本ずつの大きくて鋭い爪が生えています。

アリを食べる他の動物と同じく歯はなく、舌は25㎝にもなります。

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サバンナセンザンコウ
Photo credit: David Brossard
最小のセンザンコウで唯一皮膚が黒い尾長センザンコウ

食性

アリシロアリを主食とし、1日に2万匹を食べると言われています。

割合は地域に依りますが、アリが90~95%、シロアリが5~10%です。

歯はないものの、アリをすりつぶすために胃は筋肉質です。

水はほとんど飲まなくても生きていけますが、あれば飲みます。

行動・社会

主に夜行性で、単独性です。

センザンコウにはパラワンセンザンコウキノボリセンザンコウなど樹上で暮らすものもいますが、サバンナセンザンコウは地上性です。

大きな爪でアリ塚を開きますが、巣を自分で掘ることはあまりなく、ツチブタヤマアラシが掘った穴を活用します。

行動圏は6~14㎢で、オスの行動圏は複数のメスのものと重複している場合もあります。

嗅覚が鋭く、オスはメスが発するにおいで発情を知るとされています。

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キノボリセンザンコウ

繁殖

メスは1~2年に一度、105~140日の妊娠期間ののち、200~500gの赤ちゃんを通常一頭産みます。

赤ちゃんは最初の1ヵ月は巣穴で過ごし、母親にはついていきません。

この間、母親は定期的に巣穴を移動させるようです。

センザンコウの仲間は子供を尾の付け根や背中に載せて移動します。

生後3カ月もすれば一人で活動するようになりますが、1歳ごろまでは母親の行動圏の近くで過ごします。

オスは5~7歳、メスは3~4歳で最初の繁殖を経験するとされています。

寿命は不明ですが、アジア最大種のインドセンザンコウは飼育下で19年生きた個体がいます。

African Pangolin Working Group

人間とサバンナセンザンコウ

絶滅リスク・保全

個体数は不明ですが、現在も減少中であるとされています。

ワシントン条約(CITES)の附属書Ⅰに記載されており、国際取引は禁止されています。

IUCNのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。

主な脅威は、肉や鱗を目的とした密猟の他、農地拡大や探鉱による生息地の減少があります。

サバンナセンザンコウ
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動物園

サバンナセンザンコウを日本で見ることはできませんが、センザンコウで唯一冬眠するミミセンザンコウは、東京都の上野動物園で見ることができます。

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