書籍情報
書名:親指はなぜ太いのか
著者:島泰三(東京大学理学部人類学科卒、財団法人日本野生生物研究センター設立、雑誌『にほんざる』編集長、NGO日本アイアイファンド代表、マダガスカル国第5頭勲位シュバリエ、理学博士(京都大学))
発行年:2003年
価格:880円(+税)
ページ数:276ページ
■目次
第1章 アイアイに会うために
第2章 レムール類の特別な形と主食のバラエティー
第3章 アフリカの原猿類の特別な形と主食
第4章 ニホンザルのほお袋と繊細な指先
第5章 ナックル・ウォーキングの謎
第6章 ゴリラとオランウータンの謎
第7章 初期人類の主食は何か?
第8章 直立二足歩行の起源
終章 石を握る。そして、歩き出す
口と手連合仮説
この本で一貫して主張される「口と手連合仮説」とは、「主食は、霊長類の種の口と手の形を決定する」というもので、著者により提唱されています。
第6章までは、この仮説が強力な説であることを、様々な霊長類を通して示されます。
登場するサルとしては、アイアイ、シロアシイタチキツネザル、ブラウンネズミキツネザル、ピグミーマーモセット、ワオキツネザル、キンイロジェントルキツネザル、インドリ、ポト、オオガラゴ、ニホンザル、ゴリラなどで、本書はサルの知見を深めるためにも役立ちます。
当然、それぞれのサルについては主食、手の形、葉の形や並びが検討されるわけですが、特にアイアイに関しては詳しい説明がなされます。
アイアイは霊長類の中でも例外的な歯と手を持ちます。
アイアイは、一生伸び続けるリスのような切歯、単純な臼歯を持ちます。
また、その手の指は長く、特に中指は他の指と比べ異様に細いです。
さらにその親指の太さは霊長類の中でも突出して太いです。
口と手連合仮説は、このようなアイアイの特徴的な歯と手は主食によって決められていると言います。
それではアイアイは一体どのようなものを主食としているのか。
是非本書を読んで答え合わせをしてみてください。
直立二足歩行の起源
本書のサブタイトルは、「直立二足歩行の起源に迫る」です。
著者は、口と手連合仮説を応用して、直立二足歩行を始めた初期人類に迫ります。
第7章では初期人類の主食について検討されます。
著者は、厚いエナメル質、つるつるした臼歯、水平に並ぶ歯、回転する顎などの特徴を持つ人間の口や、アイアイほどではないけれども例外的に太い指を持つ人間の手を基に、初期人類の主食を推測します。
初期人類は果たして何を食べていたのか。
肉か、種子か、植物か、それとも別の何かか。
答えは是非ご自分で確認ください。
意外過ぎる答えが待っています。
そして第8章と終章で、著者はサブタイトルにあるように直立二足歩行の起源に迫ります。
なぜサルの中でも人類だけが二足で立ち上がったのか。
武器を使用するためか、物を運ぶためか、それとも威嚇するためか。
普段意識せずとも直立したまま二足で歩く私たち人間ですが、そもそもなぜ二足で立ち上がらなければならなかったのか。
少しでも気になった方は、是非本書をお読みください。
私たちにも当然備わっている手と口。そこには思いもよらない壮大な物語が眠っています。
『親指はなぜ太いのか』。
この本を開き、その物語の中に飛び込んでみましょう。