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ヌートリア

ヌートリア
©2018 Kala King : clipped from the original
目次

ヌートリアの基本情報

英名:Coypu
学名:Myocastor coypus
分類:齧歯目 ヤマアラシ形亜目 ヌートリア科 ヌートリア属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、パラグアイ、ウルグアイ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ヌートリア
Photo credit: USDA Animal and Plant Health Inspection Service

侵略的外来種

南米原産の半水生齧歯類であるヌートリア。

一生伸びる大きな切歯と長い尻尾、そして後足の水かきが特徴的な、ビーバーによく似た草食性のこの動物は、世界的に外来種として知られています。

今やオーストラリア大陸と南極大陸以外のすべての大陸に生息しており、農作物を食べたり土手や堤防を崩したりと、人間社会に被害をもたらしているのです。

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ヌートリアは半水生であり、その毛皮は水をはじく保護毛と体温を維持する下毛からなります。

この質の高い毛皮を持つヌートリアは、繁殖力が高く飼育も容易であるため、19世紀以降、ヨーロッパや北米の各地で飼育されるようになりました。

このほか、アメリカでは雑草管理のために導入されています。

こうしたヌートリアの需要は次第に下火になり、その結果、放逐されたり飼育下から逃げ出したりすることで、ヌートリアは野生に定着することとなったのです。

外来種(外来生物)のうち、「地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるもの」のことを、侵略的外来種と言いますが、ヌートリアはIUCNが公表する「世界の侵略的外来種ワースト100」に選出されています。

哺乳類では他にアカギツネアカシカアナウサギオコジョなど14種が選ばれています。

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ヌートリアは日本でも外来種として知られています。

主に毛皮目的で導入されたヌートリアは、特に1950年代の毛皮ブーム以降に多くが放逐され、現在では主に東海、近畿、中国地方で定着しています。

日本において、ヌートリアはイネをはじめとしてイモやカボチャ、トマト、キャベツなどの農作物への食害の他、農業用資材への被害、土手や堤防の破壊、湿地や川辺の植物への食害による生態系の破壊といった被害を及ぼしています。

農作物への被害は近年5,000万程度で推移しています。

外来種か在来種か議論があるハクビシンと比べると約10分の1、在来種のシカと比べると100分の1以下の被害額ですが、決して少なくはありません。

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現在、ヌートリアは外来生物法により特定外来生物に指定されています。

特定外来生物とは、「外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定され」、飼育や運搬、輸入、野外への放出などが原則禁止されています。

ちなみに、齧歯目では他にクリハラリストウブハイイロリスマスクラットなどが特定外来生物に指定されています。

このほか、日本生態学会は「日本の侵略的外来種ワースト100」を選定していますが、マスクラットはここにも名を連ねています。

哺乳類では10種が指定されており、アライグマタイワンザルノネコヤギなどが含まれています。

日本でヌートリアを捕獲するには外来生物法鳥獣保護管理法などの法律が絡んでくるので、見つけた場合は自治体に連絡してください。

人間の都合で育てられ、今度は人間の都合で今度は駆逐される。

人間の横暴さを思うともに、ヌートリアへの同情の念がやみません。

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ヌートリア
Photo credit: Greg Schechter

ヌートリアの生態

生息地

主に低地性ですが、アンデス山脈の標高1,190mでも確認されています。

本来の生息地は南米の沼沢地や湖、川辺などの水が近くにある環境です。

チリのチョノス諸島では塩水環境にも暮らしています。

むき出しのしっぽのために寒さは苦手なようで、北欧では脱走個体は野生に定着していません。

形態

体長は50~70㎝、体重は6~10㎏、尾長は30~40㎝で、一般的にオスの方が大きくなります。

前後ともに5本ずつ指があり、後足には第4、5指の間以外に水かきが存在します。

毛皮の手入れは必須で、器用な手を使ってグルーミングをよくします。

アルビノが存在します。

ヌートリア
Photo credit: Frédérique Voisin-Demery

食性

主に草食性で、水生陸生を問わずヨシやヒシ、ホテイアオイなどの植物を食べます。

このほか、樹皮や根、貝類や魚類を食べることもあります。

行動・社会

主に夜行性ですが、日中活動することもあります。

1頭のオス、血縁関係がある複数の大人メスとその子からなる2~13頭の群れで生活し、若いオスは単独傾向にあります。

定住性で、生涯同じエリアで暮らすことが多いです。

行動圏は2~6haでオスの方が倍ほど大きくなります。

10分以上潜水することができるヌートリアは、水上に水生植物を集めたプラットホームと呼ばれる浮巣を作り、そのうえで休息などします。

このほか、土手や堤防に最長15mもなる巣穴を作り、子育てもここで行います。

繁殖

繁殖は年中見られ、メスは年に2~3回繁殖することができます。

妊娠期間は齧歯類にしては長く127~138日。

一度の出産で通常3~6頭、条件がいいと10頭以上生まれることもあります。

200g程度の赤ちゃんは目が開き、毛で覆われた状態で生まれます。

子育ては母親の役割で、子は生後8週で離乳します。

性成熟は生後半年ですが、早ければ生後3ヵ月で見られます。

寿命は野生では数年ですが、飼育下では10年近く生きる個体もいます。

ヌートリア
Photo credit: Ralf Hüsges

人間とヌートリア

絶滅リスク・保全

全体としてヌートリアの分布域は広く、絶滅が懸念されるほどではありません。

ただ、アルゼンチンの一部などでは牧畜の拡大により生息域が減少し、個体数も減少傾向にあるようです。

IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

ヌートリア
Photo credit: Gérard Meyer
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動物園

日本では姫路市立水族館で飼育されたヌートリアを見ることができます。

野生で見つけた場合は速やかに自治体に連絡してください。

姫路市
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