キイロヒヒの基本情報
英名:Yellow Baboon
学名:Papio cynocephalus
分類:オナガザル科 ヒヒ属
生息地:タンザニア, マラウィ, ザンビア, モザンビーク, ソマリア, ケニア, エチオピア
保全状況:LC〈軽度懸念〉
力なき老人
人間の組織において、最も立場が強いのは年齢が高い人であることが多いですが、キイロヒヒを含め、サルの中にはそうでないものが少なくありません。
キイロヒヒは、通常30~80頭から成る複雄複雌の群れを作ります。
このキイロヒヒの社会は、オスが成長すると群れを出ていき、メスは群れに留まる母系社会で、群れの中には順位が存在します。
順位は8歳ほどをピークに年々落ちていき、特に群れを出た後のオスは社会的に孤立し、生活は厳しくなります。
順位は繁殖の機会やえさの質、量に関わるので下位であることは致命的です。
そこで生き延びて自分の子孫を残すために、下位のオスたちはいくつかの策をとります。
その策の一つが、オス同士の連合です。
下位のオスは、別の下位のオスと手を組み力を合わせることで、自分たちよりも上位にいるオスよりも実質的に上位になり、繁殖相手を確保することができます。
このオス同士の連合は群れに長くいる者同士で見られることが多いようです。
もう一つの策が、メスと友達になるというものです。
下位のオスは、メスと積極的にグルーミングなどのコミュニケーションをしたり、メスの子どもを世話したりすることで、メスと友達になります。
そして友達になったメスの発情期に交尾をするのです。
下位のオスになると繁殖の機会が限られてくるので、常日頃から関係を保つ友達になって繁殖相手を確保することは重要になります。
人間の世界だけでなく、サルの世界も大変なのです。
キイロヒヒの生態
生息地
キイロヒヒは、エチオピアやケニアなど東アフリカ一帯に広く生息しています。
食性
地上性が強く、草本やキノコ、地衣類、小動物、樹液などいろんなものを食べて暮らします。
形態
体格における性差は大きく、オスが体長約110㎝、体重約23㎏なのに対し、メスは体長約90㎝、体重約12㎏になります。
しっぽは45㎝~70㎝ほどで、子どもを背中に乗せて歩く際、背もたれにもなっています。
下の動画でも確認できるので是非ご覧ください。
また、犬歯にも性差が見られ、オスはメスよりも大きくて鋭い犬歯を持ちます。
行動
キイロヒヒは社会性が非常に高いので、コミュニケーションが発達しています。
例えばリップスマッキングは相手に敵意がないことを示し、グルーミングは群れの中のきずなを深めます。
表情はとても豊かで、怒った時や緊張が走る場面などでは鋭い犬歯をあくびをするようにして見せつけます。
また、音声の種類も捕食者が近くにいるときの警告音から、迷子になった時の鳴き声まで様々です。
社会性が高いということは、個体間の接触が多いことであり、その分ケンカも増えます。
実際に取っ組み合ってケンカをすれば、大きなケガを負ってしまうため得策ではありません。
それを防ぐためにも、仲を深めるコミュニケーションや表情や鳴き声を使った威嚇というのは非常に重要な役割を担っているのです。
繁殖
キイロヒヒの繁殖は一年中見られます。
交尾はオスがメスを群れから連れ出して(コンソート)行われることが多く、オスもメスも乱交的に交尾をします。
メスの月経周期は約32日、妊娠期間は約180日で、通常1匹の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは主に母親によって育てられますが、この時高順位の母親は子供に対してより寛容である一方、低順位の母親は子供が遠くに行かないよう神経をとがらせます。
これは低順位のメスが受ける他個体からの嫌がらせに関係しているといわれています。
赤ちゃんは約1年で離乳し、4~7年で性成熟に達します。
メスの出産間隔は21~27カ月、寿命は30~40年です。
人間とキイロヒヒ
絶滅リスク・保全
キイロヒヒは、農業などによる森林の減少の影響を受けていると思われますが、分布域が広いこともあり、個体数は安定しています。
絶滅の危機もレッドリストでは軽度懸念と高くはありません。
動物園
そんなキイロヒヒですが、残念ながら日本で会うことはできないようです。
しかし、同じヒヒの仲間であるアヌビスヒヒには、北海道の円山動物園、長野県の飯田動物園、静岡県の浜松市動物園、愛知県の日本モンキーセンター、広島県の安佐動物園などで見ることができるようですので、興味がある方はぜひ行ってみてください。