シロサイの基本情報
英名:White Rhino
学名:Ceratotherium simum
分類:奇蹄目 サイ科 シロサイ属
生息地:南アフリカ、ボツワナ、エスワティニ、ナミビア、ウガンダ、ジンバブエ、モザンビーク、ケニア、ザンビア
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
参考文献
南北シロサイの今
アジア、特に中国やベトナムでは、二日酔いから癌まで、様々な病を治す薬として(科学的根拠はなし)、自らのステータスを誇示するシンボルとして、サイの角の需要が高く、その価値は金よりも高いとされています。
そしてそれらの角の95%以上はアフリカで密猟されたサイのものと言われています。
アフリカにはシロサイとクロサイが現存しますが、シロサイにはキタシロサイ(Ceratotherium simum cottoni)とミナミシロサイ(Ceratotherium simum simum)という2亜種が知られています。
それぞれが密猟の影響をどの程度受け、現在どのような状況にあるのか見ていきましょう。
キタシロサイ
キタシロサイはかつて中央アフリカやウガンダ、コンゴ民主共和国にかけて生息していました。
しかし密猟の影響で1960年代には2千頭以上いた彼らは、2008年には絶滅したとされるまでになります。
ただ、幸いにもチェコのドブール・クラーロヴェー動物園で飼育されていたオスメスそれぞれ2頭、計4頭が生存していたため、彼らはケニアのオルペジェタ自然保護区に移されます。
自然環境で暮らすことで、彼らの本来の生理現象が刺激されて繁殖をし、個体数が増えることが期待されたのです。
しかし、2018年、最後のオス、スーダンが死んでしまい、残りはナジンとファトゥというメスが残されるのみとなりました。
キタシロサイの運命は決まったかと思われましたが、科学が一縷の望みを与えてくれます。
体外受精によって得られたミナミシロサイの胚を移植された代理母の妊娠がミナミシロサイで成功したのです。
この技術を使えば、残ったキタシロサイのメスの卵子と保存されていたオスの精子を使って体外受精を行い、ミナミシロサイの代理母に妊娠させることが可能になります。
これに加え、キタシロサイのiPS細胞から、精子や卵子のもととなる始原生殖細胞様細胞(PGC)を生み出す技術も開発されました。
この技術が発展すれば、動物の体を作る体細胞を由来としたiPS細胞から、精子や卵子を生み出すことができるようになり、キタシロサイを救うことができます。
この功績は大阪大学の林克彦教授らによるもので、iPS細胞の生みの親である山中伸弥教授含め、動物の保全には意外にも日本人が多大な貢献をしています。
大阪大学大学院医学系研究科・医学部 | iPS細胞から絶滅危惧種を保全する第一歩 ~絶滅危惧種キタシロサイの精子・卵子のもとになる細胞の誘導に成功~
ミナミシロサイ
キタシロサイよりも耳の毛が薄いミナミシロサイは、狩猟に加えて生息地の農地への転換を主な理由として、19世紀末には南アフリカに20~50頭のみが残るまで激減します。
しかし、規制の強化や保護活動など人々のたゆまぬ努力により、2012年にはなんと2万頭を超えるまで回復します。
一方そのころ、密猟が再び活発となります。
ミナミシロサイの99%はジンバブエなど5ヵ国に分布していますが、中でも南アフリカにほとんどが生息しています。
その南アフリカにおいて2007年、密猟されたサイは13頭でしたが、2014年には1,200頭を超えます。
これをピークに密猟数は減っていきますが、その影響もあり2万頭を超えていた個体数は、今では1万6千頭弱にまで減ったと言われています。
シロサイの生態
名前
シロサイの名前の由来は白とは何の関係もありません。
一説では、口の幅が広いことから彼らがアフリカーンス語でwydと呼ばれていたのを、whiteと勘違いされたことによるものだとされています。
ちなみにクロサイは、こっちが白ならアフリカのもう片方のサイは黒ということで名付けられました。
生息地
シロサイの多くは南アフリカに生息しています。
草原や低木林、サバンナなどで暮らします。
キタシロサイとミナミシロサイは100万年前より後に分岐したとされていますが、生息地が重複していた時期もあることが化石記録からわかっています。
形態
体長は3.4~4.2m、肩高は1.5~1.8m、体重は1.4~3.6tでオスの方が大きくなります。
シロサイは地上ではゾウに次いで大きい動物で、サイのなかまでは最大となります。
前の角は平均90㎝で、最大1.5mに達します。
後ろの角は最大55㎝です。
角は骨ではなくケラチンでできており、中心にはメラニンとカルシウムが集中しています。
これにより中心部は太陽の影響を受けにくく、一方外側は摩耗しやすいため、成長するにつれて角は次第に長く、シャープになっていきます。
門歯と犬歯はなく、上下片側それぞれに3本の前臼歯と3本の後臼歯があります。
食性
シロサイは地面に生えた草を主食とするグレイザーです。
彼らの口は平たく、木の葉を食べるブラウザーであり、尖った口のクロサイと容易に区別することができます。
草のほかは、葉や果実、花を食べることもあります。
大人が襲われることはほとんどありませんが、特に子供はライオンやブチハイエナなどに捕食されることがあります。
行動・社会
シロサイは昼行性ないし薄明薄暮性です。
ヌーなどのように季節移動はしません。
オスが単独で暮らす一方、メスは子供や他のメスと数頭集まって群れを作ります。
また、独り立ちをしたばかりの若い個体は、若い者同士で連れ立って生活することもあります。
しかし、オスは次第に独立し、自らのなわばりを築きます。
縄張りは糞や尿で主張します。
サイは視力が弱いので嗅覚を頼りに情報を集めます。
糞尿は他個体の存在を知らせるだけでなく、メスの発情の情報など、繁殖にかかわる情報も持ちます。
繁殖
シロサイの繁殖に季節性はありませんが、ピークは存在します。
メスの出産間隔は2.5~3年で、16ヵ月の妊娠期間ののち、体重40~60㎏の赤ちゃんを1頭産みます。
赤ちゃんは母親によってのみ育てられ、離乳後も2~3歳まで母親とともに過ごします。
性成熟には、オスが5~7歳、メスが3~5歳で達します。
寿命は35~40年です。
人間とシロサイ
絶滅リスク・保全
シロサイはサイのなかまでは最も個体数が多く、IUCNのレッドリストにおいては準絶滅危惧に指定されています。
また、1977年以降、シロサイはCITES(ワシントン条約)附属書Ⅰに記載されており、国際的な取引が禁止されています。
しかし、個体数の多い南アフリカや、密猟の取り締まりなどにより個体数が回復しているナミビア、エスワティニのミナミシロサイの個体群は附属書Ⅱに記載され、一部国際取引が認められています。
動物園
シロサイは日本の動物園で見ることができます。
静岡県の伊豆アニマルキングダムではシロサイに触れることができるようです。
ゾウに次ぐ大きさを誇るシロサイの迫力をぜひ間近で感じてみてください。