ベルベットモンキーの基本情報
英名:Vervet Monkey
学名:Chlorocebus pygerythrus
分類:オナガザル科 サバンナモンキー属
生息地:エチオピア, ソマリア, ケニア, タンザニア, モザンビーク, ウガンダ, ザンビア, マラウイ, ボツワナ, ジンバブエ, ブルンジ, 南アフリカ共和国
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
復讐をするサル
ベルベットモンキーが住むサバンナは、アマゾンなどとは違って視覚的に開かれているので、その観察のしやすさからそこに住むサルの研究は非常に盛んです。
ベルベットモンキーの研究も数多く、これまでの研究から、彼らは非常に高い社会的知性を持っていることが分かっています。
例えば、彼らは群れのなかまの血縁関係や優劣関係を認識しています。
なかまの順位などを知っておくことで、頻繁にグルーミングをするなど、優位の個体におべっかを使うことができます。
さらにそれにより、例えばケンカをしたときなど、そのサルたちから援助を引き出すことができます。
非常に賢いですね。
また、ベルベットモンキーは、その知性の高さから、復讐すらしてしまいます。
例えば、“ある個体”が別の個体から攻撃を受けたとき、攻撃を受けた“ある個体”は、攻撃をしてきた個体の血縁者に仕返しをすることが分かっています。
さらには、“ある個体”の血縁者が他の個体とケンカをした場合、そのけんか相手の血縁者に、“ある個体”が攻撃することもあるというのです。
これを人間でいえば、妹がクラスの男子に殴られたので、その男子の妹を殴るといった感じです。
知性はこのような恐ろしいことも生み出してしまうことがベルベットモンキーから分かります。
ベルベットモンキーの生態
生息地
ベルベットモンキーは、東アフリカから南アフリカにかけて、河辺林やサバンナなどに広く分布します。
とはいえ、パタスモンキーやヒヒなどサバンナに住む他のサルほど地上性は高くはありません。
食性
主に果実を食べ、他にも若葉や種子、小動物なども食べます。
形態
体長は40~60㎝、体重は3~5㎏、しっぽは30~50㎝でオスの方が大きくなります。
ベルベットモンキーの外見上の特徴は、睾丸です。
オスの睾丸は鮮やかな青をしており、順位の高いオス程、この青が鮮やかになります。
下の動画ではそれがよくわかるので是非見てみてください。
行動
ベルベットモンキーは、10~40頭から成るの複雄複雌の群れを作ります。
彼らの社会は母系社会で、メスが群れに留まる一方、オスは成長すると群れを離れ、新たな群れを探します。
群れを形成する動物において、音声によるコミュニケーションは非常に重要です。
エサを食べるときなど、なかまが近くにいないときは、遠くまで聞こえる声が重要になるのは必然でしょう。
ベルベットモンキーには、この音声によるコミュニケーションの中で特筆すべきことがあります。
音声は、特に捕食者の存在を知らせる時に重要なのですが、このサルの場合、各捕食者に対してそれぞれの音声があり、それを聞いた個体はそれぞれの回避行動をとるというのです。
例えばある個体がヒョウを見つけたら、ヒョウがいることを示す特定の音声を発し、それを聞いた他の個体は樹上に逃げるという、木の高い所までは登れない、対ヒョウ用の回避をするということです。
サルの鳴き声は単なる音ではないのです。
ちなみに下のもう一つの動画ではその様子を見ることができます。
繁殖
ベルベットモンキーは乱交的に交尾します。
メスは約160日の妊娠期間の後、通常1匹の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは母親や群れのメスのよって育てられ、3~5年で性成熟に達します。
ベルベットモンキーの飼育下での寿命は約30年です。
人間とベルベットモンキー
絶滅リスク・保全
ベルベットモンキーは、生息地も広く適応力も比較的高いですが、人間活動による森林の縮小や分断により、個体数は減り続けています。
絶滅の危険度で言えば軽度懸念とされていますが、格上げされる未来も考えられなくはないでしょう。
動物園
そんなベルベットモンキーですが、残念ながら日本で会うことはできません。
なんとしてもみたいという方は、南アフリカにあるVervet Monkey Foundationを訪れてみてください。
ここは、ベルベットモンキーを保護し、リハビリなどもする施設で、たくさんのベルベットモンキーに会うことができます。
保護活動を支援するという意味でも、ここに行く価値は大きいと思います。